LNCrawler

第502話 同業他社

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第502話 同業他社

「おう、来てたのか」

「レッツェ!」

助けてください、暗殺者の首領にされそうです! でも島のことは内緒です! 勇者たちが来ないって確証が持てたら教えます!

いやでも、ハウロンなら 逃げる手段 ( てんい ) 持ちだから大丈夫? そこのところどうですか?

「……まあなんだ。困ってるのは分かったが、荷物置いてくるまで待て」

あわあわしていたら、半眼で言われて置いていかれた。

「……あなた、レッツェがいれば何でも解決すると思ってるわね?」

じっとりとした目を俺に向けるハウロン。

「だいたい解決するしな」

「ジーン関係の問題はだいたいするね!」

酒を飲みながらうんうんと頷くディーンとクリス。

「少しは自分で何とかしなさいよ!」

ハウロンはそう言うけれど、頑張った結果がこれなんです。

好き放題やって、俺のことを認識できない人たちにどう伝わってくか確認する実験と、勇者をはじめ、面倒くさそうなヤカラが寄って来ないようにしようとした結果が暗殺島の誤解だなんて思わないじゃないですか!

表ではだいたいソレイユが領主って誤解されてるか、領主の方に意識がいかず「青の精霊島の○○」って言われるかのどっちかが多くて、俺の名前は出ない。

特に後者は、う○い棒の会社名がなかなか覚えられないようなものだろうか? ってなった。特に俺の名前が出なくっても島も商品も不便はなく回る。

遠くに伝わった時どうか。まず、この距離の情報をこの時間で手にするには精霊が必須。ごくごく平和な噂はそのまま届けられる。

が、ない裏を探ろうとした人間にはその時点で色々誤解がね? 最初から裏がある前提で探るのがいけないと思うんだけどね? そしてここでも精霊を通すと、伝言ゲームにミス発生が確定。

裏を知りたがる代表ハウロン、普通に見学に来た平和な人たちだけじゃなく、ちょっと腹に一物アリな感じの人にも接触した様子だし、人間だけではなく精霊にも確認を取ったようだ。

裏を探ろうとすると正しい答えは絶対返ってこないぞ!

「待たせた。俺にもなんか食えるものくれるか?」

レッツェが戻って来た。

腕には服を抱えていて、カーンのいる暖炉に近づき、伸ばして干し始めた。水の中にでも入ったのかな? 今日、寒いのに。

日本と違ってカヌムは四季がはっきりしない。季節がというか気温がかな? 夏なのに急に寒くなったり、冬なのに急に暑い日が来たり、明日の気温に油断ならない感じ。

「待ってた」

そう言って、レッツェの席をつくる。温かい物のほうがいいよね? グラタンいっとくか。

「マメだなあ」

レッツェが干したズボンにブラシをかけているのを見て、ディーンが感心する。

「そこはディーンが大雑把なんだと思うよ!」

クリスのツッコミ。

思わず視線を逸らす俺。ブラシかけなんかやってないよ!

「レッツェはマメだっていうのには同意するけれど、ブラシはかけたほうがいいわよ?」

ハウロンがオネェの力を発揮する!

俺は聞いてないふりをした!

「カーンとアッシュはかけないと思うけど、それは執事やお付きがするからだと思うよ! 王狼だって、自分の服の手入れをしていたのだよ!」

ディノッソの話を持ち出して、一層キラキラするクリス。

「えええっ! 王狼が!?」

そしてすぐ影響されそうなディーン。

ディノッソは家庭的ないいお父さんだからな。ブラシ、ブラシをかけないの、少数派なの? だめな感じですか?

「美味そうだな」

手入れを終えた、レッツェが席についてスプーンを手に取る。

グラタンは表面に全体的な焼き色、その中で大きめのマカロニの端が不揃いに少し飛び出し、粉チーズを被った先が濃いめに焦げている。

マカロニは水ではなく牛乳で茹でたので、よくグラタンのソースと馴染んでるはず。ホタテの貝柱入り。

ワインと焼いた厚切りハム、サラダ。サラダはシンプルなやつにスナップエンドウを添えたやつ。コーヒー。

「あー! ジーン、俺もハム焼いたやつ食いたい!」

ディーンはまだ腹に入るらしく、リクエストが来た。

ディーンとクリスが地下から持って来た、新しい酒が開けられ、俺もつまみを追加。カーンも赤ワインと厚切りハムを楽しんでいる。完全にワインが主体だけど。

「美味かった。で? 何に困ってたんだ? というか何の話をしてた?」

おかわりのスライスしたパンを食べながらレッツェが聞いてくる。

「『青の精霊島』の話よ。そこの領主が商会もやってるんだけど、そことの取引を持ちかけられたのよね」

ハウロンが説明のターン。

「ああ、あの島か。商会は表の顔を全面に打ち出してるんだろ? ナルアディードの商業ギルドと海運ギルド、両方と直接取引があるって話だし、裏の話は知らぬ存ぜぬしときゃいいんじゃねぇか? ただ、こっちまで噂が入ってくるんじゃ、大分派手だ。どっちかってぇとシュルムが取引にちょっかいだしてこねぇか、そっちの方が気になる」

コーヒーを飲みながらレッツェ。

「問題がでたら揉み消されるか、大した罪にはならないってことはわかるけど、建国したとたん、暗殺者に国内で仕事をされたら困るのよ」

ため息をつくハウロン。

裏が問題になるなら、同じく取引したナルアディードの商業ギルドと海運ギルドも問題になる――だからそれは揉み消されるか、大した罪にはならない落とし所に落ち着くってことかな?

「島って、カヌムにそんなに情報入って来てるのか?」

そっちにびっくりなんですが。

「カヌムにっていうか、ノートが気にして収集してる」

ああ、うん。同業他社疑惑で。いや、うちは暗殺業してないけど! 執事は個人事業主っぽいけど!