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第402話 カレー再び

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第402話 カレー再び

火を入れていないクッキングストーブの上に鍋をどん。炊き立てのご飯が入ったおひつをどん。福神漬けの皿をとん。

皿にご飯を盛って、カツを乗せたところで、鍋の蓋を開ける。

「ん? なんだ?」

漂うカレーの匂いにレッツェが反応。

「おや、今日はカレー粉でしたか」

ディノッソの後ろから執事の声。

「カレー粉というか、カレーだな。カツカレー」

時々、カレー粉で味をつけた料理を出していたので誤解があるみたい? うっかりハズレな店に入ってもカレー粉があればなんとかなるし、ちまちま使っていたし。

「ああ、カレーの匂いか」

独特の香りがなんなのか思い出したらしいレッツェが、鍋を覗き込む。

カレーをたぱっとかけて、福神漬けを少々乗せて、見にきたレッツェに渡す。その後の配膳はいつも通り執事が請け負ってくれた。

米が大丈夫なのはわかったので、思い切って日本にいた時もパン食の外人さんに人気だったような覚えがあるカツカレー、こっちでも好評。

一瞬カツ丼にしようかと思ったんだけど、あれは卵の壁がね。きっちり固めてもいいんだけど。徐々に慣らしたいところ。

「どうぞ」

他にサラダとラッシー。

「おう。とりあえず乾杯か」

ディノッソの音頭で乾杯と頂きます。

行儀悪く皿を抱えて食べる。サイドテーブルの方を向いて食べるのもね。ちょっとここはどうにかしたいところ。

カレーが絡んでも、まだサクッとする分厚いカツをがぶっとね。じゅわっと広がる豚の脂。ちょっと熱かったのでラッシー。

「美味しいわねこれ」

「ああ、俺はカレー粉よりこっちが好きだな」

いや、ディノッソだからカレー粉は……まあいいか。

「カツレツの分厚いやつだな。厚さが変わるだけで味まで違う」

レッツェは観察しながらもぐもぐ。こっちにはカツレツはあるんだよな。

「悪くない」

「美味しゅうございます」

カーンと執事は普通っぽいな。

そもそもカーンは特定の食べ物しか味がしないのだが、『家』の台所も精霊の出入り解禁にしたおかげで、俺の作る料理は味がするはず。

だけどやっぱり赤ワインが一番好きらしい。あとチャイとか、スパイシーはスパイシーでも甘い物を好むようだ。精霊の影響がない料理は味がしないのだから、1番の好物が赤ワインでよかったよね。

「おかわりしていい?」

「どうぞ。カツは?」

「半分ってできるか?」

「あらじゃあ、その半分もらうわ。これ、普通に焼いたより好きよ」

ディノッソはカツカレーを気に入った様子。ハウロンはカツが気に入ったのかな?

お年寄りに揚げ物ってどうなんだろう? そういえばこっちって、歳をとったからさっぱりした物とか、若い時と食べ物の好みが変わるってことはないみたい。

あと、日本人と違って、個人が味を調整するってことがないというか、白飯――こっちではパンか――と口の中で混ぜる文化がない。味が濃いからパンを口に放り込むとかね。

今もカレーは皿の中できっちり混ぜられている。そういえば同じアジア圏でも、ご飯に乗せて何かが出てきても、口に入る前、皿で混ぜちゃうよな。もしかして日本は少数派?

「うーん、今度ひとまわり大きなテーブルと、テーブルクロス買ってくるか」

さすがに二人増えた――しかもデカイ――ので、今のテーブルは狭すぎる。

「あら、少し狭いけれどこの雰囲気好きよ。テーブルも含めて」

ハウロンが言う。

ハウロンとカーンはデカイので、俺が 梁 ( はり ) からぶら下げているランプのいくつかに頭をぶつける。

普通の家より床板も分厚くしてあるし、 根太 ( ねだ ) も増やしてるんで床が抜けることはないと思うんだけど。――後で精霊鉄で補強しとこうか。

「さ、食い終えたところで愚痴だ!」

ぐいっと赤ワインをあおり、ディノッソ。

「ええ、たっぷり聞いてもらうわ」

ハウロン。

視線は俺ではなく執事へ。

「エスでのことでございますか。ご本人を前に愚痴はどうかと思いますが……」

薄く微笑む執事。

「ジーン様の日常が、非日常であることは最初からお分かりになっていてゆかれたのでは?」

紅茶を注ぎながら続けて言う。執事の所作は優雅だ。

「アレを日常だって紹介されたら思考が飛ぶ!」

「日常でなんでエスと契約するのよ! 非日常だってしないわよ!」

ディノッソとハウロン。

「エス……でございますか」

微笑んだままの執事。

「少し加減してやった方が良くねぇ?」

レッツェがワインを飲みながら言う。

「実際に見るよりいいでしょう!?」

「敵前逃亡に慈悲はいらねぇ!」

敵前逃亡ってディノッソ……。

カーンは騒ぐ二人を見るともなしに見て、ワインを飲んでいる。俺も固まった執事から、勝手に紅茶を受け取って飲む。

ああ、大福がレッツェの膝から流れ落ちそう。座布団はカーンを持ち上げることを諦めたのか、カーンの膝に載っている。なんかこっちも猫っぽい。

「もしや、エス川が一度引いたことと関わりが?」

執事がディノッソとハウロンに問う。

大丈夫、すぐ戻ったって聞いたし!!!!