第717話 大賢者から聞き取り
第717話 大賢者から聞き取り
『腕長』の民と魔術についてざっくり抜き出すとこんな感じ。
呪いと予言は紙一重みたいな感じの文化なのかな?
『ヘイズ』は術者のことだって文脈からもわかるけど、書かれている『ガンド』というのが、どんなものかは調べてもはっきりしない。
召喚した精霊って記述はあるけど、呼び出していられるのは術者が眠っている時だけだって。
眠りか夢に関わる精霊かとも思ったけど、姿は獣のものが多いみたい。読んでると、術者が自分で思い浮かべた姿っぽい印象を受ける。
自分の精神体を分離して擬似精霊になってるのか、一時的に精霊と同化とかしてるのか。
バインボインの家で精霊たちが言ってたこと。
――『がんとじゃない』『自分を撃ったよ』『自分の魂』。
たぶん『がんと』と『ガンド』は同じものだよね? 今回俺が知りたい呪いはどうやら純粋な『ガンド』ではないらしい。
途中脱線しながら一夜漬けならぬ、一日漬けで知識を入れる。
ちなみにハウロン著の本、ものすごくメモ帳でした。
本人が思ったこと、気づいたこと、聞いたこと備忘録? 一般公開する気がなかったことが2、3ページ読んでわかったので、読むのを止めた。
俺がというか、他人が読んじゃいけないことが書いてあったら困る。俺も日記読まれたら吐血する自信あるし。そもそも書いてないけど。
それにしても、東の探索も再開したいし、拠点ももっと作りたい。おかしいな、働いてないのに忙しいぞ?
二日目、ハウロンの元にお邪魔。
お邪魔する前に、温度不変の魔法陣とかいると分かってるものは用意済み。温度不変の魔法陣は、箱につけるか袋につけるか迷って、皮袋にした。
「休憩よ」
執務室には他の人もいたけど、ハウロンが手をひらひらさせたら席を立って出て行った。
何度かお邪魔してるから、俺という存在には慣れてるんで人払いじゃなくって、単純に昼休憩。
お昼の差し入れがてら時間もらったんでね!
「どうしたのかしら?」
相変わらず机に書類が山積みになってるハウロン。
今度バインダー贈ろう。
「とりあえず差し入れね」
食べながら話してもらおう。
じゃがいもとチーズ、卵の生地を土台にしたマッシュルームとほうれん草、ひき肉を詰めたパイ。白菜とベーコンのクリームスープ、チキンのソテー、パン。
ハウロンには栄養とってもらわないと。
「『北の民』の『鉄槌のボインジ』と『銀狐のバインズ』って知ってるよね?」
「いいえ?」
おっと違った。
「えーと、ハウロンって呪いのかかった『北の民』を助けたことがあるよね?」
「何度かあるわね」
何度もあったのか!
さては大賢者、人救った心当たりが多すぎるな?
「『北の民』で名前の音を重ねることで、呪いを弱めるみたいな手助けしたことあるよね?」
あちこちで同じようなことしてたらどうしよう。
音を重ねるのも精霊の興味引いたり喜ばせたりするためらしいし、自分の名前もリンリンだったし、それがハウロンの精霊を使う手法だったりして。
「ああ。あったわね、そんなことも。それが?」
大賢者の記憶力の勝利!
「なんか黒山の大洞に氷を取りに行く手伝い頼まれたんだけど、話を聞いたら大賢者に呪いを解く方法を聞いたっていうから確認したくて。まず、これ手伝っていいやつ?」
「なんでまた……。呪いを解くには、人選間違っているわね」
ハウロンがため息一つ。
俺じゃ呪いを解くの、難しい? 氷とってくるのは楽勝っぽいんだけど。
「手伝ってもいいけれど、あの民族の生き方ってあんまりジーン好みじゃない面もあるわよ?」
困ったような顔をするハウロン。
「過去の奴隷のことなら知ってる」
「あら……」
ハウロンが意外そうな顔でこっちを見てくる。
「ちょっと元の俺の周りになかったこともちゃんと見ようかなって。見るだけで深く関わるつもりはないんだけど。あと一応、物語の強い戦士とか冒険者とかは好きだぞ」
自分で戦うのは苦手だけどね!
「氷を取ってくる手助けはいいと思うわ。でも血に潜む呪いを解くのはお勧めしないわね。代を重ねて、分離するには馴染みすぎている感じがしたわ」
切り分けられたパイを一つ口に運びながらハウロン。
「ああ、確かに。呪いが体にめり込んでた」
あの呪いの帯を無理やりむしり取ったら、喉が裂けそう。