LNCrawler

第330話 リハーサルに向けて

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第330話 リハーサルに向けて

「ジーン、今日泊まってっていい?」

「いいけど、シヴァに怒られない?」

やっぱり帰って飲み過ぎを叱られるのが怖いのだろうか。でも余計叱れれる気がする。

「いや、子供達がアッシュとお泊まりするっていうから。ティナにお父さんたちはいつも男子会するんだから女子会するの! って追い出されてな……。エンとバクはいいのに俺だけ」

「……ゲーム大会もう少し時間を短くするか?」

毎回甘いものとか贈っているけど、ダメか? ダメなのか?

「いや、そっちは平気、土産を楽しみにされてる。ただ最近うちのティナが頬ずりを嫌がるようになって……」

がっくりとうなだれるディノッソ。

「せっかく王狼なんて呼ばれるようになったのに、形無しねぇ」

ハウロンが少し浮上したのか、ディノッソを笑う。

「反抗期か?」

早い気がするけど、こっちの成人年齢早いしな。俺の理想の仲良し家族がががが。

「一時期、女の子が男親を、男の子が女親を嫌がるようになるのは血族婚防止の本能だぞ。でも本能だって知らないままだと、好きなのになんで嫌いなんだろうって無い理由を探して、過去の小さいこと掘り起こしたりするらしいぞ。でも本人も悩んでるはずだし、やっぱり親のことは好きで、ある意味好きの裏返しで、落ち着けば戻るから――こじれないよう見守ってこう……」

「ジーンもオロオロしてるな」

思いつくまま理由を話していると、レッツェが呆れたように言う。

「いつかは来るのかもしれませんが、今は先ず髭剃りの回数を増やすべきかと」

執事が笑顔で言う。

無精髭! 無精髭のじょりじょりが原因か! 俺がもっともらしいことべらべら喋ったの恥ずかしいだろ!!

なお、こっちの世界で反抗期は、裕福な家庭で子供を長く手元に置く家族に少し。普通は反抗期を乗り越えるまでもなく自立が待っている。

午後はしばらくゆっくりして、主にディノッソの酔いを覚まし、魔法陣を何枚か描いて魔の森に行く。一度、実戦で演技指導をしてもらう算段だ。

「ウサギ穴つついていいか?」

「後にしろ、後に。付き合ってやるから」

草原で聞いたら止められた。でも後でレッツェが付き合ってくれるらしい。

ウサギ穴を避けつつ、草原を進む。カーンはデカイ体なのに猫のように軽やか。でも、さすがにこの人数で歩くとツノウサギも出て来な……来たな。

エクス棒でトスッとやって対応。向こうから突っ込んでくるスピードとエクス棒のスピードとで簡単に仕留められる。

ウサギ肉は間に合ってるので、ウサギ穴の留守宅に放り込んで穴を崩す。放置しておくと魔物が集まって、後を通る人の迷惑になることがあるのだ。埋めるか、もっと人が通らない森の中に放り込む。

「その棒はなんなの? 精霊の気配があるんだけど」

ハウロンは気配を感じるタイプの人か。

「ここでは支障がございます、悲鳴が聞こえない森の奥で」

「悲鳴が上がる前提なのね……」

俺の代わりに執事が答えて、ハウロンが視線を横に流す。

とりあえずあまり狩場としてはよろしくない、人の来ない場所に到着。

「なんで地味なことは普通なの? 武器が杖なことを除けば、目的地に向かって歩いている間の対応は丁寧な部類よね?」

「これはレッツェに教わったから」

教えてもらったことには、教えてくれた人の癖が出るのだ。

「……。ちょっと、アンタたちは何を教えてたのよ!?」

笑顔のままでしばし固まり、ディノッソと執事を見て声をあげる。

「ディノッソには、野菜の世話とか籠編みを教えてもらった」

「籠ってあの作りかけの!? 他に教えることあるでしょう!?」

俺を見たりディノッソたちを見たり忙しい。

「気づいたらこうなってたんだよ!」

「お会いした頃は、能力の範囲が不明でございましたので……」

二人が不本意そう。

最初から能力を明かしていたら、色々教えてもらえて何か変わっていただろうか。

「あ、紹介する。この棒は俺の相棒」

「おう! オレはコンコン棒EX! エクス棒って呼んでくれ!」

ぽこんと音がして棒の先の葉が開き、エクス棒が姿を現す。

「いや、待って。まさか……まさかね」

なぜかジリジリ後ずさるハウロン。

「王の枝の能力としては、精霊寄せと俺が快適くらい。黒精霊避けはないから、冒険にも連れて行ける優れ者」

「どこでも一緒だぜ!」

ニカッと笑うエクス棒。

「アナタ、まさか王の枝でウサギ突いてたの!?」

目をむくハウロン。

「カーンも飛び出して来たウサギを斬り捨ててたぞ」

エクス棒だっていいじゃないか。

「王は剣だったでしょ! 影狼も王狼も剣で! ……ちょっと、何で全員目をそらすのよ?」

「色々あるのでございます」

執事がしんみり言う。

「いやもう本当に。一度に来るのって大変だな……」

ディノッソが憐れみに似た視線をハウロンに送る。

「エクス棒に剣を持たせようとか、明後日な結論に行くなよ?」

レッツェに釘を刺されるが、エクス棒の人型部分に持たせても対象に届かないという結論に達しているから安心してほしい。