第687話 その後
第687話 その後
「また来てるな」
「うん」
窓からイーズ家の玄関前を見ながらディーンと言い合う。
俺たちのためにイーズ家に用意された居間、朝食の後、一緒に出かける予定の時間までまだたっぷりあるけど、三々五々集まってきた。
おもてなし攻撃にいたたまれなくなって帰ることにしたものの、すでに用意してくれたり段取ってくれたりしたことを全部無し! は流石に申し訳なくって、もうちょっと滞在になった。
同室の俺、ディーン、レッツェとアッシュと執事。そしてハウロン。
執事は持ち込んでいたらしい、紅茶を入れてくれてる。
で、来てるというのが誰かと言うと、イーズ家の血族の方々。顎精霊関係で可能性がありそうな血族を呼び出した結果、もうすでに解決済みなことを知らず、何組かいらしてます……っ!
島のあちこち、うち何人かは隣の島という地理関係により、時差でぽろぽろと到着。
解決した知らせが届く前に、もう急いで家を出てこっちに向かってくれた人たちが到着してるという。
「大賢者を長期引き止めるわけにもいかねぇだろうし、とりあえず全部呼び出したんだろうな」
レッツェが同じ場所に目をやって言う。
なるほど、ダメなことを確認した後に次を呼んでんじゃ、確かに時間かかるよね。
「ハウロン忙しいもんね」
「忙しいだけじゃなく、普通は恐れおおいんだからな?」
呆れたように横目で見てくるレッツェ。
「そうよ、もっと大事にしてちょうだい!」
参戦してくる当人。
「だから心配して、バカンス頑張ったのに!」
「体調への気遣いじゃなくって、雑にアタシの伝説増やさない方!」
「それは諦めてもらって……」
「無茶振り継続宣言やめて!?」
ハウロンが目をむく。
「大丈夫、ハウロン恐れおおいから、ツッこまれないツッこまれない。さすが偉大な大賢者です」
「限度ってものがあるでしょう!」
叫ぶハウロン。
「あー。クリスは一番先に一番可能性が高いやつに呼び出しをかけたんだな」
レッツェがハウロンと俺の会話をスルーして、話を元に戻す。
「うむ。私には顎の美醜がわからんが、そうなのだろうな」
アッシュ。
「顎単体は俺もよくわからない。全体のバランスなのでは?」
「ちょっと……っ!」
俺もレッツェとアッシュの会話に乗り換えると、ハウロンが短い抗議の声。
たぶんレッツェの言う通り、クリスは一番可能性が高い者を選んで最初に連絡を取り、次いで他の者たちに一斉に連絡をいれたのだろう。
クリスの会ったことない血族の中に該当者がいた可能性もあっただろうけど、会って良い顎って覚えてた人を呼び出したのだろうね。
――親子であいつは良い顎だったとか、良い割れ目だったとか話し合ったんだろうか……。
まあ、イーズ家一押しの顎があの人で、そしてそれは正解だったわけだ。
で、今は保険に呼び出した方々が時差で到着し始めているところ。みんな顎に精霊いるなあ……。
「拠点作りのためにこっちに来た時、食料の差し入れもう一回しようか」
「そうだな。市場からも遠そうだし、予定外の来客のために備えていたとしても、こう多くちゃ大変だろう」
レッツェの同意を得た!
「あんま、変わった野菜やら果物は持ち込むなよ? 基本はカヌム、いいとこナルアディードで手に入るものにとどめとけ」
レッツェに釘を刺された!
「はい」
ナルアディードで扱ってる商品なら、幅が広がる。
うちのトマトも扱ってるし――うん、トマトと肉にしよう。ホールトマトの瓶詰めと、ドライトマト、あとはキャベツあたり。
青の精霊島とは別に、タリアでの生産物もブランド化して最近マーク決まったんだよね。クリスの黄金像のシルエットに。
ちなみに精霊たちが黄金像について噂しあい、旱魃解消についてもちらちら出た結果、人間界でもタリアとマリナ周辺を旱魃の精霊から解放した勇者として、あの黄金像がほんのり浸透し始めてます。
特にカメとかカメとかカメが、セイカイにでも言いつけられたのか、溺れた人間を助けては、深海に潜った時の話をしているらしい。
精霊王と共に旱魃の精霊を慰めた人間の話を。
俺を人間カウントしないのやめてください。いや、勇者だって広められるのも困惑するけど。
そういうわけで、あっちこっちで観光地化しそうなんだけど、そうなったらクリスに何割か払おうと思っている現在です。
かりんとう饅頭ちゃんに悪気はなかったけど、クリスが旱魃から世界を救ったのは本当だからね。
「なんか悪い顔してるわね? これでしょう? 変な方向に考えが突っ走ってる時の顔って?」
ハウロンが俺を見ながら、レッツェに聞く。
何その悪い顔って?
ひどくない?
「これは企んでるってより、方向違いか、変な納得をしてる時の顔だな」
ちょっとレッツェ、細かすぎ!!!!
「ジーンは発想が自由なのだな」
「アッシュ様、自由すぎます」
執事!?