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第719話 根回し

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第719話 根回し

さて、ハウロンから大事なことが聞けたし、根回しに行こうか。

まずは黒山ちゃんかな? ってことで、黒山に【転移】した。場所は大岩のおじいちゃんのところ。

『こんにちは』

『お〜。さっきぶりじゃの〜』

ゆらゆらゆれる大岩。

さっきぶり……大岩の精霊はさすが時間感覚が違う。

『変わりはない?』

『ないの〜』

のんびりした声が答える。

『そうか、ないか〜』

『黒山ちゃんもないの』

いきなり混ざる黒山ちゃん。

『黒山ちゃんもこんにちは』

『こんにちはなの』

『お〜。もしかしなくとも儂の家主じゃのう? こんにちはじゃ〜』

今回は大岩の精霊も黒山ちゃんを認識している様子。

『近いうちに黒山ちゃんにある大洞っていうところに、氷を取りにくる2人組についてくるんだ』

『時々くる氷取りの人なの?』

『うん』

氷をわざわざ取りにくる人なんていないと思うから、バインボインの関係者で会ってるよね? たぶん。

『黒山ちゃんに入った人がどうなるか、後ろから見学してる感じかな。だから、普通の対応でお願い。特別に通してくれるとかしなくていいから』

『わかったの』

『ありがとう』

『それにしてもまたいっぱい気配が混じったなの』

『色んな精霊の気配が増えたのう〜』

『とってもとっても遠いところの気配もあるなの』

『変わっとるのう〜』

『黒山ちゃんの知らない気配なの』

『南の海の精霊とか、契約増えたからかな?』

暖かい海のセイカイと、極寒の海のウーパールーパーと。

『落ち着くの』

『いいのう〜』

『そうかな?』

よくわからないけど、この2人の精霊は単一の精霊を強くする勇者より、俺のように色々な精霊と契約してるタイプの気配のほうが落ち着くらしい。

どんな気配なんだかよくわからないけど。

『最近は極光が増えたのう〜』

『今の勇者は光の精霊贔屓なの』

極光はオーロラのこと。

俺、まだ見たことがないんでちょっと楽しみだったりする。

『白夜も増えそうじゃの〜』

『黒山ちゃん、白くなっちゃうの』

くるんと回る黒山ちゃん。

特に悲観してはいないようだが、嬉しくもなさそう?

『渡りの精霊が夜の精霊が減ったといっとったのう〜』

『それは人形が夜に精霊を食うから、必然的に夜とか闇の精霊の眷属がたくさん食べられるの』

『こそこそ食べてるのか』

人目を盗んで――精霊が見えない人多そうだけど、シュルムにはいるのかな?

宮廷魔導士とかいそうだね。もしかして勇者に対しても食うことというか、食う現場を隠してるとか?

俺の人形だからなあ、秘密主義で変に狡猾な気がする。我ながらタチが悪そうだ。

『多分そうなの。夜の精霊が生まれるの、間に合わないの』

『一眠りしている間にもどっておるかのう〜』

ゆらゆら揺れる大岩。

『闇の精霊が減るのはつまらないの』

『そういえば闇の精霊と仲がいいんだったね』

光の精霊の眷属が強くなって、夜とか闇の精霊の眷属が弱くなってるなら、バランス崩れるの早そうだけど、どうなるんだろ。

『どうなるんだろう? 白夜が続くとか?』

『白夜の精霊と語るのもいいが、極夜の精霊と会えなくなるのも寂しいのう〜』

『昼間が続くかもしれないし、星の明かりが強くなるかもなの。わからないの』

『あー。勇者がどの種類の光の精霊を強化するかわからないし、人形は手当たり次第に食べてるみたいだし、難しいか』

迷惑だな勇者、せめてシュルムから出てこないでほしい。

その後、沢の近くに生える苔の話とか、杉の木のてっぺんの話とか、たわいない話をしてお暇。

その足で『地の民』の元へ。

黒鉄の竪穴のガムリのところにお願いに来た。全員に説明してる暇はなさそうなんで、みんなに情報を回してくれそうなガムリのところにとりあえずお知らせ。

「お邪魔します!」

「おお、島のソレイユ! 歓迎する!」

「島のソレイユ、歓迎する!」

「歓迎する!」

作業場に直行したら何か監督してたらしいガムリがいて、歓迎してくれた。

お邪魔しますの一言で、作業の手を止めるなんて『地の民』としては最大級の歓迎なんだよね。よほどのことでない限り作業優先。

名前がソレイユで定着してるなあ。

あと、みんなは俺のこと覚えて見分けてくれるけど、俺の方はガムリ以外の見分けはおぼつかない。

髭の色と形で見分けるのが正しいっぽいんだけど。三つ編みにしてたり個性豊かではある。

「突然来てごめん、これはあとでみんなで飲んで」

とりあえず酒樽は出す。

「おお! ソレイユの酒!」

「ソレイユの酒だ!」

「ソレイユの酒は美味いぞ!」

『地の民』たちにバケツリレーみたいに運搬されてゆく酒樽。