LNCrawler

第726話 地下の通路

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第726話 地下の通路

バインボインは血を拭って、ごしごしと体を温めている。

暖炉のダンちゃん貸してあげたいけど、色々バレたりもあれだけど、苦労を減らすと失敗フラグが立つので下手なことができない。

暖かいご飯とか、お茶を出すのもアウトだろうかこれ。

迷った末に今回は大人しく干し肉を齧った。干し魚は煮干しくらいで勘弁してください、身欠ニシンみたいなのそのままかじる趣味はないです。あとで乾燥鮭トバみたいなの作って贈ろうか。

で、休憩を終えてまた歩く。

氷が視界から消えて、今度はだんだん熱く。

「ここからはなるべく走る」

「キツイなら俺が担ぐ」

「わかった」

『鉄槌のボインジ』がいう担ぐって、氷のことじゃなくって俺のこと。説明の時点で言われてたんだけど、大丈夫だって答えてる。

走らなくても氷は溶けないし、俺は2人より体力あるよ! ――そんなことは言えないので、黙ってダッシュです。

オレンジ色の溶岩が流れてる、吹き出してる。

それを避けて走る。

走っているうちに気づいたら、なんかいるんですけど!

オレンジ色のマグマが別に地面を這って追ってくる。1筋、2筋――。だんだん増えてく。

「『這いずる火蛇』!」

「あれは遅い、振り切れ」

速度を上げる2人、追う俺。

2人を追い越さず、這ってくるモノに追いつかれないよう――、ちょっと、もう少し速く走ってください!

「次のマグマ溜まり」

「金貨を投げたらあとは振り向くな!」

「わかった」

これも事前に聞いてたことなんで、ただの確認。

マグマ溜まりに強い魔物が棲んでるんだけど、金を投げ入れるとそれが溶けて一つになるまで出てこないんだって。

でも振り向いてそれを確認すると、興味が金から逃げる俺たちに移って、追ってくるからって。

本当にマグマ溜まりに魔物がいるのか確かめたくなるんだけど、好奇心猫を殺す、かな。俺1人ならともかく、2人の脚を引っ張るのは避けたい。

でも『銀狐のバインズ』が走りながらマグマ溜まりに金貨を投げ入れる後ろから、【鑑定】。

魔物じゃなくって精霊ですね!

かりんとう饅頭ちゃんの中で、ヴァンと噂になったあの精霊だろうか。土地勘がないから、ここがどこの火山の下だかわかんないや。

ここで息ができるのは、精霊との約束のおかげだって『地の民』から聞いてるんで、その精霊かもしれない。

走って、走って、人工物――削られて平らにされた床が見えたところでストップ。

打ち合わせ通り、無言で足に布と紐を巻く。足音を立てないように、地の民に気づかれないように。

コン……カツン

コン……ガツン

ゴン……ガツン

近づいてくる音。

鉄と床の石が触れ合う音。

「気づかれた……!」

「いや、見回りか?」

2人が小声で言い合う。

ガコン!

ガコン!

「ダメだ、気づかれている!」

「まだ炉にさえ到達していないのに……走れ!」

再びのダッシュ。

天井が見えないほど高い。何本も規則正しく並ぶ大きな石柱には、松明が置かれているが、その明かりは闇に吸い込まれているかのように光度が低く思える。

背後から響く、規則正しく、重く、容赦ない足音と、おそらくハンマーや戦斧の柄が石畳にぶつかる音。

『地の民』は連携いいんですよ、生産とか宴会の準備とかしか知らないけど。

暗闇の先を目指して走る。

「炉までどのくらいだ!」

「炉にすでに守りを固められているのでは!」

「増えてる、増えてる」

脇道という脇道から『地の民』が4、5人づつ出てきて追っ手に合流してゆく。

安全だって分かってる俺でもなんかホラーだぞこれ。鬼ごっこで鬼から追いかけられる恐怖って、こんな感じ?

ここまでドキドキバクバクするの、魔の森で狐の魔物から隠れて以来か?

背後から迫る足音は、決して遠ざかることなく増えてゆく。

ちょっと、もしかして他の集落にも招集かけてる!? いや、ドラゴンの炉というか、地下で繋がってるのか、『地の民』の住まう場所!

一応ドラゴンの炉は抜けた。

いつもは作業しやすい格好でうろついてる『地の民』たちが、兜で頭と顔を覆い、チェインメイルを羽織り、工具ではなく武器を手に追いかけてくる。

もしかしてこれサービス?

絶対簡単に追い込めるところ、それはしないで一定の距離を保って追ってきてるよね? 音もわざとだろうこれ!