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第二百六十二話 俺の騎士

最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い~帝位に興味ないですが、死ぬのは嫌なので弟を皇帝にしようと思います~ — ncode.syosetu.com · All chapters

第二百六十二話 俺の騎士

12時更新分。

たぶん夜の更新あたりでキャラデザインを公開すると思いますm(__)m

「これほど早く帰ってくるとは想像していなかった」

竜に跨り、レオの前に出てきたウィリアムはそう正直に告げた。

その顔は計画が完全に瓦解したというのに、どこか晴れやかだった。

「ウィリアム王子。悪いことは言いません。即時降伏を」

「すでに勝った気でいるのか……我が竜騎士団はいまだ健在! アルノルト皇子の持つ虹天玉を奪い、再度天球を展開すればまだまだ戦える! 勇者といえど二度は聖剣は使えまい!!」

「僕らと戦っている間に父上は安全圏に離脱します。あなた方に勝利はない」

「今はそうかもしれん! だが帝都を確保しておけば本国と連携して戦える! 勝者とは……最後に立っていた者のことだ! 我が国の勝利のため……足掻かせてもらうぞ!!」

そう言ってウィリアムはレオに突撃してくる。

俺たちが乗っている以上、レオは高速での空中戦は行えない。

しかし、そんなレオとウィリアムの間に白いグリフォンが割って入ってきた。

「させません!」

「聖女レティシア……!」

ウィリアムは自分の一撃を防がれたため、一度距離を取る。

レティシアはレオを庇うように前に出ると、杖を構えた。

「無事だったことを嬉しく思いますよ。聖女レティシア」

「あなたに無事を祝われるとは思いませんでした。ウィリアム王子」

「ええ、そうでしょう。あなたを罠にはめるのに、我が連合王国も協力している。誰もがあなたの死を願ったはずだ。だが……それでは負けを認めたことになる。我が連合王国はあなたを倒すことができぬから、汚い奸計に頼った。しかし、あなたが死ねば一生証明できなくなる。我が竜騎士団は王国の鷲獅子騎士団より上なのだと。失った信頼も取り戻せなくなる。成功してしまえば、竜騎士団よりも奸計が重んじられる。自分を納得させたつもりだったが、あなたがここに現れて私はホッとしている」

「そう思うならば降伏し、今すぐ過ちを正すべきです。この反乱に大義はありません。関われば連合王国の名誉を汚すことになります」

「そのような議論はすでに飽きるほどなされた。我が連合王国は名誉よりも領土が欲しいのだ。王族である以上、国の方針には従わねばならん。すべてはもっと早くあなたを討つことができなかった、私の弱さが原因なのだから」

そう言ってウィリアムは槍を構えた。

きっと次は総出で掛かってくるだろう。

チラリと周りを見渡せばほかの鷲獅子騎士たちも駆けつけてきていた。数は竜騎士には劣るが、そもそもグリフォンのほうが飛竜よりも強く、優れている。飛竜が勝っているのは繁殖力と調教のしやすさくらいだろう。

