LNCrawler

第510話 うふ

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第510話 うふ

「一緒に行く?」

「ピクニックに誘うように誘ってくるのやめろ。死ぬ」

レッツェを見たら、断られた。

「ううううっ」

「――死なねぇ自信があるなら止めねぇぞ?」

うめくハウロンを横目で見たレッツェが言う。

「ハウロンはなんか興奮して叫んで倒れそうだからヤダ」

外出先で運ばなきゃいけない事になるのは避けたい。

「……」

ハウロンが黙った。

ソレイユと違って触るところに困るってことはないと思うんで、いざとなったら担いでもいいけど。

「とりあえず、早く弁当作ってセイカイの腹痛とってやれ」

「はーい」

レッツェに送り出されて『家』へ移動。

リシュが走ってきて直前でぴたりと止まり、くんくんと匂いを嗅ぎ始める。存分に嗅がせて、くしゃくしゃと撫でる。うちの子可愛い。

お弁当はどうしよう、重箱にしようかな?

弁当を作り、飲み物を用意。海中は寒いのかな? いや、火の精霊がいるから暑いのか。空気の層を作って周りの温度の影響を受けないようにするつもりだし、いつもの格好でいいか。

あとはいざという時縛る物とかいるかな? アサスを袋詰めしたらみんなに不評だったし、今回は縛り上げる方向で。

リシュにあげた綱のレプリカを地の民からもらったのがあるからそれ持ってくか。レプリカというか、丈夫な綱を目指して地の民が作ったやつだけど、熱にもかなり強い。

あとは出たとこ勝負で、いざとなったら【転移】で逃げる。

「リシュ、行ってくる」

念のため、リシュの水も替えたし、準備ヨシ!

リシュを撫でて【転移】。

転移先はマリナの突端、一応旱魃の被害がひどそうなところが近いかなって予想で選んだ。

『風と大気の系列の精霊で手伝ってくれる人募集!』

声をかけると、ありがたいことにどんどんと集まってくれる。

『……うふっ』

『いや、ちょっと大物に来られても困るんですけど』

なんか女性の姿――成人女性より二回りくらい小さい? いやでも着ている薄物を長くたなびかせている。袖、裾、帯と大気に広がって溶けている。つい人間基準で女性部分だけで大きさの判別をしそうになるけど、たなびいてる薄物も精霊の一部なわけで、かなり強大な精霊っぽい。

周囲の精霊は困惑気味なのと 傅 ( かしず ) いてるのとびくびくしてるのとなかなかのカオス。

誰だか知らないけど、絶対名前ついてるだろ? セイカイみたいに人から共通で認識されてる名前が。

『うふ』

にっこり笑う精霊。

『困ります』

このサイズの精霊と契約っぽいことしたら魔力減る。

さすがに何があるかわからない海底に行くのに、魔力ごっそり減らした状態で行くのは嫌だぞ?

『うふ』

『うふと言われましても』

と言い返した途端、魔力が持っていかれる。待って、待って、この精霊の名前、もしかして「うふ」? 「うふ」なの?

この世界で一般的に知られていても、俺が知らないトラップ発動! 有名どころの精霊はレッツェに聞いて押さえておくべき? ハウロンに聞いたらすごくマニアックなやつまで教えてくれそうだ。

でもそこで俺が名前をうっかり復唱して、ほっぺた案件になる未来しか見えないんですけど!

『うふ?』

心配そうに俺を覗き込んでくるうふ。

『いや、まあいいけど。そもそも俺が集めたんだし、ありがとう』

次回はもっと慎重に呼びかけます。

最近なんか魔力が増えたせいか、契約精霊が増えたせいか、大物が顔をだすことが多くなってる気がする。

『うふっ』

嬉しそうに笑ううふ。

うふの眷属もまるっと俺の精霊になった気配で、周囲の大部分の精霊が俺を見つめていたり、周囲をくるくると飛び回っている。いや、これは呼びかけた時にもやってたか。

とりあえず予定を変えるのもやだし、ハウロンに倣って魔石を潰し、流れ出た魔力を取り込んで回復。魔力の流れがわかれば、この方法で回復するのは難しいことじゃないようです。ただ、魔石を潰す握力が必要になるだけで。

大賢者、握力すごいな? 渡したの確か翡翠のでかいのだよね? 精霊で強化でもしたんだろうって思ったんだけど、そもそも魔力枯渇に近かったみたいだし、素の握力っぽいんだよね……。なんで知識勝負の大賢者やってるんだろう?

握り潰す以外の方法はどうなんだろう? 多分手で覆ってないとさっさと拡散して集めるのが無理になるかな? 後でやってみよう。周囲の精霊は喜ぶだろうし。

よし。

『エクス棒、ちょっと手伝って?』

『あいよ、ご主人!』

腰のフォルダーからエクス棒を取り出し、呼びかけるとぽこんっとエクス棒登場。

『これから海の底まで行って、火の精霊に退去をお願いして、お弁当を食べて帰ってくるんだけど、よろしく』

『よしきた! 海の中の冒険だな!』

張り切っているエクス棒。

『うふ、早速だけど、俺の周りに空気の層を作ってくれないかな? うん、そう。ありがとう』

層だからそうって言ったわけじゃないぞ?

俺のイメージを読んだのか、特に注文をつけなくても空気が入れ替わっているし、いい感じ。

『深さによっては縮まっちゃうから、都度空気足してね』

『うふ』

頷くうふ。

さて、海の底ってどうなってるのかな? 海の中って魔物がいるんだよね? 落ち着いてお弁当食べられる場所があったらいいな。