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第744話 寝袋

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第744話 寝袋

精霊たちが言っていることにとてもとても不安になって、青トカゲ君に呼びかける。

『青トカゲ君、この嵐は大丈夫なやつ?』

『ダメなやつだよ。昔の僕ならまた少し崩れてるところ。今の僕は平気だけれど、橋を渡った方の建物は瓦が飛んじゃうかな』

ちょろりと顔を出して、答えてくれる青トカゲ君。

『ダメか〜。全部俺が対処するのは反則かな?』

『反則じゃないよ。だってこの嵐、風の勇者が作った歪みのせいだもの。風の精霊王がいなくなって、 縁 ( よすが ) も消えてとてもひどくなったよ』

青トカゲ君が困ったね、と言う。

おい勇者! ろくなことしないな勇者!

いやでも勇者を望んだのはこっちの人たち――精霊も人間も――で、そして多分勇者は自分の願いも人間の願いも精霊に願って叶えた。風の精霊は勇者の願いを叶えて大きくなった。

この内海を穏やかに、海上で迷わぬよう見えないはずの陸を見せて。代わりに内海の精霊がはっちゃける日が大嵐に。

木を伐採しまくり、自然界のバランスを変えて、変えた結果中原は土地が痩せ、それを解決するために風の精霊たちが、栄養豊かな土をばら撒く。土をばら撒くのも風の勇者との契約だったよね?

あと風の精霊を介したドラゴンとの契約もあるか。

ドラゴンとの契約はともかく、他の2つ、やっつけ仕事感があるの気のせい? 俺が知ってるのがこの3つなんだけど、もしかして他にも無茶な契約結んでたりするのか?

『ちょっと行ってくる……』

『無理はしないでね、僕も僕の眷属たちもおうちを守るね。嵐は朝までと決まってる、みんなにもお願いしとくよ』

『ありがとう』

青トカゲ君は大きくなっただけじゃなくって、眷属も増えている様子。協力はありがたい。

塔の中から外へ【転移】。自分に大気の膜を 纏 ( まと ) うことも忘れない。大雨も大風も俺には影響がないけど、視界が酷い。大粒の雨が大気の膜に当たって飛び散って流れて、それが絶え間なく繰り返される。

『ウフ、セイカイいるかな?』

呼びかけるとぐるんと大きな風を起こしてウフが、海が渦を巻いてその中からセイカイが現れる。あー、これ、もしかしなくてもウフもセイカイもこの嵐に参加してる?

『うふ』

ほんのり薄水色だったウフの体の足元の方が黒を 孕 ( はら ) んでいる。目も気配も不穏な感じ。

『中央の精霊王にして内海の精霊王よ、呼んだか』

目が据わったイルカが喋る。

ポセイドンみたいな部分の髭マッチョの目が発光してるんですけど! しかも瞳じゃなくって眼球が! どうでもいいけど、日本は瞳が光ったり光線出してくるイメージだけど、アメコミとかは目全体から出してくるイメージだよね……。

それは置いといて。

うちの島やナルアディード、被害がいきそうな半島に全部大気の膜をかけてもらおうとしたんだけど、それをするとウフが嫌がりそう。

セイカイにも波が行かないよう頼もうと思ったけど、そっちも無理っぽい。

眷属化してるせいか、ウフとセイカイの持つ衝動がわかる。壊す、暴れる――というのは人間の感情かな、ただただ力を解放してのびのびしたい感じ? たまには全力! 眷属以外は全部吹っ飛ばす! 眷属と一緒に洗い流す! 歪んだところをうんと伸ばして解放したい、みたいな。

……俺の【解放】効いてないよね?

これは止めたらダメなやつ。風の勇者と風の精霊王が作った歪みの解放をしようとしてるのを押しとどめたら、もっと大きな歪みになる。

止めたら精霊の不満が溜まる、溜まって爆発したらもっと大きな災害に。それも封じて封じて封じたら、小さな精霊から消えていってしまう。

えー。

勇者召喚したシュルムに場所変えしてもらうとか? いや、この一帯の精霊たちだし、ダメだね。それにあっちには精霊食いがいるし。

どうしよう? 数瞬の悩み。風に吹っ飛ばされた船の帆が視界に映る。

『せっかくの嵐だし、ゲームをしないか?』

『うふ?』

『ウフとウフの眷属たちと、セイカイとセイカイの眷属たちと、俺と他の精霊たちの3グループでこれの取り合いをしよう』

【収納】から取り出したのは 白色雁 ( しろいろがん ) の 寝袋 ( シュラフ ) 。決して布団ではありません。この後に及んで布団が吹っ飛んだとか思ってないです。大丈夫です。

取り出した寝袋に思い切り魔力を込める。精霊島の青い布より、魔物の羽毛を詰めたこれのほうが魔力を込めやすい。何度も使ってるのも俺の魔力が馴染みやすい理由かな。

あ、上着でもよかったか。まあいいや。

魔力ついでに【解放】も。ああでも、先代勇者と風の精霊との契約を全部無くすわけにはいかない。いきなり全部消すと今度は人間の世界が崩れそう。特に中原に運ばれる栄養豊かな土が消えたら、途端に飢えると思う。俺は元の内海がどうだったかも知らないし。

だからほどほどに。

『俺からこれを引き剥がした精霊の勝ち、俺が明日の朝まで持ったままだったら俺の勝ち。俺も精霊に協力は願うけど、たくさん吹き荒れて、たくさん波をあげて、全力で俺を捕まえて。勝ったらこれはそのままあげるよ』

『うふ』

うなずくウフ。

『うむ』

うなずくイルカとオッケーサインをだしてくるイルカに乗ってる髭マッチョ。

ぜひ内海の中央で取り合いをしましょう。陸から離れて離れて。

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現実世界の自然災害が酷すぎて

物語の中だけでもさっさとリカバリーすることにしました……!

ご無事で!

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