第668話 オアシス
第668話 オアシス
アーモンドの落花の原因がイエスズメだと判明。これは微笑ましい小鳥のいたずらってことで――って、放置しようかとおもったけど、むちゃくちゃ落としてるので教育的指導を精霊に頼む。
収穫用ではないけど、実がならないのも寂しいし、花を全部落とされちゃうのも寂しいからね。蜜を飲むだけならともかく、遊びで丸ハゲはだめです。
それはともかく、ハウロンのバカンス計画。俺的にバカンスといえば南の島でアロハなんだけど、ハウロンが何度も気軽に行けるところがいいよね?
ハウロンの【転移】は登録制だし、どこでもって訳にはいかない。エス川のほとりに用意すれば、船を使って簡単に――とはいかないけど、行き来できるけど、なんか川辺の畑の視察に入りそうなんでパス。
ハウロンなら『魔法の絨毯』があるし、エス川のほとりじゃなくても大丈夫。というか、実は場所の選定はもう済んでいる。
カーンの国 ( ここ ) は領土をめぐって争いが起きるような隣国はない。エスとの間にも砂漠がどでんと広がってるから。エス川遡ってくるにしても、エスの女神はカーンの味方だし。
中原やタリア半島の国々と違って、周囲に国がないんでだだっ広いというか、自由に使っても文句が出ない土地に囲まれてる。
そういうわけで適当なところにバカンス場を作っても怒られません。俺が見つけた場所は砂漠のオアシス。
砂漠にも雨は降る、でもほんのちょっと。年単位で雨が降らないこともあるくらい。せっかく降った雨も、乾燥した空気と暑さで蒸発してしまう。降水量より蒸発量のほうが多いから、雨を貯めて水源とするということは難しい。
でも砂漠の周辺――といってもかなり遠いけど――にある山に降った雨や雪は、地下水となって砂の中を通り、岩盤が浅いところで表に出てくる。それがオアシスの水源。
幻みたいだけど、オアシスは本当にあるんだよね。ただ、御伽噺のような感じかというと砂と硬い岩盤のせいでそうでもないわけで。他の場所は知らないけど、俺が見つけたところは水際に沿って緑がちょっとあるだけだったね!
そう言うわけで、ちょっと人の手というか俺の手を加えてます。具体的にはエスの周辺に生えてたので良さげな木々と、スッカリとかいう桃の一種、イチジク、ザクロ、ゴムの木を植えた。木陰大事、果物も大事。
春は桃、夏と秋は無花果とザクロな計画です。もちろん甘い方のスイカも。
なお、パイナップルの精霊にはお断りされました。湿気が足りなくって無理だって。オアシスで水はあるけど、大気に湿りは多くないから仕方ない。
「植物よーし!」
まだ『緑溢れる』とはいえないけど、植えてまだそう経ってないんだからしょうがない。でも、普通よりはるかに成長が早いのは、それぞれの精霊たちとアサスのおかげ。
岩盤に溝を掘って水が少し広がるように細工もしたし、土も運び込んだしね。それでも砂漠の日差しと乾燥は、育つ植物を選ぶけど、いい具合なんじゃないかな?
「木々の伸び具合を見ると、ここがいいかな? 泉の先に夕日が見えるはず」
水辺で足を止める俺。
「ご主人、ボコっとやるのか?」
周囲を眺めて満足した俺にエクス棒が聞いてきた。
「ボコッとやります。『岩盤の精霊、岩石の精霊、砂の精霊――手筈通りにお願いします』」
エクス棒で地面をついて、魔力を流す。
砂が流れて下から四角い枠組みがボコッとね! 頼んでおいたのは、石でできた平な屋根がついた柱4本。造形は見事です、だって地の民に作ってもらった模型を、精霊たちに事前に見せてるからね!
『ありがとう』
お礼をいって次の作業にかかる。
「よいしょ」
【収納】から日除け用の布を取り出す。
「エクス棒、お願い」
「アイアイサー!」
エクス棒に伸びてもらって、四方に吊るす。タープですタープ。
ランタンを中と外と二桁ほど吊るす。火を灯したランタンから光の精霊が抜け出し、泉の表面をなぞってふわふわと飛ぶ。陽が落ちたら幻想的だね、きっと。
中は絨毯とクッションでいっぱいにしたいところだけど、ここは暑いから泉が見えるようビーチチェアを設置して終了。
おっと、飲み物とか果物を置くテーブルも置いとかないと。ハウロンが興味を持ちそうな本も数冊。
うん、いい感じ。とりあえずボコッとした枠はあとで石灰で白く塗ろうかな? ベタな感じのトロピカルジュースも【収納】に入れてあるし、準備万端。
さて、ハウロンを呼んでこよう。