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第660話 痕跡を見つける

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第660話 痕跡を見つける

俺のせいでウーパールーパーになってしまったユメール。

確かメキシコサンショウウオだよね? イモリの幼体にそっくりなんだけど、ウーパールーパーはあれで成体なんだよな。

深海でユメールと別れ、陸地を目指す俺。魔力は大賢者様に教えてもらった方法、魔石を潰して補給した。

荒ぶる海はそのままだけど、俺に優しい。凍つく冷たさももう気にならず、むしろ心地いい。

そして陸地到達!

途端に寒い! 剥がれて薄くなっていた空気の層を慌てて増やす。まだ海からの風もあるし、一番きつい寒さってわけじゃないんだけど。それでも俺と縁のない精霊たちが起こす陸地の風寒い。

陸地の大きさは大体わかってて、島じゃなくて大陸って呼んでいいと思う。……こっちの大陸の定義ってどうなってるんだろ。

元の世界でも明確な定義ってなかったなそういえば。グリーンランドは島で、オーストラリアは大陸。オーストラリア以上に大きな面積をもつ陸地を大陸と呼ぶ慣例があるだけだったような? まあ、いいか。

なんでここの広さがわかるかというとユメールの力が及ぶ範囲が地図に記されたから。地形は謎ですが、輪郭だけはわかります! みたいな。

さて、陸地に【転移】できるようにしたし本日は終了! 魔石も沢山割って残り少ないしね。

人間の入り込まない場所は、強大な精霊が棲まうことが多い。風や波、影、光――決まった精霊が生まれ落ちて、それが眷属になってを長い年月繰り返す結果だ。

また大きな精霊に遭ってしまったら面倒だし、大人しく帰る。魔物を倒して魔石を増やしてまたこよう。備えは大事。

ということで『家』に帰還!

リシュがたたたっと走ってきて、目の前で一度止まって匂いを嗅ぐ。慎重に近づいてさらにくんくん。

思う存分嗅いでください。うちのリシュは世界一可愛い。

一通り嗅いで満足したリシュがじゃれかかってくる。ごろんとひっくり返して、わしゃわしゃとお腹を撫でると、笑顔――絶対笑顔!――でカプカプと俺の手のそばの空気を噛む。

噛まれないのはわかってるけど、その度わしゃわしゃする手を引っ込めて、リシュが少し引いたところでまたわしゃわしゃ。

そうしてしばらく遊んで、リシュがかぷかぷしてこなくなったところで終了。うちのこ可愛い。

さて、何かあったかいもの食べよう。何がいいかな? ――鍋焼きうどんにしよう。

土鍋登場!

材料はうどん、長ネギ、油揚げ、かまぼこ、椎茸、海老天、出汁が出るから鶏肉も。あと卵。

海老天は揚げたのがあるけど、鍋焼き用に衣多めのやつを作ろう。

揚げてる最中に衣用の液を上から散らしてもこもこさせるだけだけどね。衣が分厚くなったというよりは、天かすがいっぱいついた感じだ。

かまぼこは使いかけが――なかった。新しいのを『食糧庫』から出してくる。板から剥がすのは包丁の背でやると綺麗に取れて楽しい。白いうどんの具材にするなら赤いかまぼこだよね。

ネギは適当に切って焼く。ぶつ切りです。斜め切りは、煮てる間に中身が出る気がして。焼きネギにしてくたっとさせとけば、まあ、食べた時に飛び出る危険もさがるし。ほうれん草は茹でて冷水に取る。

それぞれ具材は【収納】しといて次はもっと早く作れるようにしておく。一人分だけ用意するのって、逆に手間だし沢山作った。

具材の準備が終われば勝ったも同然。何に勝つかは謎だけど。鍋に出汁とうどん、一緒に煮るものを入れてしばし。

卵は白身がツユと混じるのあんまり好きじゃないから取り扱いは慎重に。一旦蓋を閉じてしばし待つ。

冷たい水を用意して、いただきます。

蓋を取った時の湯気、出汁の香り。火からおろしてもぐつぐついってる見た目! 玉子の具合もOK!

あとは火傷しないように気をつけて食べるだけ! 『食糧庫』と【全料理】選んで心底よかった……。

急ぎの精霊確保もなんとかなったんでのんびりだ。あとはゆっくり漢字を理解する精霊がどこにいるかちょっと調べるつもり。

多分、話に出てくる勇者登場以前の、滅びた都市周辺の古い精霊だと思うんだよね、漢字を理解するの。『滅びの国』でビンゴだったし、あと2、3箇所調べたいかな。

今日行った大陸あたりにそんな文明の痕跡ないかなって。

契約した俺の精霊たちが漢字を覚え始めたのは最近。精霊が俺の考えを読む時に一緒に流れ込んでるんだと思う。

最初は全然だったんだけど、俺が沢山精霊と契約したら、精霊の在り方が俺に傾いたのか漢字を理解するというか覚えているようになった。

でも俺と契約してすぐの『滅びの国』の黒精霊が、箱に書いた魔法陣の漢字を理解したっていうのは流石に早すぎなんで、この世界にいる例の姿を表さない何者かって日本人かなって。

もしかしたら歴代勇者も俺くらいに精霊従えてたかもだけど、少なくとも今まで漢字を理解する精霊って人間の活動範囲にはいなかったし、砂漠にもいなかったからね。

記録に残らない、精霊たちが口をつぐむ存在、メール人が警戒する者、沢山の精霊を従えて隠れた者。

俺や姉たちと同じように召喚されてきたのか、それとも偶然この世界にきたのか。

今のところ悪意は感じないし、敵対するつもりはないんだけど、気になるよね。