LNCrawler

第二百七十五話 似た者同士

最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い~帝位に興味ないですが、死ぬのは嫌なので弟を皇帝にしようと思います~ — ncode.syosetu.com · All chapters

第二百七十五話 似た者同士

終わったー(/・ω・)/

反乱軍が撤退する中で最後まで戦っている二人がいた。

「そろそろ潮時かな」

「殺される覚悟ができたってことでいいかしら?」

そう言ってエルナは近衛第十騎士隊長のラファエルを見据えた。

エルナに傷はない。しかし、ラファエルには小さな傷がいくつもあった。

それが二人の差といえた。細かい部分でエルナはラファエルをすべて上回っていたのだ。

しかし。

「いや、僕はまだ死にたくないから、そんな覚悟はしたくないな」

「そんな勝手が許されると思っているの? 近衛騎士隊長の身分にありながら陛下を裏切ったあなたを誰も許さないわ。すべての近衛騎士隊長があなたを狙うわよ?」

「楽しみだなぁ。近衛騎士隊長だと同僚とは戦えないから」

「それが裏切った理由? そんな理由で裏切ったの?」

「半分くらいはそうだね。強い奴と戦いたい。剣士ならそう思うのは必然だ」

「そう……ならお望みどおり戦ってあげるわ。逃げるんじゃないわよ!」

エルナは闘気を全面に押し出す。

それにラファエルは後ろ髪を引かれたが、興味を断った。

「君と全力で戦うのは楽しみだけど、僕はアリーダ団長と一戦交えて疲れてるし、君も聖剣を使って万全じゃない。勝負は預けるよ。これ以上戦ってると袋叩きに遭いかねないしね」

