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第501話 裏を勘ぐられる

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第501話 裏を勘ぐられる

「商売相手(仮)から契約書をもらってきました」

「何よ、藪から棒に」

カヌムの借家、ハウロンが俺が差し出した契約書を受け取りながら言う。

暖炉の前にはカーン、ハウロンのつく同じテーブルにクリスとディーン。こちらは何か肉を焼いたやつをつまみにワインを飲んでいる。遅い時間だけど、レッツェはまだ帰ってないようだ。

「あ、これメール小麦の分ね。よければナルアディードとの交易は、その後もこの商会を通してやって欲しいんだけど」

昼間、ソレイユから署名入りの契約書をもらって来た。メール小麦が多すぎて、普通の小麦をかき集める過程で値上がってしまいそうなので、カーンの国には通常小麦価格でメール小麦ってことで落ち着いた。

ソレイユがハンカチ噛んでたけど。

「俺が運んじゃってもいいけど、これから国としてやってくには交易のルートは作っといた方がいいんだろ?」

契約書を読んでいるハウロンに言う。確かそんなことを話していたはず。

「話の規模が大きいね、さすがだよ」

きらきらしたクリス。

「カーンの国が着実にできてるみてぇで、すごいな」

目を丸くしているディーン。

「国を興すなんてロマンだねぇ。あの砂から姿を現した美しい都市に人が溢れるのだね? 手伝えることがあったら言って欲しいけど――」

「 如何 ( いかん ) せん、遠いな」

クリスの後を継いで、ディーンが言う。

「ところで、交易は船をかえるのにエスを中継に使う事になるんだよね? カーンたちの国としては、エスまでの川船は自前にしたい? それとも全部お任せ? ハウロンに渡した契約書はエスまでにしてるけど」

「自前にしたいところだが、今はそこまで手が回らん。エスとは日常品のやりとりもすることになるだろうし、エスの商会を噛ませるのがいいのだろうな。人の余裕ができたら自前の船を持つ」

カーンが言う。

「はい、はい。今はエスの商会の船を間に入れて、将来は自前に移行予定ね。ところで国の名前って何? カーン王国?」

「火の王国シャヒラだ」

カーンが短く答える。

枝の名前つけたんだ? 枝の名前をつけるのデフォじゃないよね? 青の精霊島が「こんこん棒EX王国」になってしまう。

「ちょっと……っ」

「どうした?」

契約書の左右の端を握ってぶるぶるしているハウロンにディーンが聞く。

「この契約相手!」

「うん?」

なんだ?

「暗殺島の表向きのトップじゃないのよ!!!!!」

「……」

その話、まだ生きてたんだ!?

「いや、あの。ソレイユはやりての商会長だし、おすすめだぞ?」

「う・し・ろ・に、暗殺者の集団がいるのよ! 後ろ暗いところがあるせいか、確かに表の商売はクリーンだけれど!」

「なんでそんな話に……」

一応、ハウロンの方でも交易相手に良さそうな商会はないか、下調べはしているそうで、そこで集めた話らしい。

「島自体も、表の話で流れている夢のような島なんてあるはずがない、島に行った人間に薬で幻覚を見せているという話が裏でちらほら出ているわ」

ちょっとハウロン、どこで仕入れたのその話! 確かに入場制限してるせいで、隣のナルアディードにも島に来たことない人いっぱいいるだろうけど!

「山岳地帯の民族が旅人を捕まえ、薬を吸わせて夢見心地にした上で、贅を尽くした部屋に放り込み、女と食事を与える。それを何日か続け、元の岩山に放り出す。使命を果たして死ぬと、またその部屋に行けると吹き込んで、暗殺者を作る手段と似ている」

カーン、変な洗脳話を思い出さないで!

「まあ、表の領主やその商会はマトモそうだから、楽園の幻覚を薬で一時的にという線はないとは思うけれど。島の環境に一体いくらかかったのかしら……? 新興の商会だし、いくらなんでもそこまで儲かってない。じゃあ、暗殺の依頼料でできてる暗殺者の島じゃないかっていう噂は拭えないの」

「拭って、拭って。クリーンです、クリーン」

やめてください、人聞きの悪い!

「そんなこと言ってもねぇ……。実際島に泊まった人の話を聞いたけれど、夜に壮絶な戦いを見たっていってたわ。それに、暗殺の依頼をしに島に足を踏み入れて、戻ってすぐに行方不明になった者が何人か。精霊に聞いてもはっきりした答えは返ってこない上に、近づくのは危ないような思わせぶりな単語が出てくるし……」

暗殺なんて依頼しにくる方が悪いと思います。悪意を持った人間は精霊が迷子にする仕様です!

そして、精霊の噂も俺のせいです! 島を嗅ぎ回るような怪しい人たちが、島に来たくなくなるよう答えてって言った覚えがあります! 乗っ取りのほうが頭にあったんで!

概ねハウロンの疑惑を増強しているのが俺の件について。

「ジーンは騙されそうだもんな」

「表のいい人を信じていると、後に怖い人がくっついてることもあるのだよ?」

ディーンとクリスが心配そうに言ってくる。

騙されるも何も、その島作ったの俺! チェンジリングはなんか集まって来たけど、飯目当てがほとんどだし!

平和な島ですよ! 夜な夜な戦いが繰り広げられてるのは否定しないけど、平和です!