第661話 のんびり
第661話 のんびり
とりあえず後で年表作ろう、いつの時代にどこでどの都市が栄えていたのか。いるかいないかわからない誰か――エックスくんとしとこうか――エックスくんの影響がどの時代のどこにあるか。
エックスくんの影響は、俺の知ってる範囲の最初からってわけじゃなさそうなんだよね、でもどの時点からいたかはわからない。もしかしたらずっと前からいたけど、積極的に干渉し出したのがその時代とかかもしれないし、俺が痕跡を探せてないだけかもしれない。
でもそれを考えるのは後で。
今日はゆっくり寝るんですよ! 黒精霊、しかも人間の思考に近いのを大量に取り込んでたせいで、夜になると碌でもないこと考えてしまってしばらく快眠とはいかなかったんで。
夜に突き詰めてしまうといい結果にならない。いづれにしても色々考えが煮詰まっちゃったら朝日の中で考える方がいい。いいんだけど、つい眠りに落ちる前に考えてしまう。
眠りに落ちる前には楽しいことを考えてたほうがいいし、暗いことを考えるくらいならいっそえっちなこと考えてた方が健康的! 俺は朝のリシュの散歩コースを具体的に考えてたけど。
というわけで、お風呂に入っておやすみなさい。
翌日は朝日と共にリシュと散歩。快眠でした!
眠りに落ちる前に潮騒の音を聞いた気がしたけど、気のせいだろう。なにせユメールの海は潮騒なんて可愛らしいものじゃなくって、ざっぱんざっぱんどっぱんどっぱんだったし。
山の中は冬の様相。
なんかカリントウ饅頭ちゃんをマントルに送ったら、熱気だとか熱波だとか乾燥だとかの精霊がいっぱいだったのに、反動のように寒波だとか寒風だとかの精霊に変わった。
タリア半島のカリントウ饅頭ちゃんがいた周辺、もともとそう気温が下がらない海岸部はまだ気温高めなんだけど、少し内陸に入った俺の家周辺は急に冬ですよ!
もともと日本みたいに四季がはっきりしてるわけじゃなくって、冬なのに半袖で過ごす日が混じったり、夏なのにいきなり寒かったりする日が混じる場所なんだけど。
さっさと木々が葉を落とした梢から空が見える。ちょっと前は生い茂る葉で覆い隠されていた空だ。地面に落ちる陽の光は優しく暖かい。
リシュと俺が歩くと、枯葉の匂いがたつ。この辺りは冬に雨が多いんだけど、ここ数日、霜が降りるような水気は大気にはなく、落ちているのはかさかさと乾いた葉だ。
まだ大気は乾いたままっぽいね。早く旱魃の影響を抜けてくれるといいんだけど。
落ち葉を踏んだときの感触が面白いのか、リシュがわざと枯葉をけたてて歩いている。短く歩いては止まり、地面の匂いを嗅ぎ、時々俺を振り向いてはまた短く進む。
乾いた落ち葉の布団に潜り込み、気持ち良さげに寝ていた小さな精霊がびっくりして逃げ出し、かさこそと動いてまた落ち葉の間に隠れる。大きな欠伸を一つ、気持ちよさそうに目を閉じ、すぐに眠りに落ちる。
寒い日の朝の精霊たちは静かだ。
たっぷり散歩して、帰りに畑と果樹園に寄る。こちらはパルとカダルがよく訪れるせいか、元気な精霊たちでいっぱい。野菜や果物を黄金シリーズにするのはやめてね?
油断すると時々黄金シリーズが混じるけど、精霊たちが頑張ってくれてるおかげでうちの野菜は美味しい。
そろそろ終わりが近い蕪と白菜を収穫。クリームチーズのシチュー作ろうシチュー。
家に持ち帰って、じゃがいもとにんじんも入れてシチューを作る。ベーコンとソーセージどっちがいいかな? いいや、両方いれてこう。白ワインを入れて後はほぼ白菜の水分で蒸し煮。小麦粉は入れずに牛乳とクリームチーズ、バター、塩胡椒。砂糖を少し入れとくと、牛乳が膜を張る温度が上がって玉になりにくいのかこれ?
白菜がくたっとして蕪が柔らかくて、時々食いたくなる。本日の朝ごはんはシチューとパン、きのこのオムレツ。
今日はどうしようかな?
クリスの家にお邪魔するときのお土産の用意もしなくては。基本食べ物と――あと食器あたりでどうだろう? パスツールの真っ白い磁器、元は俺が教えたものだから、今のうちにお願いしとけば融通してもらえるし。
それにしても今は忙しいから聞かれてないけど、旅行中ハウロンに『滅びの国』で描いた魔法陣の説明とか追及されそうなんだけど。使った漢字だけじゃなく、絶対そのまま日本語講座になる気がする。
あとその流れで何故か色々バレてレッツェにほっぺたの刑にされそう。今回は偶然だけど、周辺の船乗りさんとか救ったわけだし、許されたい。