LNCrawler

第754話 丸投げ

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第754話 丸投げ

「そういうわけで、小麦と砂糖の交易の準備お願いします」

『青の精霊島』、ソレイユの執務室。

書類の山に囲まれて、こちらを見るソレイユ。

「今、今なの?」

「……後でいいです」

すみません、思い立ったが吉日したが、速やかな町の復旧のために邁進している最中でした。

嵐の精霊集団は解散したし、旱魃の原因も取り除いたので、あとは緩やかに元に戻ってゆくのだけれども。

人間世界は緩やかではなく、復旧は早急にでした。こちらの世界、なかなか物資が揃わないのだけれど、代わりにとてもたくましい。精霊に少しだけ優しい風をお願いしておこうか。

「後でいいわけないでしょう!? マリナが、ナルアディードが崩壊したら影響が大きすぎるわ! 交易が途絶えたら、立ち行かなくなる国が一体どれだけあるか……っ。私の商売相手が……っ!!」

ちょっと、ソレイユ?

「もう、嫌! 災害が続くと気持ちよく商売できないのよ! 災害と戦争は本当に嫌いだわ!」

おそらくファラミアが、綺麗にセットしたと思われる髪ごと頭をがしっと持って項垂れる。

「ソレイユがそういう人で良かったよ」

弱みにつけこんで暴利を貪るとか、 売れる消費物 ( ぶき ) を扱うとかいう方向に行かないところが。

悲劇的な場所や極限状態では人の本性が極端に現れるよね。

「香辛料じゃなくても、とりあえずマリナの王様と小麦の交易したいんだけど、なんとかなるかな? 住民から直接買い取るより王様通した方が『王の枝』的には良さそうだし」

はーっとため息を吐いて、顔を上げるソレイユ。

「『精霊灯』の売買で周辺の国とは 伝手 ( つて ) があるわ。その後も付き合いは切らさないようにしているし」

返ってきた答えが頼もしい。

ソレイユの伝手すごくない? 多くない?

「で? 砂糖なの?」

聞いてくれる体勢のソレイユ。

「感謝と対価、この2つがあれば増産してくれると思うんだけど、今回は王様中心じゃないとダメなんだよね。それにマリナの農家の人って、対価に興味がないというか、知識がなさそうな気がする」

住民は食べるものに苦労しなければ満足みたいなスタンスっぽくって。

「たぶん農地から移動したことないから、他に美味しいものがあるとかそういう知識がないから無欲なんだと思う」

「知らないから欲しがらない、知ったら欲しがる。欲しいものが対価になるってことね」

「そう。カーンの国で、もうちょっとしたら砂糖が出せる。乾燥マンゴーとかも出せるけど、きっと砂糖の方がいい」

マリナで小麦を使った料理のレパートリーを増やしたいので、調味料をですね? 貴族階級に出回っている砂糖を、マリナの一般庶民へも。

「うまくいくかしら? 王族や貴族が搾取を始めるだけではないの?」

「『豊穣で商売繁盛』と願われた『王の枝』があるから。王族も貴族も、民相手でも税以上の小麦は買うと思うよ――ちゃんと覚えてたならだけど」

……こっちの人、本当に思慮分別の度合いがピンキリで。

「ちょっと、いきなり不安にならないでちょうだい」

「王家に専売を持ちかけた上で、契約書に『小麦・砂糖は公正な価格で買い上げること』って一文入れておこうか。契約の署名は俺がする」

安全第一で。

こっちのお金、金貨とか銀貨とかの 現物 ( ・・ ) 。為替もあるけど、それは国内だけのものじゃないし。少なくともマリナの為替はナルアディードと共通、つまり交易してる大国やらと一緒。

金 ( かね ) の鋳造には、 金 ( きん ) や銀を用意しなきゃいけないわけで、簡単にはできない。だから、民にばら撒いた金を回収しないと砂糖が買えない。

金の回収のために国がなにか娯楽――というより衣食住の向上を目指すんじゃないかな。一番手間がないのは砂糖を少し民に流すことだと思うけど。

「貴方との契約じゃ破るわけにはいかなくなるわね」

「『王の枝』との契約を破るよりマシ」

破った時のペナルティがきついだろうけど、それで『王の枝』との契約が破れる前に間違いに気づいてもらえればいい。

「そんな先の話じゃなくって、契約の時にどの神が出てくるのか心配してるの! 私との契約に時々神々が現れるって噂になってるのよ!」

また頭を抱えるソレイユ。

すみません、それは俺にも誰かわかりません。事前にリクエストするべきでしょうか?

「いいのよ、そういう契約は大きな契約だし! 儲けが少なく見えて、付加価値がものすごく高かったり、他の商売もついてくるし! いつの間にか広まっていて、怖いくらいの儲けが返ってくるものもあるし! ちょっと私が居た堪れなくなるくらい……っ!」

葛藤はあるけど、商売の利に傾いているらしいソレイユ。

「小麦と砂糖の物々交換でもいいし、ソレイユのやり易いように調整してくれて構わないし、任せるよ。カーンとハウロンには話しとくんで。ああ、できれば料理を販売する店の出店許可欲しいかな」

国内の売買でも商売繁盛いけるよね? うどんとかケーキとか小麦を使う料理を広めたいです。

いつでも丸投げですみません!