第609話 島の塔に収める
第609話 島の塔に収める
『パポナちゃん、ここに住んでた人が持ってた『旅人の石』って知ってる?』
『ボクしらな〜い』
白い泡がぼこぼこと踊る。
『じゃあ、ここで石のついた持ち歩けるような装飾品を集めてくれる?』
『いいよ〜、ボクの中に入る子に頼んでいい?』
『うん』
そして持っていかれる魔力。これは俺が許可したことだし、当然だけど。パポナちゃんもセイカイの眷属でセイカイよりは小さい存在。人間にとっては十分大きな 精霊 ( そんざい ) だけどね!
この周辺にいるパポナちゃんの眷属はもっともっと小さいけれど、代わりにたくさんいる。
それはそうと、藻の精霊に働かせるの止めてください。怖いです。
金の指輪がいくつか。石の付いてないネックレス。ルビーのついたブローチ。――全部違う。というか、廃墟の規模に比べて少ない? かな?
『どうする〜? ここを探すの〜? 海底のものが波に巻かれて運ばれてくとこってここじゃないよ〜?』
早く言ってください。
大きなものはここに留まっているけれど、小さなものは波に攫われて――特に嵐の日には根こそぎ持っていかれるらしい。
で、もう少し深いところ、暗い窪みのある海底に移動しました。そこには金銀財宝が……といいたいところだけど、埃のように灰色の砂が溜まっていてよくわからない。
『ばふっと表面の堆積物、吹き飛ばしてくれる?』
『いいよ〜』
『いいよ〜』
パポナちゃん以外も泡の精霊が手伝ってくれる。
姿を表したのは金銀財宝鍋なんか。陶器なんかは割れた状態だね、海底を転がることもあるだろうし、まあしょうがない。
『もらっていい?』
『〜〜〜』
『〜〜〜〜〜』
『〜〜』
ここに物を集めた波の精霊たち。巻き上げる海水の精霊、掬い上げる海流の精霊、冷たい流れの精霊とか。好きで集めているのか、偶然集まっちゃったのかわからないけど一応声をかけたら、どうぞどうぞと言う。
『ありがとう』
【言語】さん便利だなぁと思いながら、窪みに降りてこんもりとした堆積物を漁る。俺の周囲でも精霊たちが持ち運べるような物を引っ張り出して、見せに来てくれる。
そして多分、これだろうという石を連ねたブレスレットをいくつか。みんな石が微妙に違うんだけど、形は一緒なんで多分?
丸く磨かれた不透明な石が、大小交互に細い銀っぽい鎖が通され連なっている。淡い緑から深い緑、黄色みが強いものから黒みが強いもの。白っぽい縞、鱗のような模様。そして緑に紫のまだら。
『ボクその石知ってる〜。沈んじゃった国でとれる石〜』
『さっきのとこ?』
パポナちゃんの言葉のニュアンスが微妙に違う気が。
『うんうん、違う〜。でもそこから逃げてきた人が、さっきの町の人にあげた石〜』
『逃げて来たのか』
『黒いのに追いかけられてたよ〜。黒くなっても『王の枝』だね〜いっぱい精霊集まって、黒いのが大きくなっちゃった。その黒いのがどっちも沈めたんだよ〜』
こわっ!
どんな『王の枝』だったのかわからないけど、全てを海に沈める系なのか。しかも国が滅びても、その国の人を追い回すとか。というか、エトルの人はとばっちりをくらってない?
うちのエクス棒、大らかでよかった。
『どんな国だったの?』
『知らな〜い、ボクの外だもの。ここに入った時のことしか詳しくないんだ〜。風の精霊が話してることくらいしか聞けないからね〜。ボクもボクに入ってくるモノにしか興味ない〜』
パポナちゃんが言う。
狂った『王の枝』のこと、もう少し精霊図書館で調べてみようか。この緑に紫まだらの石がとれる今はもうない国もちょっと気になるよね。他の普通の『王の枝』も見たい気はする。
どっかの王様の即位式でも狙ってみようかな。即位式に『王の枝』のお披露目あるとか猫船長が言ってたはず。
とりあえず今日は、エトルの旅人が身につけた『夜の安全を守る石』ゲットだ。夜を歩く時のお守り、見えない危険からの守護。
綺麗な石だけど、透明度もなく宝石ではない。小さな蛇の姿をした精霊が眠っている石。
島の塔に行って、コレクションルームの棚に収める。これだけだと寂しいから、なんか縁のある本とか代表的な置物とかも拾ってこようかな? それとも小さなディスプレイケースでも作ろうか。
四角く区切られた棚は、旅人の石を収めるには大きい。ドラゴンの鱗とかは格好良く飾れたと思うんだけど、どうしようかな。
置き場所を決めて持ち出すのが面倒になる前に、ハウロンにも見せにいかないと。楽しみにしてるようなこと言ってたし。