LNCrawler

第760話 方針決定

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第760話 方針決定

「うん」

ハウロンに頷く俺。

今日のデザートはコロネがメイン。アールグレークリームを詰めたものと、カスタードと生クリームにイチゴをあしらったもの。半分にカットしたイチジク、リンゴのシナモン煮、バニラアイスを皿に追加。

上にイチゴが飾ってない方に、生クリームを足して薄いチョコレートをブッ刺したオシャレ仕様です。

「あら、可愛いわね」

気を取り直したハウロン。

アッシュのためのオシャレ仕様なんだけど、ハウロンが先に釣れた。いや、アッシュもじっと皿を見て、背景に小さな花を飛ばしてそうな顔はしている。

……寡黙!

アッシュは人を褒める時はしゃべるんだけど、自分のこととか感情を口にすることが少ないんだよね。そして表情もあまりないか怖い顔に見える。

最近ようやく嬉しそうな顔との見分けがついてきたよ!

「こちらのクリームは何を?」

「アールグレイっていう紅茶を混ぜてる」

執事に答える。

「家にももらっていいか? 急に出てきたから機嫌取っとかないとな」

「はいはい、外側サクッとがいいと思うんで、帰る時に出すよ」

ディノッソに答える。

機嫌取りって言ってるけど、ディノッソは美味しいものを家族にも食べさせたい、お父さんで、旦那さん。

「この菓子に慣れちまったんだよなぁ」

レッツェ。

そう言いつつ、炒った豆とか素朴なものを好むのを知っている。「美味かねぇけど、口に合う」のだそうだ。

ディーンとクリスは何でも美味しく食べてくれるけど、俺の出す肉と惣菜の方が好きかな?

カーンもちゃんと食べてます。食べてるの甘いものなのに妙に格好いいのは反則だと思う。これがモテ男……!

「……中原は、いっちゃなんだけれども……ずっと争いが常態化しているから、今更周辺に大きな影響はないわ。でもナルアディードは……」

コロネを食べ終えたハウロンが話を戻す。

「交易であちこちとかかわってるもんね」

南はエスから北の民まで。

風の勇者の時代に帆船がたくさん作られたことも大きいけど、中原との間には山脈あるし、山越えしても中原は戦争中だしで陸路がどうしようもない。ちなみに山脈の西は魔の森になっちゃうんでこっちも却下。

ナルアディードを中継に海路が安定している。中原の川は日本みたいな高低差がほぼなくて川幅も広い、川船に積み替えて大分内陸まで――東の端は城塞都市まで行けるしね。

「風の勇者の現れる前は、エスへ交易のために年に2回の護送付きの大船団を組んでいたのよね。その頃はアミジンとは小競り合いを繰り返していて、内海に面した国々でも陸路は取れなくて。――ドラゴンの庇護がない海は、船団の中の数隻が戻ってくればいい方だったわ」

ハウロンが言う。

「その頃の、希少なものを特権階級が高額で取引する時代は終わって、今はもっと生活に根ざしたものが取引の中心になってる。たとえ『王の枝』がある国だって、滅びることはわかっているけど、今マリナに――ナルアディードに崩壊されたら影響が大きすぎるわ」

頭が痛そうに続けるハウロン。

「そう、困るんですよ。なのでぜひ初心に戻ってもらいたい」

国への影響とか正直どうでもいい俺ですが、麦の穂とナルアディードにはそのままでいてほしい俺です。顔見知りもいるし、『青の精霊島』で欲しいものすぐに手に入るし。

「シュルムトゥスとクラレッツが海運に参加するようになって、一時的に落ち込んだが、内海が安全に航海できるようになって持ち直したと聞いたことがあるな。あん時、なんもなければ今みたいに依存しなかったかもな」

白い歯を見せてコロネをぱりっとやるディノッソ。

「風の勇者は後年、シュルムトゥスからは離れたと認識しております。シュルムトゥス一強になることを良しとしなかったのかもしれませんな」

顎を撫でながら執事。

「香辛料や絹などの高級品の貿易は今の彼らの経済にとって不可欠だけれど、大昔は小麦をメインにしていたはずだよ。何せナルアディードの紋章は『麦の穂をくわえたシギ』だからね」

ウィンクして見せるクリス。

シギはエスから北の大地まで長距離を移動する渡り鳥。なるほど、荷物は小麦のシギの宅配便。

「相手があることなんだ、マリナに言えばいいんじゃねぇの? とりあえず内海の商売のことじゃ、ソレイユ嬢だっけ? ――もう話してるか?」

レッツェが俺に視線を向けてくる。

「うん、頭抱えてた」

叫んでもいた。

「ナルアディードの両ギルドに顔がきくんだもの、マリナへ顔つなぎはアタシよりソレイユ嬢の方が強いわね」

納得した顔で頬杖をつくハウロン。

「今の海運ギルドの長はマリナの王弟、商業ギルドの長は公爵家と繋がりが深いのでしたか」

ハウロンと執事。

「え、あの腰痛持ちの2人が?」

まさかの中枢関係者。

自治じゃなかったっけ? いや、儲かってるんだからそうなるか。自治だけど、上の方は血族で固めて、利権は確保みたいな。他の国の商館も多いし、自治としておいた方が商売やりやすいんだろう。

「腰痛持ち」

「随分プライベートなことまで知っているのだね」

ディーンとクリス。

「気のせいか、ジーンの方が顔がききそう」

ディノッソ。

腰痛軽減の翡翠のアイテムは、ソレイユ経由の贈り物だからソレイユだよ!

「ソレイユ嬢なら早速動いていると思うわ。もしマリナの王宮での説明になったら、箔付けにアタシもついていく感じでどうかしら?」

「お願いします」

ハウロンの提案に頷く俺。

そういうことになりました。