ラファエルはそう言うとエルナから大きく距離を取った。

しかし、その距離程度ならエルナにとってはあってないような距離だった。

ラファエルの懐に入ると、エルナはその首を飛ばしにかかる。

間一髪、ラファエルはエルナの剣を避けるが、首に新たな傷がついた。

「強いなぁ……さすがはアムスベルグ」

「ずいぶん余裕ね? 逃げられないって証明してあげたんだけど?」

「逃げるさ。僕はまだ死ねないし、やることがあるからね」

そう言ってラファエルは再度距離を取った。

今度は距離を取っただけではない。

周囲に控えていた多くの暗殺者がラファエルの撤退を助けるために、エルナに攻撃を仕掛けた。

そうやって周りの助けを借りながら、ラファエルは城でもアリーダと戦っていた。

一対一での戦いがラファエルの望みだったが、それ以上に目的を優先しなければいけなかったからだ。

今もまた、死力を尽くすことは許されてはいない。

だからこそラファエルは逃げに徹した。

それに対して、エルナは攻撃してくる暗殺者を瞬殺しながら、ラファエルを追撃する。

しかし、いくらエルナといえど、ラファエルほどの実力者が本気で逃げている中で妨害を受けては追いつけない。

帝都の外周に入ったところでエルナはラファエルを見失うことになった。その周囲には決死の足止めをした暗殺者たちの死体が転がっていた。

「謎が多いわね……」

裏切った近衛騎士隊長に、謎の暗殺者たち。

そもそもゴードンとザンドラが協力したからといって、ここまで好き勝手やられるはずはない。

なにか裏がある。

そう感じつつも、エルナは剣を鞘にしまった。

それを考えるのは自分の仕事ではないからだ。

「アルは無事かしら……」

姿の見えない幼馴染を心配しつつ、エルナは帝都の残敵掃討に移ったのだった。

■■■

冒険者ギルドの近くの路地裏。

そこにエリクは立っていた。

「殿下」

「首尾はどうだ?」

「殿下のご指示どおりに動いています」

「そうか。母上のほうはどうだ?」

「適度に兵を向かわせました。疑われることはないかと」

そんなエリクの後ろ。

光の当たらぬ影から声が聞こえてくる。

影の中。そこにいたのはシャオメイだった。

「よくやった。色々と予定は狂ったが、ゴードンの敗走も想定していなかったわけではない。レオナルトとアルノルトが活躍しすぎではあるが、それも誤差の範囲だろう」

「はい。では、私は〝あの方〟と共に行動します」

「頼んだ。情報は逐一私に流せ」

「かしこまりました」

そう言ってシャオメイは影の中に消えていく。

それを見て、エリクは冒険者ギルドの中へと戻っていく。

帝都で何があろうと、この中は安全だとエリクは知っていた。

緊急事態ならば大陸中と連絡が取れ、手練れの冒険者が大勢集まる。

そして。

何かあればシルバーが動くだろうことは予想できた。

ゆえにエリクは自分の身を帝都支部に置き、そこを拠点として策謀を巡らせた。

「ご苦労、冒険者たち。いい働きだったぞ」

そう小声でエリクはつぶやく。

冒険者を動かした功績。そして皇国の大使を通じての情報操作。

決定的な仕事はした。最も少ない労力で、だ。

今回の結末はエリクの思い描いた結末とは違った。しかし、それは問題ではなかった。

結末が変わるならそれに合わせて動きなおすまでのこと。そうやってエリクはいつも自分が得をするように立ち回ってきた。

ザンドラは完全に脱落し、ゴードンも苦境に陥った。

ライバルと目された帝位候補者たちはもはや風前の灯。

新たに台頭したレオナルト陣営も、今回の反乱で総力を費やした。

「やはり爪を隠していたな? アルノルト」

隠してきた多くの手の内をさらけ出し、ようやく手柄をあげたレオナルトとアルノルト。

二人とは違い、エリクはまだほとんど手を見せていない。

また一つ、エリクが優位に立ったのだった。

■■■

帝都の東門。

一時、皇帝の拠点となったここの警備は手薄になっていた。

皇帝が帝都の外に出るとき、他国の要人たちを東門から引き離し、そちらに護衛の多くを割いたからだ。

彼らはミツバたちと合流し、帝都に身を潜めた。

ゆえに、この東門に襲撃が掛けられるとは警備についていた兵士たちは思わなかった。

「ふん、軟弱もいいところだな。そなたもそう思わないか? シャオメイ」

「まったくです。ゾフィーア様」

シャオメイはそう言って恭しく頭を下げた。

シャオメイの前にいるのは赤い髪の女性。

年は四十を超えているが、いまだに若々しく、鍛え上げられた肉体を持つ。

その手に持った剣には血痕がついていない。警備についていた兵士たちを斬ったにもかかわらずだ。それだけで相当な達人であることがうかがえた。

彼女の名前はゾフィーア。第四妃の地位にあった女性であり、ゴードンの実母でもある。

反乱開始から彼女はずっとその身を潜めていた。

そんな彼女がこの東門に来たのはもう一人の息子のためだった。

「捕まるとは情けない。この程度の警備なら一人で突破して見せたらどうだ? コンラート」

「これはこれは、母上。相変わらず無茶なことを言う人っすね。ここを守るのはリーゼロッテ姉上の部下っすよ? 突破できるわけないじゃないっすか」

「情けない。この程度の兵士を恐れるとは」

「妃にならなければ近衛騎士隊長になっていたと言われる母上と一緒にしないでほしいっす。それで出してくれるんっすか?」

そんなコンラートの言葉を受け、シャオメイはコンラートが閉じ込められた部屋を開ける。

やっと出られるとばかりにコンラートは一つ伸びをするが、そんなコンラートに声をかける者がいた。

「ぼ、僕も連れていってください!」

そう言ったのはヘンリックだった。

すでに帝都の状況は護衛のやり取りから大体想像できた。

ザンドラは反乱に加わり、失敗した。その弟であるヘンリックもこのままでは罪は免れない。

ならばコンラートについていこう。そうヘンリックは思ったのだ。

しかし。

「ふん、ズーザンの息子か。あの女狐の息子らしく、卑怯で恥知らずだな。助かるためなら我々にも縋ると? そんな軟弱者はいらん」

「ま、待ってください! 必ず役に立ちます!」

「そなたに何の力がある? 姉の権威以外に自慢できるものがあるというなら見せてみろ」

「そ、それは……」

ヘンリックはゾフィーアの言葉に狼狽する。

ヘンリックは平均的な男子からすれば優秀だった。しかし、皇族の中ではそこまで飛びぬけて優秀というわけではない。

だからこそ、ザンドラの権威に頼っていた。

それがなくなった今、自分には何があるのか。

ヘンリック自身にもわからなかった。

答えられずに下を向くヘンリックを見て、ゾフィーアは鼻を鳴らして話を進める。

「行くぞ、コンラート。シャオメイ、そこの役立たずは始末しておけ」

「あー、ヘンリックを置いていくっすか?」

「無論だ。どんな役に立つというんだ?」

「役に立つかはわからないっすけど、置いていくのは忍びないっす。なので、オレもここに残るっす」

「なにぃ?」

ゾフィーアはコンラートの言葉を受けて、立ち止まる。

そしてコンラートを強く睨んだ。

「正気か?」

「正気っすよ。ヘンリックとは閉じ込められた仲であり、母は違えど弟っす。見捨ててはいけないっす」

「コンラート兄上……」

ヘンリックが感極まって涙を見せる。

そんな様子を見て、シャオメイが仲裁に乗り出した。

「時間がありません。ヘンリック殿下もお連れしましょう」

「……コンラート。責任は持つのだな?」

「もちろんっす」

「……ならついてこい」

そう言ってゾフィーアは背を向ける。

それを見てコンラートはにんまりと笑ってヘンリックに手を差し伸べた。

「許可が出たっすよ。ヘンリック」

「ありがとうございます! ありがとうございます! このヘンリック! 必ずや恩義に報います!!」

「いいっすよ。そういうのは」

そう言ってコンラートはヘンリックに背を向けて、先に部屋を出た。

その顔に浮かぶ笑みを見て、シャオメイは悪い人だと心の中で呟く。

軽薄そうな見た目のコンラートの顔に浮かんでいたのは、底知れぬ悪だくみの笑みだった。

その笑みはどこかアルの笑みに似ていたのだった。

はい! というわけで第七部はここで終わりとなります!

ここまでお付き合いくださった皆様、ありがとうございます!!(^^)!

今回は短くなる予定だったのに、長引いてしまいました。短くする才能が欲しい……。

けど終盤の二回更新は頑張った! 長引いても二回更新で更新増やせばいいやって思うから駄目なんですよね笑 気を付けます。

さて、いつものことですが、第八部開始までは期間が空きます。その間に書籍化作業とかやるのでご了承くださいm(__)m

しかしご安心ください! その間の出涸らし成分として1月1日に第二巻が発売されます! といってももう発売している場所もあるみたいですが( ´艸`)

また、ヤングエースUP様にて、出涸らし皇子のコミカライズが始まっており、すでに第零話が公開されています。そして1月1日には第一話が公開されます!!(*'ω'*)

年末年始は出涸らし皇子の第二巻とコミカライズで過ごすというのはどうでしょうか?(`・ω・´)ゞ

では皆さん、ここまで出涸らし皇子を読んでくださいましてありがとうございます!

今年の二月から連載を始めて、ここまで続いているのも読者の皆さんのおかげです!

また来年もよろしくお願いします!

よいお年を!(・ω・)ノ