第692話 間取りを考える
第692話 間取りを考える
島の二つの町に行った。
山の家に帰ってきた。
だめです、衛生状態がやばすぎる。久々に臭い、道を歩きたくない! ってなった。
最近は謎の水が道に溜まってるくらいならスルーできるんだけど、無理なレベルでした……。
なんというか、アパートがたくさん並んでて、ほぼ全部の一階の部屋で鶏か豚を飼ってて、汚物は窓から投げる系で想像してもらえれば。
カヌムもナルアディードも綺麗だったんだなって。
カヌムと城塞都市は魔物が寄って来ないよう臭いに気を遣ったのか、一応下水あり。
下水に垂れ流しなんで、道を歩いてると時々強烈に臭いんだけどな! 屠殺場所の近くなんか最悪に臭うし。
もっとこう、ファンタジーならスライムに食わせるとか色々ないのかってなるよね。
この世界のスライム、アメーバみたいな粘液状の魔物で、もちろん人を襲う。隙間からも侵入するし、実際に下水に放ったら増えて大惨事だけど。
ナルアディードは商品に掛かるとあれなんで、汚物を窓からぶちまけるとかはない。下水というか海に垂れ流しともいう。
臭いについては飼ってる山羊くらいかな? 山羊は赤ん坊に飲ませる乳を得るためとかで、大抵の町で飼ってるんだよね。
海は流れが速いわけでもないのに、臭うこともなく不思議。綺麗なのはセイカイや麦の穂様がいるせいかもしれない。
なんというかこっちの世界、町よりある程度田舎の方が臭いに関しては我慢できるかな? 家畜の臭いはあるけど。
衛生面は青の精霊島がダントツでいいんだけどね!
匂いもあちこちに植えてある花の香りだし。特にオレンジとレモンの花が咲く時期は特別だと思う。
そういうわけで町の建物は参考にできない。イーズ家の造りと、日本にいた時に見たヨーロッパの石造りの家の記憶、カヌムのリフォームの実績が頼りだ。
外観は風景に埋もれる古色蒼然とした感じを採用。目立って寄ってこられても困る。
精霊にお願いして隠してはもらえるけど、造った家に逃げ込む時って俺が貰った力を無くしてる前提だから。
間取りは台所、トイレ、風呂、暖炉、貯蔵庫は絶対いる。もちろん寝室も。
残ってる基礎はトイレと風呂らしき場所はないんだよね。
風呂はタライ派だったんだろうな。あるいは風呂なし、時々川に水浴びに派。
トイレは二つの町にもなさそうだったね! イーズ家は外だったね! 一応囲いあったけど、夜に行ったら脱走した羊がいたよ!
まあなんだ、大奥方式で深い穴を掘ろう。御台所――正室のトイレの穴はかなり深くて、存命中は汲み取らなくてもいいように、確か18メートルくらい掘ってたはず。
今なら精霊に穴掘りお願いできるからね。家のすぐ隣に造って、短い廊下をつけよう。
風呂は――ああ、精霊の雫とか魔石使えば魔道具いけるのか! 最近は直で頼んでること多くて忘れてた。
まあ、スペース的にトイレは外付けで変わらないけど。
魔石も【収納】から出してストックしとかないと。カヌムにも置いておこう。
いや、魔道具が動かないこともあり得るからなくても対応できるように――
最悪というか、俺がこっちに飛ばされた時の状態を想定して準備しないとね。
……この世界で貰った力を全部返したら、この体ごとな気がするんだけど、そこは考えない。
日本に返される場合もあるだろうけど、そっちは時間軸がどうなるかとか、色々不確定なことが多いんで考えない。
警察に駆け込めば、とりあえず命はなんとかなりそうなのが日本のいいところ。
ノートに書き込む手を止めてたら、足の間からリシュがスボっと顔を出してきた。
わしゃわしゃと顔を撫でる。嬉しそうに笑顔のリシュ。
「遊ぼうか」
カップに残ったコーヒーを飲み干し、立ち上がる俺。
リシュが駆け出す。
方向的に地の民に貰った、丈夫な綱の端をとりに行ったんだろう。
この隙に流しでカップを軽く濯いでいると、リシュが戻ってきて、足元に綱を落とす。
両端をそれぞれ結んだ綱は骨のような形。引っ張りっこをしたり、投げて取って来いをしたり。
「取って来いなら外に行こうか」
リシュが綱を足元に置いたということは、取って来いをご所望。
綱を拾って外へ向かう。リシュがタタタタッと走っては、止まって俺の顔を見る。
水の流れを跨いで、広いところで綱を思いっきり投げる。
ダッシュするリシュ。うちの子可愛い。
精霊の力が借りられなくなっても、見えなくなっても。
リシュとエクス棒にはそばにいてほしいな。