第673話 移動の方法
第673話 移動の方法
カヌムの家、クリスの実家にお邪魔するために集まったメンバー。
「俺、海こえて西の島国に行くの初めてだ」
きらきらしてるディーン。
「『滅びの国』にいったじゃん」
「あれを国にカウントすんな! 生きてる人間の国のこと!!」
ディーンにつっこみをいれたら、却下された。
ギルドの依頼やら個人的な仕事、国の仕事を調整して無事全員揃った。レッツェも細々と忙しいし、金ランクになってまだ浅いディーンとクリスも指名依頼が舞い込んで忙しそうだった。
「羊さんがたくさんいるって! 楽しみ!」
「もこもこなんでしょ?」
「ふわふわだろ?」
ティナとエンとバクは、羊が楽しみのようだ。
これからお邪魔するクリスの故郷は『滅びの国』海域のそばの島国。漁業と牧畜が主な産業みたい? あと魔物が結構質のいい宝石を落とすんだって。
王狼バルモアさんは伝説すぎて、ギルドもおいそれと依頼ができない感じなんで、同じ金ランクでもスケジュールには余裕があった。当然シヴァと子供たちもオッケー、一家のスケジュールは、ほぼ子供たちの育成中心なんで。
「本当に土産は熊の毛皮でいいのかね?」
「もちろんだとも! 僕の故郷には熊は出ないからね、すごく高いんだよ。アッシュの狩った熊の魔物の毛皮は傷も少ないし、パーフェクトさ!」
アッシュの問いにクリスが答えてサムズアップする。
アッシュと執事もギルドからの依頼の調整だけだったので問題なし。実家のあれこれはリリスから手紙がくるみたいだけど、基本友達同士の交流の一環――あのリリスからなら不穏なことも書いてありそうだけど――で「帰って手伝え」とかはないみたい。
「アッシュ様が戻られるとなると、それはそれで別の不具合が出ますので」とは執事の談。貴族のあれこれは面倒くさそうなんで、近づきたくない俺です。
俺はギルドへ時々薬の納入してるだけでフラフラしてる自由人なので、ほぼいつでも平気!
ハウロンは諦めてもらって。
「お土産はこれくらいでいいかな?」
ティーセットの入った箱のほか、食料品をいくつか。
大人数でお邪魔するからね、自分たちの食う分と同じくらいは差し入れないと。こっちの食糧事情を考えると、魔物肉はともかく、他は直ぐに買い足すとかできないはずだし。
「十分すぎるよ!」
クリス。
「多すぎだろ。【収納】は見せられないんだから、手分けして持つぞ。――ハウロンがいない時は、ちゃんと長旅向けの選別と梱包しろよ?」
「気を付ける」
レッツェの釘刺しに頷く俺。
大賢者ハウロンの秘法でお邪魔したテイをつくる計画です。じゃないとこの人数で中原横断怪しすぎる。野菜もだけど。
「……どんどんアタシの名前が一人歩きしてってる気がするわ。アタシのできる【転移】は数カ所のみなのに」
若干遠い目をしたハウロン。
「【転移】魔法について、後で調べておきますんで」
俺の【転移】は最初にもらっちゃったんで、魔法としてどう成り立ってるかさっぱりなんですよね。
まあ、後から使えるようになったあれこれも、ハウロン曰く「魔法じゃない!」んだけれども。
「精霊に頼んだらできました」じゃダメなんだろうな、というのは理解してます。――いや、転移できる精霊にお願いしてハウロンの呼び出しに答えてもらえれば解決か!
よし、帰ってきたら精霊を探そう。俺の【転移】は転移先の精霊も関わってるみたいだから、複数になるかもだけど。
「おい。なんか今、変なこと考えてるだろう?」
レッツェがジト目で見てくる。
「思いついた! みたいな顔してたな」
ため息混じりにディノッソ。
「他の方向から課題へアプローチしてもいいことに気づいただけだぞ?」
たいしたことじゃありません。
「ちょっと待って。直前に話してたことって【転移】のことよね? しかもアタシの」
「うん」
不安そうに聞いてくるハウロンに頷きを返す俺。
「何考えてるか聞いてもいいかしら?」
「ハウロンが俺と同じ【転移】ができるようになれば、お互いいいかなって」
ハウロンは移動が便利なるよね?
「……」
ハウロン、レッツェ、ディノッソに沈黙が落ちる。アッシュは元々無口、執事もいつもの微笑みを浮かべて黙っている。
後ろではクリスとティナたちがきゃっきゃと楽しそう。
「無茶言わないでちょうだい!!!!」
急に叫ぶハウロン。
「隠れ蓑が同じことができる方がいいっちゃいいが、ちったぁ手加減してやれよ」
呆れたようなレッツェ。
「――大賢者の一族の秘法、どうなるのでしょうな」
「出発前からひどくね?」
執事とディノッソ。