第755話 事情聴取開始
第755話 事情聴取開始
ソレイユに丸投げしたあと、俺は小麦を使った料理の候補出し。できればこちらが売り込む砂糖を使った料理だとなお良し。
なので菓子がいいかな。でも、あちこちに散らばる村々全てに店を作るのも非現実的。村人が行くそこそこ大きな町に出店するのが精一杯だろう。
その前に村人、町に行くかな? こっちの世界、本当に村から出ずに一生を送るとか普通にあるし、ちょっとその辺もリサーチしないと。
塩とかは買い入れてるはずだし、最低でも村人のうち何人かが町には来てると思うけど。――行商だったりして。
どっちにしても運ぶ間、日持ちのするもの。
できれば家庭でも材料さえあれば簡単に作れて、広まって欲しい。で、店で売るものは「さすが売り物!」ってなって、お土産に持ち帰れる感じのもの。
じゃあ、発酵はなし。
で、考えながらカヌムの借家へ。俺だけじゃ視野が狭くなっちゃうし、こっちの人の一般的な好みから外れる――というか、やりすぎる気がするからね! 特に料理については注意が必要な自覚はあるのだ。
借家の勝手口から入って、共有スペースへ。台所と風呂が一階にしかないし、みんなが集まる場所だ。
冒険者の多く住むカヌムでは、借家に台所がつくことはほぼない――というか、他でもあんまりないけど。一棟貸しならともかく、ね。
そもそも一部屋にぎゅうぎゅうに詰め込む感じで、部屋というより寝場所の提供って感じだし。食事はほぼ外の屋台で済ませ、風呂は入らない。
「あ、ハウロン! カーンも!」
ハウロンがいるのは珍しい、カーンがいるのはもっと珍しい。
げんなりした顔のレッツェと、執事、ディーンもいる。ディーンがひらひらと手を振ってくるのに振り返す。レッツェと執事はハウロンに付き合わされた気配。
「こんにちは。ティルドナイ王が、ジーンが何かやった気配がするというから来たのよ」
笑顔のハウロン。
いつになくハウロンの圧が高めなのは、カーン関係だからか? というか何故カーンが? 俺が何かやったって?
「今回はそっちまで影響ないと思うけど。え? ナルアディード周辺で雨が降ると、そっちが干上がるとかそういうシステム? 内海で雨降らせたのは俺が原因じゃないぞ?」
普段降らない所で降るとどこかが乾くとか、砂漠を緑化させると気流が変わって全体の気候が変動するとか聞くけど。
犯人、俺じゃないぞ?
「とりあえず何をやったか教えてくれるかしら?」
「いいけど」
その前に暖炉に肉をセットしてもいいだろうか。ちらっと暖炉のそばに座るカーンを見る。いや、空気を読んで諦めるけども。
「ちょっと前、内海で珍しい嵐が来そうだったから、コロッケ揚げて見物しようとしたら、聞いてた嵐と違って被害出そうだったんで、嵐の精霊たちのガス抜きに寝袋争奪戦を開催したことかな?」
「よし、わかるように話せ」
カーンが腕を組んで聞く構え。
「……」
いや、話したんですけど。
「内海の嵐ってのは珍しいのか?」
レッツェが聞いてくる。
「内海は、風の精霊の時代に勇者の大きな契約が幾つかなされたの。海の上からどこか陸が見えること、普段嵐は起こさないこと、魔物が船を襲わないようにすること」
「うっわ、随分手厚い!」
ハウロンが説明すると、ディーンが声を上げた。
「船乗りに過保護すぎじゃねぇ?」
「この中原にもやってるでしょ、風の勇者はすぐ願いを叶えちゃうタイプだったようね」
呆れたようなディーンにハウロンが返す。
中原には木々が極端に少なく、また続く戦火で踏み荒らされ、踏み固められ――通常であれば土地が痩せるのだろうが、風の精霊たちが昔の契約に従って、栄養豊かな黒い土を運んでくる。
「あー。中原の風の精霊たちが暴れ回るのも近いかも」
「えっ?」
ディーンが声を上げてこっちを見る。
いや、ディーンだけじゃなく全員が俺を見ている。
「風の勇者の精霊との契約が 歪 ( いびつ ) すぎだ。魔力の供給も途絶えてるし、眷属のトップもいないしで、内海の嵐も大爆発した結果みたい。契約の拘束力が減ってって、今ある制約の中でも楽しく遊ぼう! ストレス解消! が、内海の嵐の原因だったから」
「直接の契約者の勇者も風の精霊もいない。精霊たちの反動が来るのね?」
ハウロンが確認してくる。
「眷属の上の頼みというか、行動は真似するし、いい感じの魔力を貰えるなら、多少の無理も楽しいけど、どっちもないからね」
「なるほど、それでジーンは精霊と 遊んだ ( ・・・ ) のか。……寝袋争奪戦ってのは分かんねぇけど」
レッツェが言う。
「俺から寝袋を取れたら精霊の勝ちな、基本追っかけっこだ。ただ、気が逸れて陸地に行こうとする精霊たちを挑発する別ゲーム混じってたけど。寝袋なのは急いでてある程度目立つものが他が思いつかなかっただけ」
一晩頑張ったので褒めて欲しい。
「相変わらず世界の救い方が独特だなぁ」
酒を飲みながらディーン。
「……コロッケにも何か意味がございますか?」
執事が何か考えながら聞いてくる。
「ないです」
強いて言うならそういう文化が一部でちょっとあったのを見たんで、やってみたかったんです。