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第699話 世界は丸いか

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第699話 世界は丸いか

「綺麗にしてあるな」

周囲を見回してレッツェ。

「うん。組むもの加工するとこまでやってある」

壊したり掃除したり運び込んだりは【収納】が大活躍なんで、一人でも楽々なんだけど、組み上げるのは支えてくれる人がいないとツライ。

精霊に手伝ってって言えば付き合ってくれると思うけど、それでどう影響が出るかは謎。

今の俺の魔力が前提の便利機能がついてしまったら困るんで、なるべく人力でやりたい。

もうすでに興味を持った精霊にちょこちょこ手伝ってもらっちゃったけど。まだセーフ、セーフのはず!

「そういうわけで、屋根の組み上げ手伝いお願いします」

「私はパーツからして分からないので指示を」

アッシュが袖をまくり、グローブを嵌めながら言う。

隣では、アッシュが脱いだ上着をシワにならないようにしている執事。

執事は人数に含めていいんだろうか? いや、アッシュを見守る構えだな?

石壁にかけた梯子を登り、あっちとこっちで柱を渡したり、建てたり。

真束、貫、棟木、軒桁――

「随分細かいのだな?」

「ミリ単位で穴に合わせてんのかよ」

アッシュとレッツェに驚かれつつ組み上げていく。

あれです、日本式です。

こっちのおおらかな屋根は大地が揺れない前提仕様なんだもん。壁もだけど。

森の中の家は、修正しつつもこっちの様式で建てたけど、以前に一回揺れてるし、耐震には気を遣いたいところ。

「こちらの合わせは緩いが、いいのだろうか?」

「そこは楔を打って、揺れた時に全体の歪みを吸収できる遊びにするんだ」

壁が石造りなんだけど、そっちはそっと補強しました。

具体的には精霊にお願いして、鉄筋入りの石壁にグレードアップです。現物が入ってるから、俺が魔力失ってもそのままだよ!

誰かが何かで壁を解体したら、どうやって鉄筋入れたか謎が生まれるだろうけど。いや、謎じゃないか。

不可思議なことはだいたい精霊のせいにされる世界だし、石の中の鉄筋に関しては精霊のせいで間違っていない。

「揺れた時――大地がですか……」

執事が微妙な反応。

「この楔が緩んだり、キツく入ったりで調整になるのか。大地に裏切られるなんって、そうそうねぇが……。まあ、備えることはいいこった」

ちょっとレッツェさん?

「俺の住んでたとこ、まめに揺れたんで」

俺がこの間の揺れを怖がってるみたいなニュアンスで言わないでください。死にそうな顔をしてたのは俺以外です。

「まめ……そんなに頻繁に揺れては、暮らしてゆけぬのではないか?」

怖い顔になってるアッシュ。

「慣れてるし、備えてるから」

震度4くらいでようやくちょっと慌てる日本人です。

でも海外で震度3より強いかな? とか余裕かましてると、耐震性能だめだめな建物が崩れる可能性があるんで、危険だ。

以前の揺れの時も、外だったから平気でいられたけど、こっちの世界の建物内だったら慌ててたと思う。

こっちでも自分の住まいくらいは耐震を考えたいところ。

「怖い世界にいたんだな」

レッツェがなんか誤解してる気がするけど、地震に対する感じ方が違いすぎてどうしていいか分からない。

怖いことは怖いけど、だからこそ備える。

こっちは小さな揺れも含めてほぼないから、いざ地震があると本当にびっくりするみたい? で、ほぼないせいで、備えるという感覚がないというか、どう備えていいか分からない、のかな?

「大地の揺れは精霊たちの異変、頻発するなら酷い天変地異が起こる。おさまった後も、火は冷たく水は澱むなんて言われる。代わりに木の根が張って盛り上がり、大地を覆うとかも聞いたな」

「うむ。それぞれの属性を統べる精霊たちが争い、強大な精霊の交代劇によって世界の基盤が変わると聞く」

レッツェの言葉に、真面目な顔で付け足すアッシュ。

「えー……」

こっちの地震ってそんな認識なの!?

ヨーロッパみたいに地震が起きにくい地形かと思ってた。プレート同士が押し合ったり、沈み込んだりする境界部分からかなり離れているとか、とても古い岩盤でできた 安定陸塊 ( クラトン ) があるとか。

いや? プレートの精霊がいて、その精霊があんまり動かないだけだったりして。

……この世界丸いよね? 星だよね?

「えーと、この世界って球体でいいよね?」

「なんだ突然? 当たり前だろう」

うろんげな顔で答えるレッツェ。

「うん、よかった」

平面世界が信じられてたらどうしようかと思った。

「もちろん、丸い天球の中に浮かぶ円盤状の大地――」

「ええええええ!!!」

俺の脳裏に亀の上の象が支える大地が出現した!

「――というのは、大昔に否定されてる」

「うむ、少し前に昔の世界観として、そのような絵が流行った」

大真面目にレッツェの話にうなづくアッシュ。

「たまには慌てろ」

ニヤリと笑うレッツェ。