LNCrawler

第507話 契約の効果

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第507話 契約の効果

はっ!

レッツェが俺のほっぺたをつねりたそうな気配!

「色々な経験を積んでいるのでしょうけれど、キャプテン・ゴートにとって精霊王がどういうものなのか教えてくれるかしら?」

ハウロンが唇だけ笑ってる。

精霊だろうが大精霊だろうが神々だろうが、結局人が都合よく呼んでるのが精霊に伝播してるだけだと思うけどね。神殿の関係者や為政者、それぞれに都合よく脚色、でも見えない人も多いし、人の認識も一定じゃない。

精霊自体も人の影響を受けやすいものと、まったく人と関わらず存在している精霊ではそれぞれの認識変わりそうだし、そもそも精霊って気まぐれだし、いろんな存在があるから、はっきりまとめられないと思う。

「神クラスの精霊を複数生み出し眷属としている精霊、強大すぎて直接人間と関わらない存在――。いや、最近流行りの説は、人間か精霊かは関係がなく、強大な精霊や眷属を多く従えているかいないか――。まあ、丸っとまとめてコイツだ」

セイカイの言った精霊王の定義をなぞりながら、猫船長が俺を見上げてくる。

まとめるのやめてください。

「……最後まで 言える ( ・・・ ) ってことは、アンタらはコレがどんなもんか知ってるってことだな」

フンスと鼻を鳴らして猫船長が言う。

たぶんこれ、人間でやったら格好いいのかもしれないな? でも今猫だからね。

「契約の沈黙の誓いか」

レッツェの呟き。

猫船長との契約書には、当然ながら俺について口外しないような条項がつけてある。これは取引上知り得た情報を口外しないとか普通の契約でもよくある条項で、レッツェが言うように、沈黙の誓い条項とかそんな感じで言われてるみたい。

書き加える条項次第だけど、大抵は上位の契約者相手にならば話せるようになってる。例えば猫船長は俺と契約してるけど、商売上のことはソレイユと話せなかったら困るからね。逆に間のソレイユは猫船長相手に話せることが制限されてる感じ。

「……」

ハウロンが固まった笑顔を俺に向ける。

な に を し た の ?

聞こえる、聞こえる、ハウロンの心の声が!

「俺は何もしてないぞ。船長と契約した時、ちょっと海の精霊が出てきて、俺を精霊王呼ばわりして消えてっただけだ」

普通に契約しただけです。

「……」

ジト目で見てくるハウロン。

「そりゃ、ちょっと契約相手が猫だったんで、猫型チェンジリングか何かかなって思ってたけど――。結局、別件だったし」

守護してくれてる神々の誰かが出てくるかな〜って半分思ってたけど、出てきたの他の理由だし、予想外の精霊だったし。

「……このあたりの精霊というと、よく見かける海の精霊は除くとして、まさかナルアディードに祀ってある海神セイカイじゃないわよね?」

ハウロンが笑顔で確認してくる。

叫べないハウロン、なんか強いぞ!?

「俺は別件の方が気になるがな」

ボソりとレッツェが言う。

「そう、急ぎの用件があるんで顔合わせも終わったことだし。あ、帰る前に、食料渡しとく。他の船に配るか配らないかは船長に任せるけど、出所は誤魔化して。――どこに出したらいい?」

笑顔で一気に言い切る俺。

余計なことは話させないし、きかせない強い意志!  推定無罪の法則もあるし、ほっぺたは 免 ( まぬが ) れたい。

「食料はありがてぇが、契約の時なんか出てくるのはデフォなのかよ」

半眼の猫船長が尻尾の先を小刻みに振っている。

猫船長察し良すぎない? あと俺には関係ないけど、って語尾につきそう。

猫船長の案内で船倉に移動する。船内を歩いてたら、前回の無口な船員さんが黙って合流してきて、黙って扉開けたり明かりを灯したり、進みやすいように色々してくれる。

船の中に船員は少ない。こっちの船は先に直したのかな? もう片方の大破した方の船を直すのに忙しいんだろう。

「なんか動物飼ってるの?」

少々臭うような?

「俺の船は外洋にもいくからな。遠出するときゃ、ここで山羊飼ってるんだよ。うちの船員はマメで手入れもしっかりやるが、臭いは染みつくな。 商品 ( こむぎ ) を載せるのは別な区画だから安心しろ」

猫船長が説明してくれる。

「なるほど、新鮮な乳と肉か」

レッツェがあちこち視線を彷徨わせてる。

カヌム周辺だと見られても魚を入れる場所がついてる川船くらいだしね。俺も珍しいからきょろきょろする。

「空気が凝ってないわね? 精霊かしら?」

「まあな。俺の友は風の精霊だ」

「なるほど、それであなたの運ぶ荷は評判がいいのね」

「荷運びは資金作りのためで本業じゃねぇがな」

ハウロンと猫船長の会話、荷物の評判いいの?

「小麦も湿気ってるより、風通しがいい方がいいだろ。船倉ってのはじっとりしてて、カビ臭えってのが普通だ」

レッツェが教えてくれる。

「甲板に積む船も多いんだが、海が荒れれば荷を失う確率も高いし、波を被ったら台無しだ」

「なるほど」

レッツェ、ちょくちょく海に来てる俺より詳しいな?

「腹が減ってメールの町から略奪するとか危ねぇことを言い出す前に、他の船をさっさと契約で縛ったはいいものの、うちの手持ちを配っても微妙に足らなかったからな。感謝する」

船倉に食料を出すと、猫船長にお礼を言われる。

「アンタとの契約で、他の船の連中も死なずに済んだ」

メール小麦を運ぶ契約には、メール人に危害加えないというか尊重するみたいな文面入ってるからかな? 猫船長と契約を結んだ時点で、メールに手出しできなくなったわけだ。

まあ、メール人って絶対強いし、穏やかだけど、一線を越えたら容赦しない雰囲気だったしね。じゃないと麦が採れる豊かな土地で無事でいられるとは思えないし。そういう意味じゃ、人間って信用ならないから。

略奪なんかしたら、多分無事じゃすまないのは人間の方。

他にカーンの国への輸送の話や何かを軽く話して、カヌムに帰還。帰還した途端、ほっぺたが伸ばされました。ひどい。