第716話 種族の昔
第716話 種族の昔
『黒腹毛の民』というのはは想像するからやめてほしいが、こちらは別の陸地からやってきた民で、大きさからいって『地の民』ではなく、おそらく『北の船乗り』と呼ばれている人たち。
『黒腹毛の民』と呼ばれるのを嫌い、近年は服を着だしたとか書いてある。この書物を書いたのは、視点から言って中原の人だね。
『地の民』はいないのかな?
『暴虐の狼』が生まれ、大気が冷え、白樺の森が生まれる。
リシュが元気にアルファ犬やてったころの話かな。気候変動で森が消えたのかと思ったけど、どうやら人間の仕業。
植生が変わったみたいなんで、なんとも言えないけど。
――再び人間が白樺の木を切りまくり、そこに『黒山』の娘『カラエイヤ』の裁きで――『カラエイヤ』は調べたら火山の精霊だった――とうとう木々の生えない不毛の土地に。
人間、学習しないね。
いや、また別の森ができるって学習しちゃったのかな、この場合。
裁きは噴火のことらしく、溶岩や噴石であの岩だらけの土地になっちゃったらしい。
『黒山』の娘『カラエイヤ』が、かりんとう饅頭ちゃんの言ってた溶けやすい火山でヴァンの恋人扱いされてるという、余計な情報も仕入れつつ、何冊かの本を読む。
『静かな人』は、泉や、岩の割れ目などに棲む――という記述があって、――彼らは、岩から生まれ、性差を持たず、男女ともに髭を生やし同じ姿をしている――ともあった。
『地の民』のこと? 静か? 輪唱とか結構騒がしいイメージだけど、昔は違ったのか?
というか、『地の民』って思ってたよりも精霊より? ルフと同じように精霊の末裔なのかなこれ。
だとしたら、昔はもっと精霊よりで、単に執筆者側の人たちに『地の民』の声が聞こえてなかっただけかもね。
確かに『ものづくり』に並々ならぬこだわりと熱意があって、行動原理が分かりやすいところは精霊っぽい。
メール人もいるし、ルフもいるし、どこまで『人間』の範囲に入れていいんだろう?
この世界、中原の大陸とそれに近い場所にしか『人間』がいないって話だった気がするんだけど、なんかこう、微妙に『人間』じゃない種族はいそうじゃないか?
色々詳しく掘り下げたいけど、黒山に行く約束の日まで間がないんで後回しだ。
最低、『地の民』と『腕長の民』の間柄と呪術関係を調べておかないと――って、『地の民』について書かれた本少ない!
いや、作ったものとかその製作者とかの本は凄くたくさんあるんだけど、住処とか歴史とかについては、とてもとても少ないよ!
というか、北の民全般、本という形というか紙で残す文化が最近までなかったな!?
『精霊図書館』には石碑とかはあんまりないんだよ!
……『地の民』の『書いたもの』がまとまった本棚あると思ったら、注文書とか領収書ばっかりなんですけど!
過去の製品の仕様書は『地の民』喜ぶかな? いや、代々持ってそうだし、どの谷とか山の集団のものだかわからないから、教えたり聞いたりするのは控えたほうがいいね。秘匿技術かもしれないし。
これなんか面白いし、こっちは模様がすごい――って。いかん、時間が過ぎる! 調べきれない。
『地の民』と『腕長の民』の関係は諦めて、呪術について調べよう。
途中昼を食べて、食休み。
昼寝の後、『精霊図書館』に戻って再び読書。
北方の呪いについて。他の地域の呪いを持ち込むには、長く残りすぎてる。どう考えても土地にいる精霊を利用してると思う。
何かとても強い精霊を持ち込んでいれば別だけど、『銀狐のバインズ』たちの住む――正しくは呪いの対象者が住むあの家に、そんな気配はなかったしね。
利用してるのはたぶん、あの呪いのリボンに絡め取られてる黒精霊と精霊、もしかしたら何かの条件で他の周囲の精霊の力、って感じだと思う。
――風の神の時代、『北方の民』の信仰は大地の神から戦の神へと多くが変わる。
豊かな年は畑を耕し、狩りをし、交易を行う。厳しい年、農閑期に略奪者に変わる。血による強固な団結、死を恐れない戦いぶりを沿岸諸国は恐れた。
『腕長』の船は底が浅く、河川に入り込む。早く機敏で、兵を送った時にはすでに引き上げている。
――彼らの魔術は、崇拝する神々に捧げられた紋様に、倒した敵の血をたっぷりと注いで加護を大声で願う単純なものだった。
――呪術は『腕長』と呼ばれる者たちの中、ヘイズがよく行う。ガンドと呼ばれるものを放ち、術者の目とし、口とする。
眠りながら離れた場所の情報を集め、相手に預言し、傷をつけ、死を与える。
ガンドとは、能力者の携える「杖」もしくは「棒」と、 巫術 ( ふじゅつ ) を行う際に術者の肉体から遊離した魂の具現である「狼」の2つを指す。
なお、魂の具現は「狼」が多いが、術者の性質によって多様。