第603話 ハウロンの解説
第603話 ハウロンの解説
他にも似た感じのエメラルドの何かがあったので直したら、エメラルドの首飾り? 肩飾り? 頸飾 ( けいしょく ) って言えばいいのかな? よく王様が首というか肩からかけてる勲章下げるやつだった。
……王冠の一番大きいのを見て他も全部エメラルドだと思ってたけど、首からかけてるやつの方も、王冠の他の宝石もペリドット混じってるなこれ。
まあ、少なくとも俺は【鑑定】しないと見分けつかないし、エメラルドってことでいいか。
というわけで、このエメラルドの王様セット。あとは王笏とマントがあったら一式だよね。マントはともかく、せっかくだから王笏作ってカーンにあげよう。まだエメラルドあるし。
砂に埋もれてたものってことは持ち主はいないはず、たぶん。
砂漠の落とし物の中で、一番大きなエメラルドを選び、先ずは形を整えることから。『斬全剣』ですぱっとする。
いや、だって研磨なんかしたら逆に歪む自信があるし。
で、あとは精霊金さん俺のイメージを読み取ってもらってですね。エメラルドを巻き込みつつ、姿を変えてもらったわけですよ。
エメラルドを囲んでるのがハート型で翼が生えてるぞ? どこの魔法少女のステッキだこれ? ハウロンが使うの? いや、王様だしカーンか。
リテイクです精霊金さん。確かに短い杖みたいなのとか思ったけど、これじゃないです。変身されても困ります。
あ、ちょっと、某ライダーベルトもだめです、遠くなりました。カーン装身具としては魔法ステッキよりはアリだが、違います。
そうです、イギリスの王笏みたいにしてください。
途中何度か事故ったが、無事に出来上がった。よし、明日ハウロン経由で渡してもらおう、ハウロンには『旅人の守護石』も見てもらわないと。
ハウロンがカヌムに今度来るのいつだろう? 発端はレッツェだし、たぶんこういうの好きそうだし、できれば一緒にハウロンからエスの『旅人の守護石』について聞きたい。
精霊図書館で調べたけど、この世界は口伝とかも多いし本に書かれていることが全てってわけじゃない。それに本が書かれた時代じゃなくって、今現在の認識を知りたい。
でもって本日は終了! リシュと戯れて風呂に入って寝る!
「リシュ、ブラッシングしようか」
名前に反応して、足元にいたリシュが顔をあげてこちらを見る。
見上げる首の角度が絶妙! うちの子かわいい。
◇ ◆ ◇
「――と、いうわけで『旅人の守護石』について教えてくれ」
何度かすれ違いがあったが、無事ハウロンとレッツェを確保。
話の対価に酒とご飯をハウロンの前に置いて、食べながら聞く態勢。
本日は赤ワイン、パン、かぼちゃのポタージュ、サヤインゲンとミモレットみたいなオレンジ色のチーズのサラダ、サーモンのグリル。
「へえ、こんなのもあるのか。どの辺のだ?」
「出てきたのはエスの砂漠でだ」
机に出した『旅人の守護石』を見てレッツェ。
「教えるのはいいけど、よくこんな完品に近いものを見つけたわねぇ」
そう言いながら、俺が出した『旅人の守護石』をハンカチの上に慎重に置き直すハウロン。
「いい石だわね、明るい緑と濃い緑が孔雀の羽根のような模様になって、グリーンの濃淡が綺麗でバランスもいいわ」
どうやら石としてもいいものを手に入れたらしい。
「この緑の石は、家庭の守護女神タウーレが好んで身につけるの。想いを込めて作り、その家から旅立つ人に持たせると守ってくれる効果があると言われているわ。具体的にいうと、持ち主に危険が及びそうな時に石が砕けるのだそうよ」
「へえ」
じゃあ、この砂の中から出てきた割れていない石の元の持ち主はピンチじゃなかったのかな?
精霊がいる世界なんで、その手の話は本当に発現しそうだなって思ってる俺だ。想いを込めないでつくったお守りか、それともピンチでもないのにそそっかしくも落としたのか。
「この石を囲む紐の編み方がけっこうバリエーションあるのよね。初期は石が一つにもう少し素朴な感じだったんだけれど、脇石みたいに石が増えたり編み方もだんだん複雑になるの――これは、中期かしらね。石が一つだけど、編み模様の方はちょっと複雑だし」
ハウロンがそう言って、ハンカチに載せたまま『旅人の守護石』を俺に返してくる。
「なるほど。作り方は全部かっちり決まってるわけじゃないんだ」
「エスで今でも使われてるのか?」
レッツェが聞く。
「いいえ。アナタが知らなくてもしょうがないわ。巨石の時代、今は古代エスって呼ばれてる時のものよ」
ハウロンが否定する。
「古代エスのラクダと、今のラクダって同じ?」
「なんでそこでラクダなんだ?」
隣でレッツェが不思議顔。
「これを直すにはラクダの毛がいるみたいだから」
このゴワゴワしてる紐、ラクダの毛が古くてガビガビになったやつだ。
「やめて、出てきたままで保管して。歴史的痕跡が……っ。同じタウーレの石あげるから、それで新しく作って」
ハウロンに止められる。
「歴史的痕跡……」
もう直しちゃった王冠がとても出しづらい。