第602話 修理
第602話 修理
エスの『旅人の守護石』以外にもたくさんの緑色の石を手に入れた。目的のものではないけれど、せっかく探してきてくれた物なのでありがたく持って帰ってきた。
長年砂に埋もれていた石たちを家に持ち帰ってせっせと手入れ。なお、『旅人の守護石』についてる毛糸の装飾みたいなの、ラクダの毛と判明。
綺麗にしたいけど、これは結び方とかにももしかしたら意味があるかもしれないので、ハウロンに聞いてから手をつけるつもりで避けておく。なお、たくさんある模様。
とりあえず宝飾品というよりは、自然にできたっぽいものから綺麗に。雷管石とテクタイトはかっこいい形をしたものを2、3個確保して、残りはメール人に贈るために別にしておく。
『旅人の守護石』の他も石単体じゃなくって、首飾りとか指輪とかの状態のものがたくさん。
宝石あんまり詳しくないせいか、エメラルドにふんふんしている俺。――と、思ってたんですけどね?
なんか青ぽいなと思って【鑑定】したら、アレキサンドライトとかいう石だったのを皮切りに、確認したら違う石がいっぱいでした。ガーネットに緑があるなんて聞いてない。
いや、記憶を掘り起こすと知識はあるんだけど。多分ちらっと見ただけとか、普通は忘れる記憶も【鑑定】のせいか【生産の才能】のせいかちゃんと思い出せる。
ただ、エメラルドだと思ってたから考えなかっただけで。そういうわけで色々分け直して種類が増えた。
種類が増えたからといって、見た目が好みか好みじゃないかで選んで終了なんだけど。飾っとくだけで、特に身につけようとも思わないしね。
金属が歪んでいたり、傷がある物は直すことにした。なんとなく形がわかるものは、そのイメージに沿って手を入れる。元の形がわからなくなってるものは諦めた。
でも中には精霊が宿っている物もある、長い年月埋もれている間に眠りについているものが大半だけど、そっと魔力を注いで起こし、直すのを手伝ってもらうというか、直ってもらう。
でもそれには欠けた部品やらを補う物を用意せねばならず、今度はその用意のためにナルアディードの店を巡ったり、部品をとるためにエスの古いアクセサリーを買い取ってきたり。元の形がわからない、精霊がいない宝石も修理の素材に回す。
そうやって数日指輪やら、ブローチやらを直し、今は首飾りかな? という物を直そうとしている。潰れてひしゃげた金属にエメラルドがたくさんついてるやつ。
『はい、はい。起きて〜』
『ん〜?』
魔力を少し流して精霊を起こす。
石に宿る精霊はその石が好きだけど、他にも好きなものがある。中でもカットされた宝石に宿る精霊は、金とか銀とか、柔らかい布とかがそばにあると喜ぶことが多い印象。
宝飾品そのものに宿る精霊もいるんだけど、力が弱るとだいたいその中で一番大きい石の中で寝てるかな。
首飾りっぽい物をテーブルの中央に置いて、その周囲には首飾りに使われていたってわかる物を置いてある。精霊金と真珠とルビー、ダイヤ。欠けてる部分があるので、それを補える量。
さらにテーブルの上には精霊銀やプラチナ、色々な色のビロード、各種宝石――というか精霊石。本当はただの金銀とか宝石を用意するべきなんだろうけど、うちにないんです。そこは諦めてください。
色々素材集め終えて、明日から本格的に〜とか思って、いざ直すためにテーブルに出したら精霊が集ってですね……。
『君の寝床を元の形に戻したいんだけど、手伝って。何がいる? 何が好き?』
『ん〜金が好き』
『テーブルの上のものは好きにしていいよ』
精霊金は色々用意した。火の精霊の『細かいの』、水の精霊の『細かいの』、大気の精霊の『細かいの』とかこう、相性があるからね。相性を考えなくていい、属性までなくした消える寸前の『細かい』の精霊金もあるので、万全です。
金と銀に関しては、前から溜め込んでたせいで幸い各種取り揃えている。元々はただの金銀だったんだけど。
エメラルドの中にいる精霊が、そっと精霊金に手を伸ばす。それに答えてするすると首飾りに流れこむ精霊金。精霊金が飲み込むようにして元々の色の変わった金属と混じり合い、形を作ってゆく。
あれ?
ちょっと待って。高さがあるんですけど?
『ん〜赤い石も懐かしい』
ルビーが引き寄せられる。
『ん〜きらきらに囲まれてた』
ダイヤが引き寄せられる。
『ん〜揺れてたやつ』
涙型の真珠が引き寄せられる。
うん、首飾りじゃないなこれ。
どう見ても王冠です。どこのですか?