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第685話 結局血の近い方へ

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第685話 結局血の近い方へ

滞在3日目。

朝ごはんは昨日と一緒、メニューは決まっていないと疲れちゃうんだって。同じ物がだされないと、体調管理が上手くいかないそうだ。

夜のメインも肉と魚の日が決まっていて、週のうち3日は肉――鳥とその他の肉も決まってるらしい――3日は魚、残りの1日は野菜だけの菜食日だそうです。

菜食日は酒も控えるらしいんだけど、その代わりお菓子をたくさん食べる日だって。

本当、地域によって色々な文化がある。

なお、過去に遡ってのお説教はなしです。説教は長引かせない主義です、周りが。

「今日は、呼び寄せた血族がくるよ。お願いしていいかな?」

「もちろんよ」

「うん。うまくいくといいね」

クリスに答えるハウロンと俺。

俺はハウロンの助手みたいな顔して一緒に見ることになってます。

ディノッソ家は、子供たちもいるし、また馬と羊を見に出掛けてもらった。

あんまり人数多くてもね。

呼び出した人物を待たせると言うか、接待してるから夕方でいいって言われたんだけど、弟くんの体調のことを考えると早い方がいいってことで、俺とハウロンは家で待機。

アッシュと執事は立ち合いはしないけど、出かけず部屋で結果を待つって。ディーンも一緒。

そして昼前、やってきたのは2人。

綺麗な顎のラインを持つのは娘さん。

その付き添いでお兄さん……と見せかけて、割れ顎の持ち主だな?

髭で隠れてるけど精霊が撫でてる。

というか、娘さんの方にもすでに精霊がいてですね。

「やあ、よく来てくれたね。申し訳ないが……」

言いかけて、母親に付き添われたサミルを見るクリス父。

「手紙で事情は大体わかったよ。大賢者がいるんだ、きっと大丈夫。危険がないなら他のことはいい」

お兄さんの方がそう言って、クリス父の言いあぐねた言葉を言わせない。

「お久しぶりです。西のカプスが娘、ハイリーが挨拶いたします」

そう言って軽く膝を曲げて体を沈める娘さん改め、ハイリーさん。

「兄さんも挨拶!」

そう言って隣の兄を肘でつつく。

「……」

ハウロンが静か。

うん、ハイリーの隣に牛頭がいるからね!

しかも白黒のホルスタイン。

面会するにあたり、精霊が見えるようになる魔法陣ハイパーをハウロンが使っている。

クリスは見えると色々意図せず邪魔してしまいそうだからと、今回は使っていないので見えないまま。

どうしたらいいのこれ。

サミルの精霊は移せそうにないかからお帰りいただく?

『あらあらまあ! 馬の頭のやつ、眷属をひとり置いてったのね!』

ホルスタイン柄の牛頭がしゃべった!

『ウン、モウ! 小さな子が困ってるじゃない!』

馬頭はなんかロリコン属性だったけど、牛頭さんは母性持ちっぽい。

いや、待って?

綺麗なライン派の精霊、お母さんのは小さかったよね? 喋らないし、馬でも牛でもないような?

『ちょっとアナタ、ここの次男に憑いてた子ね? ウン、モウ。馬頭に場所をとられて追い出されたのね?』

精霊が余ってた事情がいきなり判明。

あれか、あれのせいなのか!

『ウン、モウ。仕方ないわね、顎のラインが綺麗な別な子を紹介――』

俺たちがやろうとしてたことと同じことを牛頭が考えたようだ。

そして俺と目が合った。

『ウン、モウ。綺麗なライン』

『あ、すみません。精霊は間に合ってます』

即座に答える俺。

後でみんなに叱られそうだけど、顎精霊が憑くか憑かないかの瀬戸際です。声には出してないからセーフとされたい。

いや、反射的に断っちゃったけど、クリスの弟のためにこの顎を捧げるべきなのか?

でも血筋に憑くんだよね?

『ウン、モウ。憑けないから気にしないで。同じ血の匂いがしないもの』

合ってた。

やっぱり血筋に憑く精霊だった。

『ウン、モウ。ここはお母様に憑きなさいな。それじゃなければ、アタシのこの人に』

そう言って、ハイリーの顎を愛おしそうに撫でる牛頭。

シュール。

でも馬頭の時のようなちょっと人間にとって悪そうな気配は感じない。

サミル君に憑いていた精霊は、素直にお母さんの元へ。元いた精霊と仲良く顎のラインを撫でている。

競争する風でもなく、その手つきは優しい。

「解決、なのかしら……」

ハウロンが小声で呟く。

「解決だと思うから、それらしいこと言ってください大賢者」

俺も小声で返す。

「今、精霊の仲立ちでサミル君の精霊が母親の元へ移ったわ。サミル君と違って、同じ性質の精霊が2体。性質の違う精霊が2体同士が張り合ういうことがないから、お母様が倒れることはないわ」

ハウロンが説明する。

性質、精霊の仲立ちって素晴らしい言葉選び! さすが大賢者!

「まあ……」

サミル君を見て、こちら――ハウロンを見て、声を漏らすクリス母。そして家族で抱き合い、静かに泣き出す。

それを見て涙ぐむ招かれた二人。

サミル君は当事者だけどピンと来てないっぽい。

『えーと。牛さん、聞いていい?』

『何かしら?』

『なんで牛さんは牛さんなの?』

他の顎精霊と違わない?

『ウン、モウ。牛だからよ』

『牛なんだ?』

『羊さんも山羊さんもいるのよ?』

『そうなんだ?』

羊はともかく、山羊は絵面的にまずくない? 悪魔崇拝とか言われない?

こっちの宗教、それはないか。

なんで精霊の姿が違うのかよくわからなかったけど、精霊的には辻褄が合っている様子。

精霊の引っ越しも完了して、これで解決ってことで!

クリスの家族にむちゃくちゃお礼を言われているハウロンを残し、アッシュの元へ。

クリスが俺をチラチラ見てくるけど、サムズアップして出てきた。