第715話 精霊図書館への通路
第715話 精霊図書館への通路
精霊の姿を見ないよう視界を切り替えるのと同じ要領で切り替え、進む。
背後で入り口が閉まると真っ暗。
まあ、見えるけど。
ほんの微かな風、抜け道として使用してたみたいだし、ガスとかは大丈夫っぽい。でも一応用心しとこう。
「エクス棒」
「はいよ、ご主人!」
「隠し通路探検行くんだけど、どうする?」
「参加参加」
「はいはい」
ということで、エクス棒にカンテラを持ってもらう。
で、足の方にエクス棒を向けて進む。
いつもは杖でいうと石突でコンコンするんだけど、今回は割と平らに整備されてるんで、コンコンする意味ないしね。
「こんな感じ?」
「そうそう、うをおおお!! 大迫力!」
時々地面スレスレをぐいーんとスイング。エクス棒にちょっとしたアトラクションを提供しながら進む。
海蝕洞は岩が鋭利なため怪我しやすい。
鍾乳洞は迷いやすい。できる原因的にガスは溜まらない――どこに繋がってるかわからないから、油断はできないけど。
火山洞は火山が活動中だったら硫化系の有毒ガスも危ないし、岩が鋭利なことも多いんで危険。
人工洞は崩れやすい、ガスが溜まる。そして何か仕掛けられてるかもしれない。
頻繁に誰かが使ってるならともかく、一番危ないのはこんな人の手で作られた地下通路かな。エクス棒と遊びつつも、周囲を観察。
隠し通路って、見つからないように移動する場所。内緒のお出かけとかならいいけど、敵から逃げるのを想定して作ってたら、追ってくる敵に向けた罠とかあるかもだ。
怪しそうなところはコンコンして、そうでない場所では地面スレスレスイングを織り交ぜて、エクス棒の笑い声を聞きながら進む。
ゆるく傾斜して下がった道が、今度はゆるく上がる。
「おっと行き止まり」
井戸の中にそのまま出るのかと思ったけど、そうじゃなかった。
「上は?」
「異常なーし! 変化なーし!」
エクス棒を掲げて天井を一応見てもらったけど、変わったところはなし。
どう考えても怪しいのは最初から正面の壁なんだけど、一応ね、一応。
エクス棒の石突でコンコンしようとしたら、コンの時点で普通に開いた。開いたと言うか、石壁の幻影が消えた? その先は日陰ではあるけど、昼の明るさが感じられる。
うん、井戸の途中だね、罠もなくついちゃった。
井戸の石積みは少し歪んでいて、多分運動神経が良ければ手足をかけて登れる。歪んでるのもわざとなんだろうね。
護衛の人とかが先に登って、綱を垂らすとかそんな感じなのかな? でもなんで寺院からこんな通路あるんだろう?
底に目をやると、土が溜まった枯れ井戸。幻影で隠されたこの穴より下に、昔は水があったのかな?
「よいしょ」
ジャンプして井戸の壁を蹴って地上へ。
守人が異てった通りの街の廃墟で人はいない。日干しレンガっぽいものの崩れた壁が少しあるけど、あとはほぼ土台の跡って感じ。
「結構冷えるな、ご主人!」
「昼間は暑いのに、朝は結構寒いな。とりあえずこの辺の探索は後かな」
黒山ちゃん探検の約束日が近いしね。
井戸にまた降りて通路を戻り、今度はいつものように『精霊の道』に入って、『精霊図書館』へ。
もう道もわかるのだけれど、すっと現れた子供の姿をした精霊についてゆく。
「じゃあまた、静かにしてると寝ちまうから、先に寝とく!」
「ああ、また」
入り口が見えたところでエクス棒が杖の先端から消え、芽鱗(がりん)みたいなものを守るようにちょっと広がっていた細い枝が閉まって絡む。短くして腰のホルダーへ。
北の大地に関する本がある場所を教えてもらい、とりあえず広く浅く載ってそうな本を2冊ほど選び出す。
意見や見方が違う場合も多いから、なるべく違う作者のやつを選んでる。時々、この分野は全部同じ作者! とかあるんだけどね。
というかハウロンの名前があるじゃん!
せっかくなのでそれも手に取る。ハウロン何書いてるのか気になるけど、ざっと知識つけてから読んだ方がいいよね。
個室に運び込んで、ソファに腰掛ける。
飲み物の用意!
何がいいかな、チャイ行こう、チャイ。うん、美味しい。
よし、まずは北方について書かれた古そうな本から。
――緑に覆われた木と共にある大地。
北方はやはり緑豊かな森だったらしい。今より温暖で、過ごしやすく、ブナなんかも生える森林地帯。
それが風の時代の中頃、『腕長の民』と『黒腹毛の民』が中原の民と競うように家や船を作るために伐採しまくった。
――『腕長の民』って昔から呼ばれてたんだな。
身体的特徴が呼び名になることって多い。差別にも繋がりかねないけど、そもそも大っぴらな差別が普通にあるんでやめましょうともならない。