まぁ軍事利用するなら飛竜のほうが優れているといえるが、質で劣る部分を量で補う戦法を取らざるをえない。

だが、この程度の数の差なら鷲獅子騎士たちは逆転できる。

ただ気になるのはレティシアの姿。どう見ても疲れている。

誘拐され、すぐに取って返してきたわけだし仕方ないことかもしれない。

「レオ……お二人を連れて安全な場所へ。私たちが時間を稼ぎます」

「レティシア……」

レオがレティシアを心配そうに見つめる。

そんな二人のやり取りに俺は苦笑する。

「護衛はいらん。俺とクリスタはゆっくりと父上のところへ向かうさ」

「え?」

「レオ、レティシアを守れ。今の彼女に竜王子の相手は重い」

「侮らないでください。私は大丈夫です。お気になさらず」

「そういうわけにはいかんさ。大事な新しい義妹だからな」

「なっ!? 私の方が年上です!!」

「残念だったな。俺はレオの兄貴なんだ」

そう言うと俺はフッと笑って、その場で立ち上がる。

レティシアは顔を真っ赤にして自分のほうが年上だとアピールしてくるが、俺はそれを丁寧に無視する。

そして。

「レオ、レティシアを守れ。一度守ると言ったなら、何を差し置いても守るんだ。男の守るという言葉はそこまで軽くはないからな」

「兄さん……」

「安心しろ。俺には俺の騎士がいる」

そう言うと俺はピョンとレオのグリフォンから飛び降りる。

さきほどほどの高さはないが、落ちればまず命はない高さだ。

そんな俺に向かって三騎の竜騎士が降下して、襲撃をかけようとしてくる。

だが。

「任せた――エルナ!」

俺たちに接近していた竜騎士たちは一瞬で吹き飛ばされて、城へめり込む。

そして俺とクリスタの体を風の魔法が包み込み、ゆっくりと着地させてくれた。

「今回はあんまり楽しくない……高さが足りない」

「はっはっはっ!! じゃあ次はもうちょっと高いところから飛ぶとしよう」

そう言って俺はクリスタの頭をポンポンと叩く。

すると俺の後ろで誰かが着地する音が聞こえてきた。

それだけで誰かわかる。

「ご苦労、騎士エルナ」

「遅参をお許しください、殿下。近衛第三騎士隊、殿下の下に馳せ参じました」

エルナがそう言った瞬間。

エルナの部下が続々と俺の周りに着地した。

全員がやる気満々。頼もしいかぎりだ。

そんな風に思っていると、ゴードンが拡声の魔道具ですべての兵士に指示を出した。

『帝都にいるすべての兵士に告げる! 第七皇子アルノルトを捕らえろ! 生死は問わん! 奴の持つ三つの虹天玉を奪え!! 成し遂げた者には望むままの報酬をやろう! 出涸らし皇子を捕らえるのだ!!』

「おー、怖い怖い。ガチギレだな」

「大丈夫よ……アルのことはみんなで守るから」

「ああ、頼りにしてるよ」

そんな風にエルナと喋っていると城から続々と兵士が出てきた。

動かせる戦力をすべて使う気か。

俺一人にご苦労なことだ。

「中々に数が多いですな。指がいくつあっても足りません」

「雑兵なんて数に入らないわ。疲れたなら寝ててもいいわよ? マルク」

「ご冗談を。ここで寝たら踏みつぶされてしまいますよ」

エルナの部下であるマルクが肩をすくませる。

そんなやり取りに俺が笑うと、マルクが剣を抜いた。

「あなたを助けるのは幾度目でしょうか?」

「さぁな。助けられすぎて覚えてない」

「ではこれからは数えるようにしてください」

「無理だな。指がいくつあっても足りん」

マルクの言葉を借りて俺はそう返す。

そんなに助けられる気なのかとマルクが軽くため息を吐く。

「困った方だ。本当に」

「諦めなさい。アルはそういう人間だから」

そう言うとエルナはゆっくりと剣を高く掲げた。

そして魔法を使って、自らの声を帝都中に響かせる。

「帝都にいる騎士よ、兵士よ。私、エルナ・フォン・アムスベルグの声を聴きなさい。よくここまで持ちこたえたわ。よくこの都を守った。あなたたちの流した汗と血はすべて称賛に値する。それでもあなたたちに休みは与えられない。陛下に捧げた剣に託した誇りが、軍服に袖を通したときの誇りが……まだ残っているなら奮い立ちなさい! 守るべき殿下が陛下の下へ向かう! 守りなさい! 誇りにかけて! 今、帝国を守る者の真価が試されている!! 辛く、もう駄目だと思うなら思い出しなさい!! 帝国を守るすべての者の背中には――アムスベルグがついている!!!!」

それは檄だった。

疲弊した騎士や兵士たちを奮い立たせる勇気の言葉。

まだやれるのだと思わせる魔法の言葉。

次の瞬間、帝都中から歓声が上がった。

アムスベルグがついている。それは帝国に住むすべての人にとって、もう大丈夫だという知らせに等しいからだ。

「走って、アル。みんながあなたを守るから」

「ああ、助かるよ。お前も気をつけろよ? 聖剣使って疲れてるだろ?」

「愚問ね。私は絶好調よ。今なら誰が来ても負けないわ、だから後ろは気にせず走って。城からの兵士は誰も通さないわ!」

そう言ってエルナは城から溢れるように出てきた兵士たちに突撃する。

エルナと正面衝突した兵士たちがどんどん吹き飛ばされていく。

「確かに絶好調みたいだな」

「エルナ強い! 安心!」

「そうだな。じゃあ言われたとおり後ろは気にせず行くとするか。走れるか? クリスタ」

「大丈夫……!」

クリスタの返事を聞き、俺はクリスタの手を握って走り出す。

こうして俺とクリスタの帝都縦断が始まったのだった。