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第710話 大賢者が犯人

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第710話 大賢者が犯人

「何故『地の民』をそんなに恐れて?」

同じ北の大地に住む者同士でも、仲がいいわけじゃないのは知ってるけど。

「あれらは外で会う分には偏屈だが無害に近い。だが、あれらのテリトリー、特に地下で遭遇した場合は危険だ。有無を言わさず襲ってくる上、侵入者を排除するまで退くことを知らぬ。強い、強い戦士だ」

北の大地に住む『北の民』とか『北方の民』とか呼ばれる種族はグループは大きく分けて4つ。

1つ目は、お馴染みの『地の民』。

ドワーフみたいなずんぐりむっくり体型とヒゲ、色々作っていて偏屈なだけで無害――だと思ってたけど、凶暴だったようです。

2つ目は、目の前の『銀狐のバインズ』と『鉄槌のボインジ』の種族で『腕長の民』とか呼ばれる。

筋肉質で背が高く、中原の人たちより色白で腕が長い。警戒心が強く、よそ者を嫌う。海の魔物を狩る狩人。

時々海賊。交易が盛んになってきて、多少軟化したってことだが、昔は狩ったよそ者の首を柵の門に吊るしてたらしいです。数が一番少ない。

3つ目は、単に『北の船乗り』と呼ばれることが多い、数が一番多いずんぐりむっくりに感じる髭面の人たち。

お腹は出てるけど筋肉質、背丈もけっこうある。肉のつき方で丸く見えるんだよね、縮めたら『地の民』っぽくなるかもしれないが、でかいです。

海賊、ときどき商人。船が家みたいな生活していたけど、最近は交易近辺に定住する者もいて、陸では交流しやすい。

最後は中原風というか、混血なのか、中原の人が移住してきたのか……定住してて、そこそこ人数も多い人たち。他の種族との橋渡しとかもしてくれる。

混血っぽい最後の人たち以外は、頑固で余所者に馴染まず、好戦的な傾向にある。

「市で会ったことがあるのやもしれんが、外で会うのとあれらのテリトリーで会うのとは完全に別だ。特に地下に足を踏み入れ、そしてそこが『地の民』の住まいに続く洞であれば、命の保証はない」

豪快で素朴な酒飲みの職人集団、宴会と輪唱のイメージしかないんですよね……。

「チンチン、『鉄槌のボインジ』がもう一度言う、下がれ」

ハッとした顔で『銀狐のバインズ』と『鉄槌のボインジ』を見て、頭を下げて部屋を出てゆく妹さん。

出てゆく前に、縋るように俺を見た。

「すまない」

「我が妹が場を乱したこと、詫びをする」

軽く頭を下げる『銀狐のバインズ』と『鉄槌のボインジ』。

『バインバイン♪』

『ボイン、ボイン♪』

『チンチン♪』

挟まる精霊。

「いや、いいけど」

色々こう、混乱してるけど、妹さんの登場とは関係ない混乱だし。

「我らの依頼は、氷に溶けない魔法をかけること。だがそれには、一緒に黒山にある大洞の氷を取り出しにゆき、『怒り狂う炉』――『地の民』にとって、聖地となるそこを抜けることを意味する。命の危険の対価は、金塊4つ。それに黒山で得られる財宝の全てを差し出そう」

『銀狐のバインズ』が言い、『鉄槌のボインジ』が壁にかかる木のレリーフをあげて見せる。

木のレリーフの後ろは四角く切り取られた窪みがあり、中には大きな金塊が4つ。綺麗な形はしていないけど、大きい。

だがしかし、お金には困っていないと言うか、ソレイユが取引で儲けてる俺の分が莫大になってるんだよね。

金は買って『精霊金』にできるんだけど、その必要もない。使い道がクリスの像とお揃いで、レッツェとかハウロンの像を作ろうかくらいしか思いつかないし。

「大賢者ハウロンは呪いにどんな対処を?」

金よりその辺が気になります。

「我は呪いに詳しくないので上手く説明できぬのだが、精霊たちの呪言(ことほぎ)を得て、肺の捩れる呪いの部分を打ち消し、呪いの連続性を弱めると聞いた。生まれたてで呪いを解くということが出来んのは、連続性を弱めるまで時間がかかるからだ」

なるほど、それで『こまかいの』が漏れてるのか。

古くて劣化し始めたとかじゃなくって、ハウロンが呪いを弱めたんだ。

「精霊たちの呪言を受けるための魔法陣は石に刻まれ、この家にある。魔法陣の発動条件は、呪いを持つ者の幼名に精霊が好む名をつけること。――我らにもできる方法だ」

『銀狐のバインズ』が笑う。

『バインバイン♪』

『ボイン、ボイン♪』

『チンチン♪』

……。

リンリン、リンリンだな!? 名付けのセンス!! そういえばリンリンって名乗られた初対面の時、なんか精霊がうんにゃら音がうんにゃら言ってたね!!

精霊って言葉重ねるの好きだしね!