第693話 絡む
第693話 絡む
家の間取りを決めて、元の土台を少し変更する前に、井戸を掘ることにする。
水の確保は大切だよね! 魔の森の家のそばには水源があるんで問題ないけど、ここは鍾乳洞の中の川が一番近いのかな? ちょっと流石に遠い。
精霊に頼めるうちに掘ります。岩盤貫通できるんで、水源が深くても――ダメですね! 一般人に戻った俺の腕力で水汲み死ぬ。そこそこ浅い井戸じゃないと無理だ。
これもしかして、家と地下洞窟繋げたほうがはやい? いや、地下通路作りにしても水汲みが遠い上に階段使用になるな? ロマンを感じるんで採用するけれども。
それはそれとして、どうしよう? ここに以前住んでた人はどうしてたんだろう?
『ここに人が住んでいたの知ってる精霊いる?』
周囲の精霊に聞いてみる。
『知ってる〜』
『いたねぇ〜』
『ニンゲン知ってる〜』
『顔に毛が生えてるタイプのヤツだよね?』
顔に毛が生えてるタイプ……? 髭ってことか? 他の動物のことじゃないよね?
『顔に毛はわかんないけど、ここにあった家にいた人が、水をどうしてたか知ってる?』
『どう?』
『水をどう?』
『どう水?』
ぽわぽわした精霊が真面目な顔で聞き返してきたり、考え込んだり、ケタケタ笑ったり。
『えーと、水をどうやって手に入れてたか知ってる?』
『知ってる〜』
『下』
『下にためてたよ!』
『ここの下に雨の子たちを集めてたよ!』
おお??
『ありがとう』
精霊たちにお礼を言って地下室を確認する。こっちの世界というか、中原の家によくある食料貯蔵庫だと思ってたんだけど、貯水庫だったようだ。
5メートル四方の貯水庫、今は乾いて空っぽ。だからよくある地下室だと思ったんだけど、どうやら雨水が流れ込むところが詰まってるみたい。
さて、どうしよう?
雨水貯めたとして、飲める? 煮沸したとしても大分勇気がいるような……。この貯水庫に流れ込む前に濾過できるような装置つくるか。物理的なのと、魔法的なやつと二段構えにしとこう。
魔法陣を起動させるための魔石の貯蔵場所も作っておいた方が良さそうだね。魔法陣も劣化しないようにまた石にガリガリする方向かな。
ここが貯水庫ってことなら、ちょっと間取りも変更しないと。間取りというか火を使う場所のレイアウト変更だけど。もともと地下室の近くに台所持ってきてたから大きな変更はなしで大丈夫。
もう片方の地下室は水以外、主に食料の貯蔵庫でいいんだよね、多分。色々保管できるようにもうちょっと広くしたいところ。
濾過装置用の小石とか砂とか炭とか用意だな。どこにセットできるようにしよう? 交換とか手入れが楽な場所にしないと。
いやその前に浄水の魔法陣を調べるところからか。青の精霊島で井戸掘った時に読んだものの中にあったような……。
あ、深井戸掘って汲み上げる魔法陣作ればいいのか。青の精霊島だって、井戸から水が湧いてるんだし。
あれは水が湧き出ることに関しては神々の力を借りてるけど、流れ出すように魔法陣描いたの俺だし。深くても、水位がちょうどいいところまで上がるような魔法陣描けばいいね。
それはそれとして、魔法陣の媒介があっても精霊が手助けしてくれない事態は困るから、物理的な濾過と貯水庫も有効にしとこう。
数日ばたばたと準備を整える。カヌムに顔を出してみたりもしたけど、みんな忙しそうですれ違ってた。
クリスの家に滞在して、当然ながらその間はギルドからの依頼も受けずにいたんで、帰ってからはみんなどどっと依頼をこなしてたようだ。
いつもはあまり泊まりの仕事はしないアッシュと執事もしばらく家をあけてたし。クリスの家にお邪魔した時は、みんなとずっと一緒だったんで落差が激しい。
「そういうわけで久しぶりです」
「どういうわけだよ」
カヌムの借家でダラダラしている現在。帰ってきて一息ついたレッツェに絡んでいる。
「ご飯あります、ご飯」
「ありがとよ」
ちなみにディーンとクリスにももれなく絡みました。みんなちゃんと相手してくれるんで優しい。
なお、2人は酔い潰れて机につっぷしてる模様。
それを見たせいか、俺の扱いがやや雑なレッツェ。ディーンたちと3人一緒に依頼をこなしてカヌムに帰ってきたんだけど、レッツェが 借家 ( ここ ) に戻ったのは2人が帰ってきてから4時間後くらい。
レッツェはサポート的な役割なんで、ギルドへの報告やらで戻るまでに時差ができた。翌日でもいい気がするんだけど、記憶が新しいうちにさっさと済ましてゆっくりする派だって。
依頼で疲れてたせいもあるのか、いつもより出来上がるのが早かった気もする。あとで責任持って部屋に運びます。
「ディノッソたちとアッシュたちは城塞都市だって言ってたけど、いつ帰ってくるんだろ」
とりあえずレッツェにコーヒーを渡しながら言う。
「昨日の予定じゃなかったか?」
「そう聞いてたんだけど、まだなんだ」
腕輪があるんで無事なのはわかってるし、心配してないけど。
「邪魔をする。ただいま戻った――む、ジーンも来ていたのか」
噂をすればなんとやらで、扉に手をかけたアッシュとその後ろに執事。
「おかえり」
「うむ、ただいま」
アッシュと二人、笑顔で言い合う。