第583話 ここぞとばかりに
第583話 ここぞとばかりに
使う予定がないのに剣の腕が上がっているジーンです。備えは大事なのでいいと思います。うん。
早く涼しくなってくれば、鍛冶とかガラス作りとかで火を使うのに……! 料理では使ってるけどね、料理中に隣にいるのは俺もヴァンも落ち着かない。
で、現在はその料理中。メインは地の民やハウロンたちが用意するんだけど、その他につまめる物を。パウンドケーキとかは焼いたけど、宴会用の華やかなのを準備中。
単にいいかげんマンゴーをなんとかしたいだけだけど。手のひらに乗るサイズのベイクドチーズのタルト台を用意して、ヨーグルトクリームを絞って――どれ、花形に乗せたろ。くし形に切ったマンゴー並べるだけだけどね。
同じようにもものタルトも用意。ちょっとアールグレイの茶葉を入れたアーモンドクリーム。美尻になりますが、きっと酔っぱらっていれば気にならないことでしょう。
マンゴーのオレンジとももの薄ピンクの花のタルト。あと一種類くらい別の色欲しいな? オレンジは色が被る。苺は使うからダメ。りんごにするか、皮も一緒に使えば果肉も染まって結構綺麗に赤くなるし。
他にミートパイのノーマルとカレー味、ベーコンとじゃがいものパイ。そしてその他余っているフルーツで大量のラッシーを作って準備万端。
……金色シリーズをそっと混ぜても、地の民なら受け止めてくれそうだな? いや、料理せずにそのまま持っていった方がウケが良さそうだ。籠いっぱい用意しよう。
あ! だったら、「わんわんとアサスへの供物です!」って言えば……っ。よし、籠だ。籠を用意しよう! いや、なんかこういい感じの大皿とかのほうがいいか? 足がついて高くなってるやつ?
そういうわけで久しぶりにパスツールにきました。俺がホーローのバスタブやら磁器やら頼んだ町だね。さすがに作ってもらうのは間に合わないから既製品から選ぶ。
そしてなるほど、この優勝カップみたいなやつは、フルーツコンポートって言うんだ? 象がついたやつとかスワン型もあるね。孔雀もいる。
葡萄の柄切りハサミがある世界だけあって、ちゃんとそのままの果物盛る用の食器がありました。
ただし、ここは高級器屋――というか工房。依頼を受けて作り始めることがほとんどなんで、あんまり数がないし、形が揃わないな? だいたいディナーのコース用のセットとか、金持ちや貴族がセットで揃えるものだしね。
ナルアディードのほうが揃ったろうか。いや、食器はここが最先端で、ここからナルディードに運ばれてるはずだ。日数をかければパスツールでもナルアディードでもどっちでも揃うんだろうけど。
もう完全に同じもので揃わなくてもいいか。精霊に頼んで、精霊金かなんかで同じ装飾を追加すれば、揃いの食器に見えるだろう。たぶん。
あ。
「すみません。この深皿のセット見せてください」
「はい、どうぞ。滑らかで美しい白でしょう?」
お店の人に見せてもらい、大きさを確かめ、これで決定する。
どうせ精霊金で細工するなら足も精霊金でいいよね? これなら同じ形でたくさん作れるぞ。
わんわんとアサス用、エス用、シャヒラとベイリス用、その他ネネトとか来たらあれだし、倍用意しとけばいいかな?
地の民は籠のほうが喜ぶ気がするし。とても繊細な芸術品を生み出すのに、自分たちは素朴なものを好む。宝物庫には宝飾品も溢れてるのに、自身がまとうのは地味なもの。でも使う素材は珍しいものでとても 品 ( しな ) はいい。
なんか不思議な民族だよね。
首尾よくとはいかなかったけれど、果物用の器を手に入れ家に戻る。作業部屋の木箱に入れておいた金と銀を取り出し、皿を据えた机へ。
載せるのも金色だし、白と金と銀じゃ寂しいかな? 魔石も余ってるし、数があって綺麗なの見繕ってつけるか。【収納】から適当に出して、石を選ぶ。宝石質の大きなやつ。
たぶん神殿内は暗めで松明や篝火がたかれるので、火のゆらめきで綺麗にみえるやつ。
『すみません、この魔石と金銀を使って、これを嵩上げする足と、とってを二つと適当に川の流れをイメージした装飾をお願いします。砂紋とかでもいいです。』
優勝カップみたいな形を思い描きながら、精霊に無茶振りする俺。
あ。足の模様が完全にお寺のあれになった。そうですよね、砂漠の自然にできる砂紋は、見渡す限り砂だから綺麗なんであって、この小さなところでは微妙ですよね。
あ、ちょっと! 寛永通宝はやめてください! 砂紋かもしれないけど、それは香川県の観光地……っ! 前言撤回、花、花でお願いします!
――いろいろ試行錯誤を精霊にしてもらった末、いい具合のものができた。職人集団な地の民にはとても見せられないけどね!
よし、あとはこれに黄金の果物シリーズをバランスよく載せるだけ。他に使い所が難しいし、盛れるだけ盛ろう。