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第701話 過ごす時

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第701話 過ごす時

デザートはもちろんイチゴのショートケーキ――と、オールドファッションのチョコがけ。

ショートケーキというかふわふわ系のお菓子、レッツェも執事もイマイチっぽいんで、様子見中。

美味しそうを超えて幸せそうにショートケーキを食べるアッシュ。

「これ、なかなか美味いな」

「ドーナツでございますな? 庶民にも手が出る菓子ですが、油は少なく、チョコレートでございますか」

こっちのドーナツ、油ケーキとか呼ばれることもあるくらい油たっぷりギトギト。まあ、カロリーを摂れるのは正義なんだけどね、食糧事情からして。

俺の出したオールドファッション、どっしりで外側をすこしカリッとさせてる。

レッツェは気に入ったっぽいけど、執事はイマイチかな?

チョコレートには反応してるっぽいけど、味が好きとかの反応じゃなさそう。

色々好みを聞き出したいけど、俺が出すお菓子が未知なものが多いっぽくって、名前を出しても説明しても、ちょっとピンとこないみたいなんで、実際出して反応見てる。

ご飯の後は再び作業。

床を支える部分や、ちょっと作業順があれだけど、雨樋をつけるのを手伝ってもらったり、主に支えてもらった方が作業が早いものをお願いした。

「これは何かね?」

「雨樋?」

「雨を集めるのか?」

2人に不思議そうな顔で聞かれた!?

あれ? 雨樋ない世界? いやでも雨水を吐き出すガーゴイルっぽいの見た気が?

「なんかこう、雨水吐き出す設備なかったっけ?」

「漆喰が傷まねぇように、高い塔につけたりするな。なるべく雨水が壁を伝わないように、壁から離れたところに水を落とす。――こりゃ違うだろ? 普通の家じゃ、漆喰使った家だって雨の跳ねる壁の下の方を石にして終いだ」

レッツェが言う。

……そういえば、上からジャバジャバ水が降っていたような……。

あれも雨樋なんだろうけど、俺の作った日本式の雨樋は外壁や基礎の劣化、壁への泥バネやカビ防止、水たまり回避とかの役割なんで、適切な溝とかに誘導してる。

ソウネ、ここ、そんなに雨降らないし、なにより乾燥しててすぐ乾くもんね。漆喰の壁だけ心配してるんだ?

「えーと、この樋で貯水庫まで水を集める感じ。途中に濾過する設備つけるけど」

以前に住んでた人も、軒下の地面に溝があって、貯水庫付近まで勾配つけてた跡がある。

でもそれじゃロスも多いし、樋で集めちゃった方がいいよね。地面は地面で傾斜つけるとして。

「井戸がないのだな」

周囲を確認するアッシュ。

「後で掘ろうとは思てるけどね」

岩盤ぶち抜きするのはいいんだけど、水を汲み上げる魔法陣描くのはちょっと面倒。

「なるほど。それはそうと、これ精霊銅だな?」

レッツェの眉間に薄い縦皺。

「はい」

雨樋は安心保証の精霊銅を使用してつくりました!

嘘です、作ってるうちに精霊が寄ってきて、結果精霊銅になっただけです。悪気はありません。手伝ってもらって、作るのものすごく楽でした。

ちなみに作った濾過の設備は、まず流れてきた水を最初の空間で一旦緩やかにして水と一緒に流れ込む砂とか泥のちょっと重いものを沈殿させて取り除き、その次の空間に上澄の水を流して濾過するかんじ。

最初の空間は深くしたから多分しばらく一杯にならないね。

「ジーンの作ろうとしている家は、普通に見えて普通でない家なのだな」

感心したようなアッシュ。

いえ、『普通の家』に近づけたいだけです。ただ、俺の普通が日本基準なだけで。

「このような場所にこのような設備の家があるとは、誰も思わぬでしょうな……」

どこを見ているかわからない感じの執事。

「外観だけでもおとなしくしとけよ? ハウロンが泣くぞ」

「精霊銅もアウト?」

「板貼って隠しとけ」

「はーい」

人がもしかしたら通る丘陵から遠いし、近づくには穴地帯を通り抜けなきゃだし、精霊銅くらい平気かなーって思ってたんだけど、アウトのようです。

執事も遠い目だったし、レッツェの言うことを聞いてあとで板を貼ろう。

夕方まで手伝ってもらい、最後は夕日を眺めながら夕食。

夕食というか、昼と違ってもう帰るだけだからワインを出して薄闇に覆われるまでゆっくり色々つまむ感じ。

「良い眺めだな」

ワインを飲みながら地平を眺めるアッシュ。

夕陽に照らされ、風が渦を巻いて草を揺らしている。

この辺りは風の精霊が多くて、草で遊び、空で遊んでいる。光の精霊たちはどの精霊も小さい、昼間曇っていることが多いからかな?

雲や大気の精霊の服を夕日の精霊がぽんぽんと叩くと、叩いたところから色が夕日の精霊のオレンジに変わる。

夜の帷の精霊がちらちらと降ってきて、そのオレンジの服を叩くと今度は薄闇色に。

きゃっきゃと遊びながら飛び回る。

いい眺め、いい時間だ。