LNCrawler

第705話 北の民

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第705話 北の民

『こんこん?』

『石ぶつけるの?』

『音楽〜』

『こんこんこん♪』

『こつこつこんこん♪』

『こんこんこん♪』

きゃっきゃと笑いながら精霊たちが手伝ってくれる。

石でこんこんしてるだけで、叩いた面が真っ平らなままな子もいるし、そもそも手でぺたぺたしてるだけの子もいるけど。

逆にすごい勢いで凹凸をつけてる精霊もいる。

これ結構時間かかるね、『斬全剣』で切れ込み入れちゃった方がはやいかな? いや、なんか洗濯板みたいになりそうだからやめとこう。

なにより精霊たちが楽しそうだ。途中で凹凸をつけるのを精霊たちに任せ、俺は温泉の底を整えることにする。

『こんこんこん♪』

『こつこつこんこん♪』

『こんこんこん♪』

ご機嫌な精霊たちの声を聞きながら、どうしようか考える。ちょっとこのままじゃ危ないよね、岩の隙間に足が取られる。

お湯の底の石の間をなるべく丸い石で埋めるのがいいかな?

大きさは手のひら大くらい? さらにその隙間に砂砂利かな?

川原の石ってだいたい丸いイメージなんだけど、中原やこの辺りの川って、高低差があんまりないせいか、水の勢いが少なくって、川の石も水流に運ばれて揉まれて丸くなりました〜! みたいな石はほとんどない。

それでも河口付近にはちょっとあるんで、そこまで【転移】でいって、拾ってきた。

その頃には浅い凸凹付けもだいぶ進んでいて――戻ってきてみたら、ものすごい数の精霊がこんこんしててびっくりした――丸い石を温泉予定地の岩の間に詰めてる間に終わった。

精霊たちに俺の魔力をちょっと渡して解散。

岩の位置とか、高さを調整して全体を見渡す。

うん、いいかな。

日本風岩風呂爆誕!

頭に「俺の考えた」がつくけど。でも川底をいじったり、岩をいれたりしたから水が濁っちゃったんで、ここで浸かるのは後でかな。

今のうちにご飯食べようか。

久しぶりに食べ歩きしよう!

で、やって来た北の民たちの交易の島。

北の民たちは国というより血縁の集団であちこちに散らばって暮らしてるんで、町にお邪魔とかはできない。

交戦的なところもあって、交易するここ以外で訪ねて行ったら、問答無用で狩りにくることもあるって。

種族がいくつかあるみたいだから、どの集団の特徴かわかってないけど。

ここの通貨代わりの金と銀の腕輪をじゃらじゃらさせて、首飾りもほどほどにじゃらじゃらさせてそぞろ歩く。

露店で買い食いって思ってたんだけど、食い物の屋台が巨大鍋に入ったスープくらいしかない。

何でだ? あ、寒いから作り置きも素材も凍るのか。

――今日の気温的にダメでした。とりあえずスープ食っとこう。焚き火の周りで立ち食いだ。スープ屋というより、暖を取るための焚き火というか、円筒形の炉っぽいものがところどころにあって、ついでにスープを売ってる感じ。人が周りに結構いる。

酒も売ってて、みんなジョッキか、スープの入った取手のついた小さな壺を持っている。時々炉の外に火の精霊がちろりと顔を出す。

スープはサーモン・白身魚がメインで魚介なんだけど、ハーブが色々入って複雑な味をしてる。

炉の火と時々顔を出す火の精霊を眺めながら、スープを食べる。

火の精霊がトカゲの形をしているのは、薪にくっついていたイモリが火に一緒にくべられ、すぐには死なないことが由来らしい。火の中で生きられると信じられた。

でもそれは、元の世界での話。

本当に精霊のいるこの世界で、火の精霊がトカゲっぽい姿をしてるのて、何の理由があるんだろう。

人間に関わりが深い精霊が人形に近いように、火の精霊も近くにいた動くもの――イモリに似たんだろうか?

蝋燭の火みたいな精霊もいるし、真っ赤な花みたいな精霊もいるけど、トカゲの姿も多いんだよね。

スープは、辛いわけでも刺激的なわけでもないんだけど、お腹は温まる。でも足りないというか、食べなれない味のものだけじゃ食べた気がしないというか。

「失礼、貴方は『杖を運ぶ者』か?」

家に帰って何か食べようって思ってたら、話しかけられた。

スープ買うのに話しかけてるから、周囲で食べてた人には認識されてるんだよね。

話しかけて来たのは、背の高いムキムキ半裸の人。なめし革みたいな皮膚が厚くてピンと張った感じの。

『杖を運ぶ者』って何だ? 『精霊の枝(エクスぼう)』のことじゃないよね?

何のことかわからず、男を黙って見る。

「俺のために魔法を少し使ってはくれないか?」

真っ直ぐに俺をみてくる。

『杖を運ぶ者』ってもしかして魔法使いのことか? 話の流れからするとそうだよね? 【言語】さんは、直訳以外に別の意味があるときに弱い。

キャプテン・ゴートもキャプテン・山羊だったしね!

それはともかく、どう答えるべきか。

北の民はあんまり友好的じゃないんだけど、一度身内に数えられれば義理堅い友となる――ってレッツェとハウロンが言ってた。

「『杖を運ぶ者』と呼ばれる者かどうかはわからないけど、一応、少し魔法は使えるよ」

北の大地に地の民以外の知り合いがいない状態なんで、こっちの文化を知るきっかけになるかな?

ちょっとだけ下心が乗る返し。