第747話 家のベッドが最高
第747話 家のベッドが最高
朝日が昇る。
『うふ』
ニコニコと上機嫌なウフ。
『うむ』
こちらも満面の笑みを浮かべるムキムキおじさんと、笑ってるように見えなくもないイルカ。
『ううう、なんでボクはくるくるされるの? せめていつものもっと大きなくるくるにして……』
空中に横座りして泣いている精霊。
なんか情けない感じなのに、魔力ごっそり持ってったんですよ、こいつ!
発生する竜巻やらへの目配りとか、誘導とか、気疲れはしたし、今までになく忙しかったけど、魔力はあんまり消費してなかったのに!
『わははは! ご主人、また変なの拾ったな!』
『精霊は個性的だよね。君、いつもどうしてるの?』
エクス棒にお前もなーと言い返すか迷いつつ、横座りの精霊に聞く。
契約したんで風と循環の精霊だってことはわかる、しかも強大。強大なのにどこか情けないと言うか、やる気がないというか、吹く気がない。
何で? 自分の性質なのにやる気のない精霊初めて見た。もともとまったりした性質の精霊がまったりしてるのはわかるけど。
『僕はフェレル。だいたいこの辺り一帯を巡っているよ、キョクとハドレーにいつもくるくるされるんだ。あの2人、なんであんなに回るの好きなの? なんでなの?』
メソメソする精霊。
『もしかして巻き込まれ体質?』
巻き込まれ循環なの? 挟まれて仕方なく回ってるのか?
『うふ』
ウフがご機嫌に頷く。
『僕、ここにいていい精霊じゃないはずなのにぃ〜。もっと広くて、もっと上の方なのにぃ〜』
『えーと。巻き込まれて大変だったな、帰って大丈夫だぞ? 帰れる?』
『ありがとう、ご主人様ぁ〜』
なんか泣きながら空に上がって行った。大きく循環する気流の精霊なのだろう。強大なんだけど、すごく頼りない。強大なんだけど。
いつもよりも少し荒い波、でも色は黒くない。重たく感じた湿気も消えて、風は強いけれど心地よい。
『うふ』
『うむ』
『たのしかったー』
『いっぱいくるくるした!』
『いっぱい荒ぶった!』
『いっぱいがんばった!』
『ぴゅーってしたの!』
『ばーってしたの!』
『ざっぱああんよ?』
周囲で精霊が笑い合って、今度はくるんと小さく回る。
『わははは! 楽しかったな、ご主人!』
エクス棒が笑う。
たぶん被害皆無とはいかなかったと思うけど、酷いことにはならなかったと思う。頑張った! あと、俺もちょっと楽しかった!
『お疲れ様!』
シュラフの強化を解くと同時に破る。
気を抜くとそのまま大気の膜が切れて、海に向かって大の字で落ちてゆく。でもゆっくり、ウフがゆるく支えてくれている。
『きゃー』
『ふわふわ〜』
『いっぱーい』
『ああ〜とんでっちゃう!』
『一個もらう〜』
『僕も〜』
『ふは〜ん』
魔力ののった白色雁の羽毛が舞い散り、精霊たちが歓声を上げる。
さて、帰ろう。空を背景に羽毛を追って散ってゆく精霊たちを眺めながら、海に落ちる前に【転移】。【転移】先は塔の屋上、風呂の中。
どぼんと。
もうびしょ濡れだし、掛け流しなことをいいことにそのまんま。青トカゲ君が襟元から顔を出して、首を振る。
『青トカゲ君、お疲れ様。ありがとう』
『 島 ( ここ ) のお家は 概 ( おおむ ) ね無事だよ。お家はいいね、お疲れ様』
青トカゲ君がとぷんと一回お湯に潜り、すい〜っと泳いでお風呂の端からそのまま消えてゆく。
張り付く服が気持ち悪いので【収納】、手足を伸ばして大きく息をつく。思いついて、風呂の底についた手から魔力を流す。青トカゲ君ありがとう。すごく頼りになりました。
ああ、ようやく気が抜けた。雨で濡れるのとお風呂で濡れるのには雲泥の差があるね!
『ふー。気持ちいい、気持ちいいまま引っ込むぜ、ご主人!』
『おう、エクス棒もありがとう』
朝日を見ながら風呂に浸かり、海と空を眺める。きっと昼にはいつもの穏やかな風景に戻る。島の点検どうしようかな? 任せていいかな。眠い。
風呂で眠ってしまいそうなので、ちょっとだるい体を動かして、頭を洗って体を洗って風呂から上がる。だるい時、湯船から上がるのって体がものすごく重い。
いやもう、ここは【転移】で山の家のベッドに。魔力使ってさらにちょっとだるくなるんだけど、もう寝るからいいです。
どさりとベットに落ち、手を伸ばしてエクス棒を壁に立てかける。上掛けを巻き込んで丸くなる。伸びてみる。
リシュが来た気配に、ベッドから手を垂らすと、濡れた鼻面がくっつけられる。
「リシュ、ただいま。散歩は起きたら――夕方行こう。おやすみ」
リシュの頭を撫でて、おやすみなさい。
家はいいね!
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