LNCrawler

第756話 振り分け

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第756話 振り分け

「中原での精霊の暴走。元が風の精霊の契約ということは、内海と同じ嵐の確率が高いのかしら」

ハウロンが眉間を押さえて言う。

「じゃないかな? ただ契約元がいないから、いつどの精霊が起点になって暴走しだすか予測つかないから。風の精霊方じゃなくって、連れてこられた土の精霊が爆発するかもだし。反動の暴走も、内海の嵐みたいに一気に激しいのがくればわかりやすいけど、やる気なくして徐々にダメになって、気づいたら人が住めなくなってるとかあるかもだし。さっぱりわかんないし、放置するよ」

俺が助けなきゃって決まってるわけじゃなし。

「中原は、傍目から見ても無茶が通っておりますね。反動が大きいというのも納得でございます」

「風の英雄の魔力が無駄に高かったのよね……」

ハウロンと執事。

「たまたま俺がいて、また嵐になったとして。精霊たちのガス抜き方法思い浮かばない。中原には小さな国が点在してるし、今回みたいに海の上に避けられない」

無理です。

あと単純に真ん中の国々で知ってる人いない。いい人なら見ず知らずの人々でも「助けるために!」とかなるんだろうけど、俺はいい人じゃないし。

「ま、なんかあったところで元々あっちから食料が入ってきてるわけじゃなし、こっちにゃ関係ねぇな。まず戦をやめて、自分たちで土地を荒らしまくってるの止めてからの話だ、付き合えねぇ。ジーン、飯くれ」

ディーンがバッサリ切る。

俺みたいに助けられない理由を色々言っちゃうこともなく、はっきりきっぱりさっぱりだ。ダメなものはダメ、切り替えも早い。

中原は豊かな土地のはずだけど、続く戦禍で土地が荒れて、輸出どころじゃない。収穫できてるのが不思議なくらい。その不思議の正体が肥沃な黒い土なんだけども。

中原の戦争ってざっくり3種類あって、1つ目はシュルムの侵略戦争。2つ目はそこそこ大きい国が「こういう理由で戦いますよ〜」って宣言して始める戦争。3つ目は小さな国が繰り返す略奪戦争。

1つ目は思い出した頃にやってきて、今もちょっかいかかってる状態。

2つ目は王様と周辺諸侯の力の差が大きくないから、大義名分おいとかないと戦いに参加してくれないパターン。戦いの理由付は様々だけど、

3つ目は国自体が血族単位とか、村みたいな少人数で、どっちかというと略奪の仕合なんだけども。農業の繁忙期はお互い戦をお休みして、収穫が終わったら収穫物を略奪しにいくパターンが多い。

これが偉い人だけが戦いたいっていうなら国民が可哀そう! とかなるんだけど、規模が規模なんで、体力ある者は全員参加! 略奪いくぞ、おー! みたいな戦なんだよね。

戦争止めて、普通に作物作った方が絶対まんべんなくいきわたるのに、代々つづく応酬のせいで止められなくなってる。

「……あ、もしかして反動ってもうとっくに始まってて、中原で戦続きなのって、それが根底にあるんじゃ?」

人間がしょうもないってのもあるだろうけど。

「――風の勇者と風の精霊がいなくなって、連鎖するようにあっという間に中原全土に、いえ、黒い土の恩恵が濃い場所に戦禍が広がっているわね」

そう言って、また考え込むハウロン。

「中原の話は一旦置いておけ。状況は大体わかったが――南の海の精霊も、今回の気流の精霊も、オレの 居場所 ( くに ) からずれている。そちらの『王の枝』に振ったほうがいいのではないか?」

カーンが腕組みを解いてオレに言う。

「振るって?」

「……」

大きな手で自分の額を掴むカーン。

「ご主人、ご主人」

腰のフォルダーからエクス棒の声。

「何だ?」

取り出して、エクス棒の顔が見えるように。

執事が視線をあからさまに逸らした!

執事は『王の枝』にちょっとしたトラウマがあるのは知ってる、知ってるけどカーンはいいのか?

「この同胞が言ってるのは、ご主人が従えた精霊の振り分けじゃね?」

「振り分け? 何に?」

「どっちかの『王の枝』に振り分けられるぜ? 今は両方同等になってるけど、どっちの頼みを優先するかというか。まあ、どっちの眷属にするみたいなもんだな!」

わはははと笑うエクス棒。

「その分では、エスの神々を俺に振り分けたは、無意識だったか」

諦め顔のカーン。

それで事情聴取と、カーンの居場所の話が出たのか! 振り分け聞いたことがあるようなないような……。

「普通は『王の枝』2本も持ってねぇしな」

レッツェがこっちを見ないままボソリと呟く。

「普通は『王の枝』を持ってらっしゃいません……」

小声で重ねる執事。

「えーと。じゃあ、カーンの領土にいる精霊はカーンで、他はエクス棒でいい? カーンは王様業もやってるし、忙しいだろうから」

「おう! いいぜ」

「……承知した」

と言うことになった。

実はそれで何が変わるかイマイチわかってないんだけどね! なんかこう、色々働いてもらうのを強制してるなら、枝の条件発動するのはわかるんだけど。

この場合、なんか快適とカーンが王様として輝いてるとか何だろうか。とりあえず後でウサギ穴突きに行こう。

事情聴取はこれにて完了!