LNCrawler

第503話 黙秘

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第503話 黙秘

「……とりあえずノートを呼びましょうか」

にっこり笑うハウロン。

「呼んでこようか?」

「いいわよ、精霊に呼ばせるから。ついでにディノッソも」

席を立とうとしたクリスを止めるハウロン。

えー。全員にバレるの? 俺のやりたい放題の島。レディ・ローザの件も片付いてないのに。ナルアディードに持った商館でやりとりする分には大丈夫だと思うけど、島の中は怪しいんですけど。

もぞもぞしているとレッツェにほっぺたを引っ張られる。何ですか? 何がバレたんですか!?

「城塞都市、服を安く売ってるとこ知ってるか?」

が、特に何も言わず酒を飲みながら、クリスとディーンの方を向いて話しかける。

「ギルドの店が確かなんじゃないかい? 私はこうだからね、他は詳しくないよ」

袖のフリルをひらひらと揺らして見せるクリス。

冒険者は自分を売り込むために個性的な格好をしていることも多い。レッツェみたいに実用第一みたいな人が大半ではあるけど、魔物の数が多くて乱戦の時とか目立ってないとね。名前も覚えてもらいやすいし。

「布ならオル、皮ならボンの店じゃねぇ?」

ディーンがジョッキを空けながら言う。

「やっぱりその2店か。ありがとう」

どうやらレッツェも知っている店らしい。

クリスとディーンは城塞都市に行くことが多いので、何か新しい情報がないかの確認のために聞いたのだろう。

「服買うの?」

「今日ちょっと、魔物の体液がついてな。人間の鼻には臭わねぇが、さっき確認したら雨じゃねぇ染みがあった。臭うと特定の魔物が寄ってくるんだよ」

そう言って椅子の背にかけられたズボンを見る。

暖炉を挟んでカーンと椅子。ちょっとシュール。

「あれは乾いたら、魔物寄せ道具屋に売り払う」

「なるほど」

この世界は、物が溢れる世界というわけではないので、リサイクル率が高い。物によっては精霊が頑張ってて、なんでこれだけ豊富なの? っていうのもあるけど。紙とかね。

「あー……。スカーの季節か。俺も気をつけよ」

ディーンが思い当たったらしく、ちょっとげんなりして酒をあおる。

「スカーって?」

「特定の場所に出る魔物なんだが、毒液吐いてマーキングしてくるんだよ。毒は半刻ほどひりつく程度だが、同じスカーと少し大きい別の魔物が臭いにつられて寄ってくる」

「この時期にそこに生える薬草があるんで、依頼がくる。たくさん生えるんだが、生える期間が4、5日ってぇ短さなんで、割と冒険者総出っぽくなる」

レッツェの説明にディーンが付け加える。

「採取しても次の日には生えてるしね。――レッツェみたいに気が付くならともかく、飛沫なんかに気が付かないのもいるからねぇ。大きめの魔物を狩る仕事が回ってくるんだよ」

クリスも。

薬の材料とかなら俺も場所を教えてもらって、少し採取しとこうかな?

「自分に臭わなくても、臭ってると思うと嫌だ」

「……」

ディーンの言葉に、思わず足と脇と見る俺。

今日も元気に足に抱きついてくんかくんか嗅いでる精霊と、脇から顔だけ出してご満悦のトカゲくん。いや、うん。風呂の頻度は俺からすると低いけど、水浴びは一日一回以上してるんだよな。

その薬草の生えてる場所や、採取の注意点を聞いたり、最近の冒険者ギルドの様子を聞いたり。

「お邪魔します」

飲みながら話していると、ノックの音がして執事とディノッソが入ってくる。

「来たわね」

悪い感じの笑顔のハウロン。

「引っ張ってこいていうから引っ張ってきたが、なんの話だ?」

ディノッソがハウロンに向かって言う。

どうやらハウロンの精霊はディノッソに執事の回収を頼んだ模様。

「あ、ごめん。俺の家、鍵開けに行けばよかった」

忘れてました。俺の家を通り抜けられないと、ディノッソはだいぶ周り道。

「平気、平気」

そう言ってディノッソが、俺の出したワイングラスを受け取る。

執事の分も渡して、酒と料理を追加。

「ナルアディード近くにある暗殺島について、知ってる情報を全部出してちょうだい」

席について、ディノッソと執事が酒を一口飲んだところでハウロン。

「ぶぼっ」

「……」

噴き出すディノッソ、視線をついっと逸らす執事。

なんですかその反応は。

「何よ、その反応?」

同じことを思ったらしいハウロン。

「……黙秘いたします」

笑顔の執事。

「黙秘って何よ? ジーンに少し話してあげて。直接付き合いがある人が良い人だからって、裏にいるのが良い人とは限らないのよ」

裏(?)にいるのも悪い人じゃないです。良い人だっては言えないけど、悪くないジャッジでお願いします。

「アタシだって、後ろ暗い目的で人を動かすなら何人か仲介させて、全く何も知らない人に実行させるわよ? アナタがそのうちの一人になってないと言い切れる? 疑り深そうでいて、一度気を許すと簡単に信じちゃうでしょう」

ハウロンの心配は、カーンの王国のことだけじゃなくって、俺のことものようだ。確かに例えばオルランドくんとかが誰かに騙されて、良いことだと思い込んで提案してきたら、俺も乗ってしまうかもしれない。

「……今回は裏にいるのも無害だから受けとけ」

ため息をついてレッツェ。

バレてる気配!?