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第695話 熊狩り

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第695話 熊狩り

翌日、アッシュと一緒に熊狩り――と見せかけてソロ行動。

いや、うん。効率を考えるとこうなるよね。お互い一人で熊狩れるし。でも言いたい、どうしてこうなった。

いや、うん。俺も熊狩りに甘い雰囲気は求めてないけどね。いきなり仕事モードの顔になって、「ジーンはあちら、私はこちら」ってなるとは思っていなくてですね……。

執事もちょっと狼狽えてたし。

二手に別れてからの何度目かの思考。否定と肯定がこう、いや、うん。理解はできるけどこの状況を飲み込めないよ!

……午後に運搬人を頼んでいるので、それまで真面目に狩ろう。数を揃えるなら森の奥だけど、今回の目的、人への危害を考えるなら森の浅いところをうろつく熊だね。兎穴つつきに来た人が襲われたら対応できないし。

普通の熊だって虎やライオンより噛む力は強いし、普通の人間が勝つのは難しい。ましてや魔物化した熊、角一つだってソロで倒せる冒険者は少ない。

『この辺りに大きな魔物いる?』

精霊に聞く俺。

『このあたりってどのあたり?』

『どのあたりってこのあたり?』

きゃっきゃと笑う精霊たち。

聞き方がさすがに抽象的すぎたかな? だって熊以外の魔物が出てきてても困るし、熊の魔物って限定したくなかったんだ。

『うさぎ穴のある場所から黒精霊がこれくらいになるあたりまでで、俺より大きな魔物っている?』

拳を作って見せる俺。

城塞都市方面は範囲から抜けるけど、これで数が多い強さの層の冒険者と普通の町の人の行動範囲はカバーできるはず。

『このあたりこわーい!』

『どのあたりこわーい!』

二人――というにはなんかメンダコみたいな姿してるけど――の精霊が、お互いに身を寄せ合って震えて見せた。

『君より大きいのは12匹かな』

『12匹は君より大きいね』

思ったより少ない。

『君よりうんと大きいのは251匹かな』

『251匹は君よりうんと大きいね』

訂正、思ったより多い。

『ありがとう』

お礼を言いつつ、そういえば普段の熊の魔物の数知らないや、と考え直す。俺的には多い印象だけど、普段どうなんだろ。範囲も広めだし普通だったりして。

アッシュも遭遇する頻度で体感的に多い少ないを判断してるんだろうし、普段の数を把握してない限り、今の数を確認することに意味がなかったような……。

それにクマとは限ってないしね。鹿とか狼とか、トカゲとか混じってるかもだし。いや、それも倒さなきゃいけないんだけど。

ここは『普通に』魔物の痕跡を見つけ、追って、倒す――のがいいのかな。俺の訓練にもなるし。

そう言うわけで熊の痕跡を探して森を歩く。

足跡、爪痕、折られた枝、動物と黒精霊が憑いて間もない熊なら糞も。どんぐりやら果実がなる木の枝に熊棚と呼ばれる腰掛けを作ったりもするそうなんで、上も観察。

木の枝が1箇所茶色い。

何か ( ・・ ) が登って折ったかな。風で折れたにしてはちょっと内側だし。猿の魔物はもっと城塞都市側だし、熊かな〜? でも茶色く枯れてるってことは時間がだいぶ経ってるってことだし、これを折った熊はアッシュがもう狩ってるかも?

ぶら下がった枝を見ながら考える。

レッツェに教わった魔の森の歩き方、熊以外にも魔物は色々いるし、他も警戒。途中で採取を一つ二つ、時間が限られるなら目的を見失わないように足は止めずに通りすがりに。

自分の痕跡を残すか、隠すかは状況次第。

心の中で復習してたら鹿の魔物と遭遇。ちょっと痕跡見つける前に出てくるのやめてください、学習中なんですよ! 邪魔するなら鹿シチューにするぞ!

戦闘はあっさり。強いんですよ、実は。

鹿の魔物を【収納】に放り込んで調査を再開。やっぱり熊以外も奥から移動してきてるね。

熊の痕跡を探せないまま、鹿の魔物をもう一匹と大きな蜘蛛の魔物を狩る。その他、浅い森にいつもいるやつ。

熊どこ!?

熊が探せないまま昼になったので、アッシュの元へ【転移】で合流。熊を運んでる最中ですね!

「アッシュ、昼にしよう。熊は俺が【収納】して指定の場所近くに運ぶよ」

さすがに狩られた熊を眺めながらランチする気はないので、返事を待たずにさっさと【収納】する。

「む、もう昼か」

空を見上げて太陽を探す仕草を見せるアッシュ。

鬱蒼としてるんで空はよく見えないんだよね。一応隙間はあるんだけど、地面に落ちる木漏れ日は、途中で木々の枝に光度と色と温度を吸われたんじゃないかってくらい弱い。

魔の森、浅いところは普通の木々が生い茂る場所も多いけど、黒精霊が触れた木々はどうも変質するみたい? 奥に行くほど木々のイメージもなんか黒い。

「少し移動していただくと、ここよりは居心地のよい場所があります」

執事が言う。

「うん、そっちにしよう」

「うむ」

執事の案内で普通の木々が生い茂る場所へ。移動中に焚き火のための枝を拾う。お茶のためのお湯が沸くくらいあればいい。

「熊、どうやって見つけてるんだ?」

熊狩りについてはレッツェよりアッシュのほうが詳しいかもしれないので、素直に聞く。

「む? 音を立てて歩いていれば、あちらから襲ってくるが」

見つける? 何故? みたいに不思議そうに答えるアッシュ。

「なるほど」

襲われる方向は教わってなかったです!