第704話 ちょうどいいを探す
第704話 ちょうどいいを探す
『こっち〜』
『あっち〜』
『ここがいちばんいっぱい〜』
『あっち〜』
『こっち〜』
真っ青な空、遮るもののない風景。
とてもいい感じだけど、俺の中で温泉判定にならない。
プールですね!
どろどろぬるぬるの石灰土が溶けたお湯、温度は体温より少し低い。これはこれで効能がありそうだけど、お風呂のお湯に向かないです、先生!
『他にもぽかぽかした水が出てるとこ知ってる? 白くないところで』
ぬるぬるはダメです。
『ぽかぽか〜』
『お水〜』
『知ってる〜』
『お水〜』
『ぽかぽか〜』
知ってる温泉があるっぽいので、再びついてゆく。
ここは気が向いたらみんなを連れてきてみよう――みんな? アッシュも? 建物どころか遮るものないんだけど。
作るにしても風景が見えなくなったら、ここにくる意味が半減どころじゃないし。
水着?
アッシュに?
ダメだ、ここは男どもでこよう。
次に案内してもらったのは、木々に囲まれた深い池みたいな場所。水は透明度が高いっぽくってよし! で、炭酸泉。
炭酸の泡が湧き出る様子が見える。しゅわしゅわ肌にくっついてちょっとくすぐったい感じのお湯。
――だめだ、この辺りのお湯の温度は低すぎる。
うーん。温泉のこと聞いてたから簡単に見つけられると思ってたけど、思ってたのと違う。他の温泉あるかな?
あるとしたら火山の近くだよね? タリアにある火山は知ってるけど、温泉あったっけ?
あとは北の大地、地の民の住居のそばに『蒸気の谷』って呼ばれる場所があったはず。
とりあえずタリアから。
うん、海水混じりの温泉!
岩を積んだり、削ったりして整えればいい感じの露天になりそう。海から見える――この方角だと朝日と夕日どっちだ?
入江の奥だからどっちもダメかな? 見えなくても海と一体化したいい感じの温泉。
家の風呂のお湯には向かないけどね!
陸地の温泉もあったけど、人が利用してるとこだったり色々難あり。
次、北の大地の蒸気の谷。
北の大地の黒山ちゃんの方に近い側は冬と春しかないかんじ。春というか気温は低いけど夏? とてもとても短い期間に一斉に花が咲くけど、ほとんどは寒くて荒涼とした季節。
降水量はそう多くないから雪深くはないけど、土地も石と砕けた石、みたいな感じなんで大きな木とかはない。
地に薄く張り付いた緑が広がっているが、下はすぐ砂利のような地形らしく、ところどころ崩れ剥がれて地の色を剥き出しにしている。
川が流れてるせいか、このあたりは緑が多い方だ。というか、川から湯気が立ってるんだけど、もう温泉地帯?
手をひたしてみたら温かった。もっと上の方だな。気をつけないと生えてる丈の短い植物ごと足場が崩れるけど、選んで歩けば歩きやすい地形。
時々急勾配もあるけど、ハイキングにいいかな? 地熱で植物たちが可愛らしい花を咲かせている。
まあ、ここまでくるのに谷やら崖やらあるし、狩れるような獲物もいないし、放牧して家畜が食えるような草もなかったんで、まず着くのが大変だけど。
一番近いのは地の民の集落で、まずそこも秘境の地だしね。地の民自身は、この湿気が多い環境を好かないみたいで、お湯の存在は知ってるけどあんまり来ないみたい。
というか、地の民は寒くても水浴び派が多いようです。あと、蒸し風呂。
そうこうしてるうちに、あちこちの地面から蒸気が吹き出す谷についた。大きな石がごろごろしてる岩の隙間から白い蒸気が上がっている。こうなると周囲もだいぶ暖かい。
噴気孔や湧き上がる温泉の脇を歩きながら、ちょうど良さげな場所を物色する。温泉はあるけど、岩の間の小さな水たまりみたいなのが多い。ついでに熱湯すぎる。
川があるんで、いい具合にお湯の温度を調整するため、川の中か川のそばの温泉を見つけたいところ。
よし、見つけた!
ちょうどいい温度、水量もいい。汲むならもう少し熱い方がいいかな? でも川の水で調整できるから気分で調整ができる。
いいですね、ちょっと殺風景だけど秘境温泉だと思えば。
ちょっと川原に穴を掘って整えようか。岩をいくつか運び込んで、露天の岩風呂風にしよう。うん、そうしよう。
お湯を汲むだけじゃもったいないもんね。
とりあえず温泉にしたい場所の石や岩を【収納】。川にくっついた小さな池みたいな場所をつくる。
で、周囲に岩を積む。
どうせ殺風景だからね、岩の間の温泉みたいな感じにしよう。着替えるところも大岩を配置して作っとこう。
着替えるところから、自然石の短い階段、温泉の中も座っていい具合の高さになるよう、石を置く。
あ、寝転がる用に地面を抉って平らな大岩を配置。
平らな大岩を得るのは簡単、大きな岩を『斬全剣』ですっぱりすればいい。って、これじゃ滑るね。
今でも滑りそうだけど、水につけたら絶対もっと滑る。こんこん石をぶつけて表面に小さな凹凸をつけることにする。