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第766話 白イタチくん

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第766話 白イタチくん

『何歳だったんだ? その男の子』

『確かね、アリーナの1つ上だよ』

アリーナ何歳だっけ?

この世界の子供はしっかりしてるし逞しいな……。

そしてイタチがもう一匹いるのか。

『茶色い子って白イタチ君と同じ形の子?』

茶色い子ってまさかネコ船長のことじゃないよね? イタチだよね?

『茶色い子はね、日向の土手の子』

『日向の土手の子……?』

「作業するには少し明るすぎますかね?」

白イタチとオルランド君の会話が交錯する!

「日除け(シェード)作ってもらおうか?」

「観光客の方々の視界に入るかもしれませんし、青い布で。おかげさまで『精霊の枝』は十分予算がありますので、自分が手配します」

『ナルアディードはね、土手がとても少ないの』

『うん』

『だからね、僕と同じくらいくらいだよ』

居場所というか、日向の土手の精霊なのか! 茶色イタチ!

『僕はね、アリーナと一緒に育ってるの』

『そうなの?』

『アリーナのお母さんの願いの精霊なんだよ』

『お母さんの』

『アリーナのお母さんだけじゃないけど。たまたま?』

『たまたま?』

なんだろう?

似た願いを持ったお母さんが何人かいて、白イタチが『こまかいの』から、形をとったのがたまたまアリーナのお母さんの願いの時だったとか?

『アリーナがもっと小さい頃ね。よく眠って、健康でって』

『寝る子は育つ?』

『他にもいっぱい願ってたみたいだけどね。強い願いがそれ』

『よく眠れって珍しいね?』

健康で無事育ってほしいとか、幸せでいてほしいとか、笑っていてほしいとか――その辺が子に願うには多いんじゃないかと思うんだけど。

『アリーナはね、小さいころ眠い時には寝ればいいって分からなかったの』

『うん?』

『アリーナが夜に泣くとね、お母さんも寝られなかったの』

夜泣きか! 寝ぐずりか!

アリーナのための願いというか、アリーナに対する切実な願いだった!

「んっん。テス君はどう?」

うっかり口に出してツッコミそうになり、誤魔化してオルランド君に質問する。

「テスは魔力が少ないし、強くもありませんが丁寧な抜けのない作業をします。自分もパウロル様に言われたことですが、変わらず安定して何かを続けられるということも得難いことだと」

オルランド君が言う。

「うん、俺もそう思う。善良で、どんな状況でも『この人ならこうするだろう』ってことをしてくれる人はとても貴重だよ。コツコツ日々を積み上げてる人の方がすごいと思う」

テス君、性別に関わらず『精霊の蕾』にはなれそうにないけど、オルランド君やパウロルおじいちゃんが見ていてくれてよかった。

オルランド君は、俺がパウロルおじいちゃんじゃなくって、オルランド君がこの島に欲しくって誘ったって言ったら驚くだろうか。

驚くべき時に驚いてくれるのって、とても『安定』していると思うし、基準だよね。基準が歪んでいたら、それと比べてとった行動や言葉も歪んでしまう。

いろいろやらかしてる俺が言っても信じてくれなさそうだし、パウロル様に失礼です! って言われそうだし、オルランド君が尊敬しているパウロルおじいちゃんが認めているから、このまま黙ってるけど。

なお、白イタチの精霊は、アリーナが癒しを使うと疲れて眠くなるそうです。常時眠いみたいだけど、起きていられなくなるんだって。

以前アリーナ会った時、白イタチ君が眠かったのは商売の結果が心配で、心労があったお父さんを少しだけ癒したからだそうだ。

白イタチ君の力をアリーナがまるまる使えるわけじゃないし、本当にほんのな感じのようだ。でも赤ちゃんを眠らせるには良さそうという印象。

もしかしなくてもとてもとても需要があるんじゃないだろうか。

茶色イタチのこともあるし、無事好きな男の子が帰ってくるといいな。恋愛系ポンコtずの自覚あるから介入しないけど!

一通り確認して、ハウロンとディノッソにマリナの王様が来る日程を伝えに行く。

――その前にお菓子作りの日を挟む。

シヴァや子供達からお父さんを借りるからね! 家族もナルアディードの観光に誘おうか。ディノッソが働いてくれてる間に、俺が案内してもいいし。

いや、ナルアディードの観光って、運河通ってそぞろ歩いて、買い物を楽しむ感じだから、案内はいらないか。

事前に欲しいもの聞いて、いい店があれば紹介くらい?

そう思いつつタルトを作る。

ディノッソ家に渡す分だけじゃなく、たくさん作って【収納】に入れておくつもりだ。