LNCrawler

第759話 ずれの修正

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第759話 ずれの修正

「あっちっ!」

ディノッソがクリームコロッケの罠にかかっている。

カニクリームコロッケ、一回出したことあるんだけど。隣にエビフライがあるからかな?

カニクリームコロッケは中身の粘度が高いので、エビフライと似たような温度を想像していると、かなり熱いし危険。

「俺は菓子の相談で呼ばれたのか? 正直役に立てる気がしないぞ」

ディノッソが俺の視線に気付いたのか、ワインで口の中を流しながら聞いてくる。

「ジーンの相談とは別よ。中原に起こっているかもしれない風の精霊たちの反動について意見を聞きたいの」

「色々絡んで規模が大きくなりそうな話だな。俺、現在進行形の長年の怨讐とか苦手よ?」

ハウロンに肩をすくめて見せるディノッソ。

「とりあえず後で話だけ、ね。急ぎじゃないし、介入すべきかもわからないものだもの」

「消化悪くなりそうだ」

げんなりしながら笑うという器用なことをするディノッソ。

「長くなりそうな話はひとまずおいて、ジーンの方を解決しようか! 絶対その方がいい気がするよ!」

クリスが腕を広げて、星の飛びそうなウィンク一つ。

クリスはよく腕を広げたり振るから、袖口のフリルが映える。

「何でマリナ? あんま山の向こうのことはぴんとこねぇが、クリスの像があるのはタリアだよな?」

肉を切り分けながらレッツェ。

「儲かるのかもしれないけれど、広げすぎるとソレイユ嬢が倒れるわよ」

パンに手を伸ばしながらハウロン。

ハウロン、タルタルソースはエビフライ用なんです。パンにつけるパテじゃないんです。いいんだけども。

「ナルアディードにマリナの『王の枝』から分かれた『麦の穂』っていう『精霊の枝』がいるんだけど知ってる?」

問いかけて、俺も肉を口の放り込む。

「知ってるわよ。本物の『精霊の枝』なんて、滅多に見られるものじゃない……なかったのだもの」

最後、一瞬固まって言い直すハウロン。

「一般に広く公開されていますし、本に記された絵姿もよく見ますな」

アッシュにワインを注ぎながら執事。

「有名なんだ? 観光客も多いもんね」

シュルムも確か『精霊の枝』を公開してたけど、公開日は限定されてて、お布施も山ほどいるような話を聞いたことがある。

パスツールは確か、『精霊の枝』があるところは峻険な山の上で、『精霊の枝』の公開非公開というよりも、まずよそ者が受け入れられないみたい。

なお、どこも『王の枝』のほうは大事にしまいこまれて、王の交代とか特別な時にしか出さない模様。

『王の枝』を持っているのは姉のいるシュルムトゥス、パスツール、マリナ。島国イスウェールは噂のみで、『精霊の枝』の存在も確認されていない。

まあ、イスウェールは国土全部『王の枝』の影響範囲に楽々入るだろうけど。『精霊の枝』は『王の枝』の影響力の中継地兼増幅装置みたいなものだし。広さじゃなく、関係してくるのは精霊の移動範囲というか交流範囲だけど。

「ジーンは『麦の穂』と交流があるのだな?」

アッシュがナイフとフォークを止め、聞いてくる。

「うん」

「俺よくわかんねぇんだけど、別の『王の枝』の持ち主って、人んちの『精霊の枝』と交流していいのか?」

ディーンが聞いてくる。

「フレンドリーだし、のんびりしていい枝だぞ? ダメなの?」

交流するとエクス棒の影響があるとか、カーンの影響があるとかあるんだろうか?

うちの棒は人んちの誓約と相反するような性質あったかな? あ、カーンは王様固定だから、王の血筋についてとか王様関係の願いが入ってたら影響あるのか??

「答えに困るわ」

額を押さえるハウロン。

「大賢者頑張って! 答え知りたい」

「当事者が丸投げしないでちょうだい!」

応援したらハウロンにキレられた。

「魔力を渡したり、眷属にするような真似をせねば大丈夫だ」

黙っていたカーンから答えが来た。

「なるほど、ありがとう」

魔力渡すと影響出ちゃうのか。

「で? 『麦の穂』になにか頼まれたのか?」

話を戻してくれるレッツェ。

「頼まれたというか、自分の存在が微妙だっていうから、消えたり反転したりする前に、あるべき姿に戻しといた方がいいかなって」

「ぶぼっ!」

ディノッソがワインを吹き出す。

「え、ちょっと。ナルアディードって商業の神と海の神よね!? そこにある『精霊の枝』も当然その系統でしょう! 何でよ!」

椅子を蹴って、慌て始めるハウロン。

ナルアディードは交易が盛ん、海運で商売繁盛。商業の神と海の神、当然『精霊の枝』もその系統、『海運で商売繁盛』することによって精霊の枝』も力を増して、ナルアディードは安泰! っていう思考かな?

「それがちょっとズレてる。『小麦で商売繁盛』が正しいっぽいぞ」

ハウロン元気だなあと思いつつ、食べ終えたアッシュにデザートを出す俺。

「何でそんなことがわか――『精霊の枝』に聞いたのね」

ハウロン着席。