第714話 ご飯を食べれば大体忘れる
第714話 ご飯を食べれば大体忘れる
さて温まって、切り替えたところでごはん。
昼間魚入りスープみたいなの食ったから、肉にしよう肉。牛肉サラダで行こうか。
バルサミコ酢を半量になるまで煮詰めてソースを作る。
ステーキをじゅーっとやって、熱が回るよう休ませてる間にサラダの準備。
ルッコラどさっ、ミニトマトを半分に切って散らす。
オリーブオイル、レモン果汁、そこに食べやすいように切ったステーキをどん。
バルサミコソースかけて、仕上げにパルメザンチーズを削って完成!
あ、肉しか考えてなかった。
【収納】に慌ててしまって、ホタテのチーズリゾットを作る、舞茸のポタージュも出そうか。
スープ系は暖炉があるんで色々作って【収納】してある。
だいたい材料切ったり、潰したりして壺に放り込んで暖炉に置いとけば、いい感じになるのだ!
スープ以外の煮込み料理も、他の料理のついでに作ってストックしてる俺です。いや、煮込み料理だけじゃないな。
海老油とかネギ油とか、トリッパの煮こぼしたやつとか、豆類の下茹でしたやつとか。最近はすぐ焼けるように、パンダネとか。
出来上がった料理そのものも多いけど、下処理済みの食材もだいぶ溜め込んでいる。
だって作るのが一人分だと食材が使い切れないし、玉ねぎ半分残ってもなって思うとつい。【収納】便利なんですよ!
リシュにも肉と水を用意して、いただきます。
うん、肉の焼き具合もいいし、リゾットも美味しくできた。最近お気に入りの舞茸のポタージュもよし!
珍しいものを食べることも好きだけど、やっぱり慣れたごはんがいい。
こっちに転移して、【食糧庫】と【全料理】を神々にお願いしたのは我ながらいい決断だったよね。
夕食を食べ終え、リシュの歯磨きを兼ねて綱引き遊び。
力を失う前のリシュは気候にも影響を与えるような強大な精霊だったらしいことを知った。
そういえば勇者召喚に使われる精霊って、強い存在だって光の玉が自慢してたような……?
光の玉の言うことってどうも信用ならないんで、いまいちピンとこないんだけど。
「ほら、とってこーい!」
家の中だから全力では投げられないけど、なるべく距離がでるように綱を投げる。
相変わらずまろびそうになりながら走っていって、綱を咥えて走って戻ってくる。俺の足元でぼたっと綱を落とし、笑顔で――犬には絶対笑顔がある――と見上げてくるリシュ。
うちのこ可愛い。過去にどんなに強かったとしても、俺が守る方向で。
リシュとたっぷり遊んでおやすみなさい。
翌日は朝ご飯を食べた後に温泉へ。
朝湯ですよ、朝湯!
――強風で無理でした。
山の中の家と【転移】で移動するから、移動先の天気とか気温が困る。あまりに予測がつかないんで、カヌムには服を置いてる。
カヌムで、日本は四季で気温がはっきりしてるんだなって思った。高い山があるせいか、気軽にフェーン現象で気温の変化が起きがちなんだよね。
天気の予想も気温の予想もつけられない。今日寒くても明日は暑いとかありがちです。
さすがに露天風呂に着替えを置いておくわけにもいかず、強風の中で入るつもりもなく撤退。大人しく『精霊図書館』に行きます。
呪いも色々ありそうだし、精霊も地域によって性質が変わったりするんで、先に北の大地とか北方の民のことを調べといたほうがいいかな?
同じ陽光の精霊でも、タリアと北の大地じゃだいぶ違うしね。
「こんにちは」
「よくいらした」
相変わらず崩れかけた寺院に世捨て人のような姿の老人。
いつものように清浄な飲める水と、味のクセの強い郷土料理を渡し、『精霊図書館』へと続く秘密の通路へ。
「ああ、そういえば こっち ( ・・・ ) の通路ってどこに繋がってるんだ?」
この道は、最初気づかなかったけれど『精霊の道』とか『妖精の道』とか呼ばれる空間。
ルゥーディルの像の後ろ、壁から現れた通路は部屋から見た時は、普通の隠し通路――普通って言い方はおかしいけど、物理的に存在する通路。
でも一歩足を踏み入れると、そこは『精霊の道』。たぶん条件を満たさないと、入れない系の 呪 ( まじな ) い付きなんだと思う。
俺は こっち ( ・・・ ) の世界の隠し通路を通ったことがないので、ちょっと気になった。
「もう誰もいない町の枯れ井戸に通じていますな。もともと水はなく、隠し通路としての井戸であったようですが、一応昔は水が汲めたと伝わっています。今はもう、どちらの用途でも使う者はいません」
「先にそっちに行ってみてもいい?」
「かまいませんが、 こちら ( ・・・ ) の道と あちら ( ・・・ ) の道を切り替える方法は、私の手にはありません」
「そこは大丈夫だと思う」