第697話 シュルムの戦況
第697話 シュルムの戦況
アッシュとの熊が……お出かけを終え、カヌムに戻った。
久しぶりにカヌムで風呂を使う、リシュがいるのに熊の匂いをさせて帰ってもね。窯に火を入れ、風呂場を温める。
カヌムの風呂は蒸し風呂にもなる。窯と壁を共有してる感じなんで、水なり湯なりを壁にかけるとあっという間にもくもくと白くけぶる。
しばらくサウナを楽しみ、水を飲んで体を洗い、今度はバスタブへ。横着して沸かしてある湯を【収納】から出す。
温泉見つけたいな、沸かす手間なしで汲み放題になるし。
冒険者ギルドで雇った運搬人が狩った熊の頭数に引いてた。俺も何だかんだ結構狩ったし。ついでに魔物化した鹿も狩ったし。
狩った魔物は冒険者ギルドに全部売った。熊にはちょっと上乗せがあるから、そこそこ稼げたんだと思う。精霊島やパスツールでの商売が規模が大きいので、感覚麻痺ぎみだけど。
狩った熊はアッシュの方が多い。前半の遅れを取り戻せなかったというか、どうもガサゴソ目立ってクマに襲われるという行動がうまくできなかったというか、気がつくと静かに行動しながら熊の痕跡を追っていた。
最初に習った行動が基準になっててですね? ガサゴソしながら痕跡を踏み潰して歩くのはどうも不安になる。魔の森の手前、草原のウサギ穴なら喜んでガサゴソするけど。
あれは入ってるか入ってないか分からない方がテンションが上がる。エクス棒も同意見だし。
あとは他に目的があればね、たとえば黒精霊をむぎゅっとしながらなら気にせず斬って捨てるんだけど。魔の森のこの辺りでの歩き方は完全にレッツェの影響だね。
何かの痕跡を追いながらの森歩きはレッツェほど上手くない。けど、ディーンやクリスよりは上手くなったかな? そもそも2人が痕跡を追うような歩き方するのは必要に応じてたまにって感じだけど。
アッシュもそうだけどタイプが違う。魔物の気配は探るけど、自分の気配を消すことは少ない。魔物を「追う」んじゃなくって、「向かってきたら」倒す、警戒はするけど隠れはしない。
普段はアッシュやディーンたちの戦い方がはやくていい。自分自身より強い敵だったり、倒したいのに隠れてしまうタイプの魔物だとレッツェや執事の追跡の仕方がいい。
探し出して討伐系は、レッツェのようなガイドがつくことがほとんどだし、両方完璧にやる必要はないしね。つい後ろに下がりたくなる俺です。
この性格だから姉に便利に使い倒されてたのか、物心ついた時から使い倒されてたからこの性格になったのか。
――姉たち勇者がいるシュルムは現在戦争中。ローザ一派が周辺国をうまく巻き込んで、一斉に攻め入ったけれど、上手くいっていないそうだ。
ここ一番の攻勢を男の勇者2人が出てきて蹴散らしたとかなんとか。特に黒髪黒目、黒ずくめの勇者が人外の活躍を見せたとか。
小国とはいえ、いくつかの国を通る補給の長さからして、ローザたちは短期決戦したかったんだろうけど。
黒髪黒目って多分俺の人形なんだろうけど、強くなったのかな? 精霊を取り込みすぎて、そろそろ暴走するんじゃないだろうか。
ローザ側は物資がもつかどうか、シュルム側は人形がもつかどうか。物資――特に食糧が、旱魃で流通渋いしローザ側が不利かな? 人形がどういう状態か知らないけど。
ナルアディードの周辺国が、自国の民に我慢させてもシュルムを討っておきたいかどうかというか、俺がメールに小麦もっともらってくるかどうかな気がするけど。
シュルムは旱魃の影響もなく、精霊のおかげで豊かな国だけど、自国の備蓄をメールのお高い小麦に変えてたし、今ならいつもより備蓄は少ないはずなんだよね。俺がメール小麦の対価に金じゃなくて普通の小麦ねだったからね!!
それでも『精霊の枝』を持つ国だし、勇者たちもまだ保つだろうし、ローザ一派は不利。どこまで勇者たちに精霊を使わせるかが鍵だなんて分かってないだろうし。
シュルムは分かっているのかな? 何度か勇者召喚をやっている国だし、上の方はわかってそうだ。わかった上で勇者たちに精霊を使い倒して自壊の情報は勇者に与えてないように感じる。
シュルムには近づかないようにしてるので、ハウロンからの又聞きやシュルムから避難してきた精霊からの話が多いけど。
『精霊の枝』のあるシュルムに一定以上近づくと、とてもとても幸せな気分になって、つい寄っていってしまうらしい。
ローザたちの手助けをして、勇者の自滅を早めてもいいかなって思ってたけど、精霊が食べられてしまうのはダメだ。軽い気持ちで介入するべきじゃないね。
シュルムを攻略するならまず『精霊の枝』からなんだろう。カーンの国がそれで滅びたように。
俺の場合はシュルムというか、今代の勇者が気になるだけなんで手を出す気もないけど。
今まで通り、近づかない方向で。