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第703話 温泉探訪

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第703話 温泉探訪

さて、山の家とカヌムと『青の精霊島』、魔の森の奥の家、今回のクリスの実家領の家、カーンの国。

この世界のどっかに転移させられたら、とりあえず目指す拠点。

距離的に中原の真ん中付近とか、エスにも欲しい気がするけど。エスは猫船長の船かソレイユの交易用の船を探せばなんとかなるかな?

北の大地も地の民のところにお邪魔できるだろうし――中原はちょうどいい距離のところは戦争中だし――いや、だからこそ避難所がいるのか。

戦争中じゃ、宿もとれないだろうし……宿の環境大丈夫か不安になるし。

でも、まああとで。

今は温泉探しを優先しよう。

風呂のお湯探しとも言う。

水を【収納】しといてどばっと湯船に出して、精霊に頼んで沸かしてもらったりするんだけど、直接お湯だしたいよね?

『青の精霊島』のお風呂のお湯は、流しっぱなしにしてる代わりに、そんなに湯量は豊富じゃないから、汲むのには不向きだし。

精霊にまとめてお湯にしてもらうのもいいんだけど、日本人としては温泉を見つけたいところ。

俺の場合、家族旅行とか行った覚えがないから温泉の思い出ないけど。興味はあるわけですよ。

ずっととんかん作業してたから、あちこちフラフラしたい欲も。

そう言うわけで、探索再び。

アミジンの人たちに東の方に温泉あるって聞いたことあるんで、まずはそこから。

「こんにちは〜」

「おお」

声をかけたら、深く深くお辞儀された。

女神復活させたりなんだりしたせいか、アミジンの人たちからの俺の扱いがすごい。あんまり来てないんだけど、俺の顔を覚えている人がものすごく多い。

扱いが特殊すぎて、来づらいんだよね、実は。

はじめのころ、跪いて額を地面につけて――みたいなことされたんで、それは全力で止めてる。

洞窟の神殿周辺で開墾し定住するアミジンの人々、遊牧から戻って年に一回は巡礼するアミジンの人々。

なんかこう、女神の復活に熱狂する最初だけ俺の扱いも上がってるパターンだろって放置してたらですね? だんだんひどくなってってるんですよ。

ひどいの意味は雑な扱いって意味じゃなくって、真逆。大袈裟に持ち上がられて、敬われて、貴方の希望をなんでもかなえます! みたいな。

白の女神と黒の女神がなんか言ったのかもしれない。あの2柱の精霊は、神と呼ばれる強さで、人々にもバッチリ見える上に声も聞けるから。

ずっと失われていた神なのに、ずっとアミジンの人たちの心の拠り所とされてた女神。その使いとか思われてるんだろうか。

これ、アミジンの人たちと交流を望むなら、変装してこないとダメだな。ちょっと持ち上げられるくらいならともかく、この対応は困惑しかない。

「お声がけいただけるとはなんという僥倖、なんなりとお申し付けください。私一人はなんの力も持たぬ身なれど、我が同胞たち全てが全力でお助けいたします」

腰を深くおったまま、告げてくる。

「いや、元気でやっているかと思って。何か不便はない?」

嘘です、温泉の場所を聞こうとしました。

聞いたが最後、遊牧班がたくさんついてきて、温泉が大変なことになる未来が見えたんで黙ります!

「我らが導き手のおかげで、つつがなく過ごしております」

さらに数度、村人の頭が深くさがる。

聞いて驚いてください、我らが導き手とか呼ばれてるんです、俺。

「ならいい。頑張りすぎないで、人生を楽しんでね」

そう言って、歩き出す俺。

変な言い回しになったけど、「頑張ってね」って伝えると、女神のために――俺のために頑張っちゃう方向なんだよね、アミジンの人たち。

迂闊に口が聞けないの、すごく困る。

と言うわけで、結局精霊に温泉のある方向を聞いて移動してます。

温泉というか、暖かいお湯があるところっていう聞き方だけど。

短い転移を繰り返し、現れたのは雪山ではなくって、石灰石の白が流れ出し、それに覆われた山。

白い皿と棚田の中間みたいな不思議な風景。これでお湯が満ちてたら、世界遺産のトルコの温泉みたいなんだけど、お湯がない。

『こっち〜』

『あっち〜』

『お空の精霊がいるほう〜』

『あっち〜』

『こっち〜』

ん? 上の方にある?

精霊たちがきゃっきゃと案内してくれるのに従って白い山の谷を登る。

精霊たちは5人組で、ひとまわり大きな精霊を他の4人が輪になって囲んでいる。ひとまわり大きな精霊にぎゅっとくっついたり、ちょっと離れて輪になったり。

珍しい風景でこれはこれで楽しいような? 眼下の風景と、周辺の白を楽しみながら進む。

下から見上げるともっこもこ、上から見下ろすと境界が歪だけど、高さが揃った浅い段々棚。

そのうち足元が滑るようになって、お湯が流れているのに気づく。

『こっち〜』

『あっち〜』

『お水の精霊がいるよ〜』

『あっち〜』

『こっち〜』

『ここ〜』

『そこ〜』

『ぽかぽかしてる〜』

『そこ〜』

『ここ〜』

『こっち〜』

『あっち〜』

『ここがいちばんいっぱい〜』

『あっち〜』

『こっち〜』

精霊の言うとおり、白い棚のような1つに水色に見えるお湯が満杯。そこから足元に流れ出し、3つ4つ他の白い棚も満たしている。

よしよし。