第773話 英雄像
第773話 英雄像
一通りトマトソース作りを見学し、この村の『精霊の枝』へ。
「え、ここの林ってもしかして全部囲ってあんの?」
ディノッソが驚く。
『精霊の枝』の裏にある雑木林は、鉄柵で囲んである。夜中に俺が地面に突き刺して作りました。
鉄の棒自体は地の民作で、多分バレたらソレイユが倒れる。大丈夫、魔の森にある家の家具と同系統の、「素朴な」やつです。
「雑木林が熱波で枯れちゃったとこも多くて、薪の確保に忍び込む他の村の人とか出たんで、安全のために。クリスの像が『精霊の枝』にあるし」
「ああ、ここにあることはわかってるんだし、黄金像を盗みにくるやつもいるよな。でも林を囲むのすごくないか?」
「うん、そっちもいるね。林を囲んでるのは、クリスの像が泥棒を許さないからだけど」
追いかけ回して斬りつけます。
「……」
ディノッソが黙る。
「薪泥棒もクリス像――精霊金泥棒も同じ対応で、流石に枯れ枝ひと枝で半死半生はどうかなって思って。簡単に出入りできる状態だと、魔が差すこともあるだろうし」
鉄柵越えて入ってくるなら、それは硬い意志で泥棒に来たってことで、同じ扱いでもいいかって。クリスの像に憑いてる精霊たちに判別してもらうの難しいんですよ!
どうしても薪が欲しいなら、泥棒する前に頼みにくればいいと思います。
「すごい、ここだけ花が」
シヴァが周囲を見回して呟く。
「綺麗! カヌムの『精霊の枝』より綺麗!」
喜ぶティナ。
『精霊の枝』に枝は置いてないんだけど、雑木林に雨を降らせてくれる精霊もいるし、木陰の精霊もいるし、吹き渡る風の精霊も、緑の精霊もいる。
周辺だって直射日光の精霊とか、肌を焼く精霊とか、土埃の精霊とかたくさんいるんだけど、『精霊の枝』には人間の暮らしに優しい精霊が集う。
ここの『精霊の枝』に水の流れはなく、水盆は朝晩住民が水を換えてくれている。で、その辺に普通はレプリカがあるんだけど、ここは一応建物を建てた。
四方に俺の腰のあたりまでの壁。入っちゃいけないことがわかって、それでクリスの黄金像がよく見える仕様だ。
クリス像がお出かけするにも便利なオープン具合。
「クリス兄ちゃん!」
「クリス兄ちゃんだ!」
「クリス兄さん!?」
子供達が黄金像を見て目を丸くしてる。
クリスは面倒見がいいいんで、子供たちが懐いている。ディーンもだけど、まめに気にかけて子供たちに構ってるのはクリスの方だ。
「そっくりだー!」
「ジーンが作ったの?」
「本当に動き出しそう」
ティナの言葉にクリスの黄金像が手を振る。
「……わぁ」
声を漏らしたディノッソの顔が固まっている。
「精霊金は精霊が動かしやすいから」
だからこんなに綺麗にクリスの形になったわけで。
「魔力を通すと加工がしやすくなる話は聞くけれど、これは一般的ではないわよ。間違って覚えないでね?」
シヴァが子供たちに言う。
一般的じゃなかった!
こうして精霊金でできたクリス像見学会は終了した。
お土産はトマトソースです。