第四百六十一話 四者会談
第四百六十一話 四者会談
若干、熱がある中で書いたので、書き直す可能性があります。ご了承ください
一通りの挨拶回りを終わらせ、城に戻って母上たちと食事を取り、俺は再度玉座の間にいた。
集まっているのは四人。
皇帝、宰相、そして勇爵。
俺だけ場違いではあるが、この四人には共通の企みがあった。
皇太子の死の調査だ。
「さて、詳しいことを聞こうか」
父上がそう切り出した。
なぜかというと。
俺は大々的に皇太子の死を調査したが、何も情報を得ることができなかった。
「藩国側からしっかりと調査しましたが、これといって怪しい点はありませんでした。計画性も皆無。当時、藩国は貴族の暴走と釈明しましたが、その通りでした。国境付近の貴族が皇太子の視察を聞きつけ、その首を狙った。それが調査の結論となりますね」
「困ったことになりましたね」
俺に調査を直接依頼した勇爵がそう呟く。
本来ならこの調査で俺に注意を集めるはずだった。
だが、俺は何も見つけられなかった。
それでは意味がない。
「大々的な調査をしても、誰も動かなかった。それは調べられて困ることはないということでは?」
「皇太子の死が、本当にただの流れ矢だったと? あのヴィルヘルムが流れ矢程度にやられたと?」
「状況証拠がそう示しています」
父上の言葉にフランツは答える。
心情を抜きにすれば、そう判断するしかない。
だが。
「一応、辺境の貴族たちも取り調べましたが、有益な情報はありませんでした。もう四年前のことですから、証拠らしい証拠もありません」
「今更調べても遅かったという可能性もあるわけか……」
勇爵が顎に手を当てて考え込む。
思惑が外れた形になった。
しかし、悪い誤算もあれば良い誤算もある。
「とはいえ、エリク殿下に動きはありません。レオナルト殿下とアルノルト殿下が別れて、各個撃破のチャンスでしたが、何もしなかった。この一年、エリク殿下を監視しましたが、怪しい動きはどこにもありませんでした。ザンドラ殿下、ゴードン殿下のように影響は受けていないのではないでしょうか?」
「そういう可能性もあるだろうが、そうでない可能性もある。疑いが晴れるわけではない。もしも妃からの影響で子供たちが変質しているならば、今の子供たちで無事なのはレオナルトとアルノルトくらいであろう」
父上は険しい顔で首を横に振った。
そんな父上の言葉に勇爵が賛同した。
「少しでも疑いがあるならば、信用なさるのは危険でしょう。そもそも今回、困るのはそこではありません。アルに調査を頼んだ理由は二つ。一つはレオから目線を逸らせるための囮。もう一つは――皇太子が暗殺されたとするなら、その方法を知らねばならないから。帝位を巡る争いは二者択一となりました。どちらが勝ち抜いたとして……もう一度、後継者が暗殺されれば帝国が崩壊します」
勇爵の言葉に父上と宰相が黙り込む。
そうなのだ。
俺に注意を向けさせるのは、今からでもできる。
だが、皇太子の死の原因を探らねば対策のしようがない。
帝国側からの調査でも、藩国側の調査でも、皇太子の死に不自然な点はなかった。
本当に不運な死だった。
そういう可能性は高い。
だが、不運な死に見せかけた暗殺ならば……。
次も止められない。
「変質している可能性があるからこそ、エリク兄上は信用できない。そういう話ならば、暗殺の可能性がある以上、皇太子の死を不運で片づけるわけにはいかない。調査にはもちろん魔導師も同行させました。だが、変な点はなかった。四年経っているとはいえ、これだけ痕跡がないとなると……人知の及ばない方法だったと思うしかありませんね」
「私も同感です。ちょうど、人知の及ばぬ者たちが大陸には現れ始めました」
「……悪魔か」
父上は疲れた様子で呟く。
皇太子の死から悪魔が関わっているとなると、なかなか深い陰謀だ。
皇帝として気づいていればという悔恨もあるだろう。自分がみすみす皇太子を死なせたと思っているのかもしれない。
だが、落ち込んでばかりもいられない。
「悪魔が関わってくれば何でもありとなりますな……」
宰相がつぶやく。
全員がそれに頷く。
考えるだけ無駄といえば無駄だ。
奴らは持って生まれた権能で戦う。
その権能は魔法とは違う。
実際に悪魔と戦ったからわかる。暗殺に向いている権能ならば、証拠もなく皇太子を暗殺できるだろう。
調査しても証拠が出ないのは、それで説明ができるわけだ。
「妃を介した呪いも、悪魔の仕業と言われれば納得できます。五百年前の悪魔たちとはやり方が違うというのが気になりますが」
勇爵はそう言いながら、思案の表情を見せた。
悪魔は基本的に人間を侮っている。もちろんそれだけの力がある。
何年もかけて切り崩しにかかるのか、疑問ではある。
「考えたところで答えは出ませんな。事実として、藩国からでも皇太子暗殺の証拠は出なかった。ゆえに、これからどうするかについて決めましょう。アルノルト殿下に注意を集めるという計画は続行いたしますか?」
相手が人間ならば俺に注意を向けることもできるだろう。
だが、相手が悪魔ならば意味がない。
目ざわりなら二人とも殺せばいい。
皇太子を証拠もなく暗殺できたなら、それも可能だろう。
「意味はないでしょうね」
「アルがただ危険に晒されるだけかと」
俺と勇爵の言葉を聞き、父上は頷く。
そして。
「ならば方針は一つ。冒険者ギルドはいまだに悪魔の残党を探している。殲滅したとは考えていない。帝国としてそれを支持し、全面的に協力する。受け身で駄目なら攻め込むまで。大陸から悪魔どもを駆逐するぞ」
父上はそう方針を決めた。
それは今までと大して変わらないように見えるかもしれない。
悪魔がいるならば、殲滅する。ギルドと協力する。
それは今までどおりだ。
だが、決意が違う。
「必要とあらばワシも出る。〝皇剣〟の使用も厭わん」
静かに俺と勇爵、そして宰相が頭を下げた。
皇帝が戦場に出るというのは、たしかに大きな意味を持つ。
だが、この場合、大事なのはそこじゃない。
皇旗のような皇族専用の魔導具は、基本的に古代魔法の時代からの遺産だ。
血によって契約し、発動する危険な代物。
だが、皇剣はその比じゃない。
開発したのは発明皇帝と呼ばれる皇帝だ。
その皇帝は、帝剣城を作り上げた稀代の天才。とくに魔導具作りについては右に出る者がいなかった。彼は宝物庫にあった古代魔法時代からの遺産を改良し、皇帝専用の殲滅兵器を作ってしまった。
その危険性ゆえ、聖剣同様に封印され続けてきた。
それを使うと父上は明言した。
この大陸で悪魔の存在を許さないという決意がそこにはあったのだ。