第686話 許可はとります
第686話 許可はとります
「お待たせ。想定外だったけど、解決したよ」
「おおよかった。これでご家族も安心だろう」
「ようございました」
「はー! ヤキモキしたぜ!」
知らせると、3人とも喜んでくれた。
「想定外とはどうなったのだ?」
「呼ばれた人に憑いていた精霊が、サミル君たちに憑いてた精霊の上位精霊だったのかな? ちょっと関係性が説明できないんだけど、指導してくれたんだ」
話からして、リードに憑くはずの精霊がウロウロしてたんだよね? たぶん。ハウロンにならって、精霊の姿は口にしない方向。
「俺は結局何もしてなくて、クリスがあの人たちを呼んだことで解決ってかんじかな」
「何を言う。ジーンがサミル殿のそばで競う精霊を見ていなければ、そもそも始まらぬ話。ジーンは素晴らしいことをしたのだよ」
「はは、ありがとう」
褒めてくれるアッシュに礼を伝える。
「何はともあれ、お疲れ様でございました」
微笑む執事。
「カヌムに帰ったら飲もうぜ!」
ディーンが笑う。
「はぁ、まいっちゃうわ。あの調子で感謝されてたら居た堪れないわ」
ハウロンが大きなため息を吐きながら部屋に入ってきた。
「アタシ何もしてないのよねぇ」
横目で俺を見る。
「俺もほぼ何もしてないし。全ては大賢者のおかげですよ」
うんうんと頷いてみるテスト。
「どう考えてもジーンよ!!」
「二人のおかげだよ」
部屋に入ってきたクリスが笑いながら言う。
「本当にたいしたことしてないけど、弟さんが元気になったから、それはよかった」
俺も笑い返す。
「で? ほんとのところはどんなやりとりがあったんだ?」
ディーン。
「大賢者ハウロンが全部知ってる」
「ちょっと、押し付けないで!?」
ハウロンが目をむく。
「……これは、何かひどいことがあった気配ですな」
執事がポツリと呟く。
「勿体ぶらないで教え――いや、王狼たちが帰ってきてからの方がいいかな?」
首を傾げるディーン。
「本当、ディーンってディノッソのこと好きだよね」
「誰でも好きだろ、伝説の王狼!」
「ふふふ。私も好きだよ、冒険者を目指すものは誰でも一度は憧れるんじゃないかい?」
クリスが笑う。
「何はともあれ、解決おめでとう」
「ありがとう。ジーンとハウロン、心配してくれたみんなに感謝を捧げるよ!」
アッシュが表情を変えずに言えば、クリスが手を広げて芝居がかった感謝を口にする。
「私からの感謝もだけれど、家族が改めて夕食の時に話をさせてほしいと言っているのだよ。私が言うのもなんだけど、ちょっと暑苦しいかもしれない」
笑うクリス。
「はぁ。国を長くあけるわけにはいかないし、もうアタシだけ帰ろうかしら? あの真っ直ぐでオーバーな感謝、本当に居た堪れないのよ」
肩をすくめるハウロン。
そんなこんなで、イーズ家でもう少し過ごす予定が、クリスのご家族の下へもおかないもてなしっぷりに、ちょっと居た堪れなくなって早めに引き上げることに。
ハウロンへは入念だけど、おもてなしは俺たちにもだよ!
まあ、のんびりもできたし、クリスの弟君も元気になったし、行ってよかった!
というか、まだ聞いていない話がたくさんあるから、しばらく滞在したいんだけど。
イーズ家はちょっと恩人に感謝モードが居た堪れないんで、別なとこに。ご飯自由にしたいし。
でも顔バレしてるし、狭いコミュニティだから色々ばれるよね。どうしようか?
「ハウロン〜」
ここは大賢者に相談しよう、そうしよう!
「なによ?」
「俺、クリスの故郷にも拠点つくって、伝承を全部聞きたいんだけどハウロンの名前出して、家つくっていい?」
本とかなら収集して帰ってくるんだけど、お婆さんに会うしかないからね。
「いいけれど、ちょっと文章にまとめてアタシにも教えてちょうだい」
「はい、はい」
結構簡単にオッケーしてくれたと思ったら、ハウロンも興味ありだった。
「ジーンがお隣さんになるのかい?」
クリスが聞いてくる。
「隣かどうかはわからないけど――余所者は家を買えなかったりする? 2つある町のどっちかで、目立たないようすごそうと思うんだけど」
「いいや、そんなことはないよ。ただ入ってくる者は珍しいから、注目はされるかもしれない。そこは田舎で他に娯楽がないからと憐んで、許しておくれ」
クリスが言う。
「大丈夫、俺はひとりなら目立たないよ」
認識できないとも言う。
そういうわけで、新しい拠点作りです。