第五百六十一話 皇帝自慢の子供たち
第五百六十一話 皇帝自慢の子供たち
まず、お待たせして申し訳ありませんでした!!!!
お久しぶりです。タンバです。
本日より出涸らし皇子第十五部をスタートします!!
また一か月ほどお付き合い願えれば幸いですm(__)m
お知らせがある場合は、前書きに書きますのでチェックして頂けると嬉しいです( *´艸`)
帝国の第二妃アメリア。
皇帝の想い人であり、誰よりも寵愛された妃。
魔法に秀でており、常に皇帝を傍でささえる理想の妃。
そう言われていた。
だが、そんなアメリアが心身のバランスを崩した時期があった。
第三皇女クリスタを妊娠中のことだ。
突然、叫び声を上げたり、いきなり何かを書き始めたり。
普段は聡明なアメリアの奇行に、後宮はパニック状態だった。
侍女は入れ替えられ、医師は目まぐるしく連れてこられた。
診断はいつもどおり。
妊娠による不安から幻覚を見ている。母子ともに安定しているため、しばらく様子をみるべき。
妊娠のせい。
そう言われれば黙るしかない。
しかし、アメリアの奇行はいつまでも続き、やがては皇帝ヨハネスに会うことすら拒否し始めた。
ほとほと困り果てたヨハネスは、最後の望みを託して前線地帯の視察に向かっていた二人の皇子を呼び戻した。
「突然、すまなかったな。二人とも」
「義母上のご容態が優れぬとあらば、戻ってくるのが息子の務め。ましてや我らは長男と次男です。我らにお任せを、父上」
「頼りにしているぞ、ヴィルヘルム、エリク」
皇帝ヨハネスの代わりに前線に出ることが増えた、第一皇子ヴィルヘルムと第二皇子エリク。
皇帝自慢の息子たち。
そう呼ばれる十代後半の若き皇子たちは皇帝の拠り所だった。
困ったら二人に頼る。
だが。
「安請け合いするな、ヴィルヘルム。父上にも会おうとしないのにアメリア様が我々に会うと思うのか?」
「試してみなければわからん。妊娠は大変だと聞くからな。我らでアメリア様の悩みを取り除こう」
「こういうときはそっとしておくのが一番だと思うがな。余計なことして拗れても知らないぞ?」
「放っておいてくれと言われたらそうする。だが、父上にも話せない悩みを抱えていたらどうする? そんなときに我らの出番だ!」
陽気にヴィルヘルムは告げる。
その後に続きながらエリクはため息を吐いた。
常に物事を良い方向に捉えるのは得難い長所だが、付き合わされるほうはたまったものではない。
始末が悪いのは、頭が回らないわけではない、ということだ。
しっかり相手への配慮もできるし、この後の面倒事も予想できるのに、そのうえで陽気なのだ。
「我らで解決しようものなら、父上の嫉妬を買うぞ?」
「父上はそこまで狭量ではない」
「アメリア様のことに関しては別だ。父の嫉妬を買って失脚する息子は珍しくはない。首を突っ込むのはほどほどにしろ」
「そうなったら、お前が間に入ってくれるのだろう? エリク」
「面倒事ばかりを私に押し付けるな」
そんな会話をしながら、ヴィルヘルムとエリクはアメリアの部屋へ向かう。
すでに二人が帰還の挨拶に行くことは、アメリアには伝えられていた。
そして。
「護衛がいない……?」
「どういうことだ?」
部屋の外には人気がない。
それどころか部屋の中からも気配が感じられない。
不審に思いつつ、ヴィルヘルムは部屋の扉をノックした。
「……どうぞ」
か細い声が部屋の中から返ってきた。
アメリアの声だ。
そのことに安心しつつ、ヴィルヘルムは失礼しますといってドアを開けた。
すると、ベッドの上でアメリアが微笑んでいた。
「よく……来てくれたわね……ヴィルヘルム、エリク」
「ただいま、帰りました。アメリア様」
「ご容態が思わしくないと聞いておりますが、部屋に誰もいないのはなぜでしょうか?」
いきなり問い詰めるようなことを言うエリクを、ヴィルヘルムは肘で小突く。
だが、エリクは気にしない。
そんなエリクの質問にアメリアは微笑んだまま答えた。
「二人が来ると聞いて……私が人払いをしたの……周りには誰もいないわ……」
「なぜ人払いなどを? お体に何かあれば……」
「そうね……だからすぐに済ませるわ……二人にしか話せないの」
「悩みがあるならお聞きします。なんなりとお話しください」
ヴィルヘルムに促され、アメリアは一冊の本を取り出す。
それはアメリアの自著だった。
「ここにこれまで見た悪夢を書いてあるわ……医師は妊娠による幻覚だというけれど……私は違うと思うの」
「というと?」
アメリアは脹らんだお腹を撫でる。
そのお腹には皇帝の子供が宿っている。
アメリアの宝。
そして帝国の宝。
だからこそ、皇帝に話すわけにはいかない。
国の禍として排除される可能性があるからだ。
「……この子を妊娠した影響で発生した魔法よ……私が見ているのは幾通りかの未来……そのすべてで……帝国は荒廃し、悲惨な状態になっていたわ……」
「未来予知の魔法など……文献でしか見たことがありません」
「私も信じられないわ……けど、見えるの。あれを幻覚だなんて……思えないわ。帝国は荒廃し……常にヴィルヘルム……あなたの姿はどこにもない。そして……成長したあなたたちの弟は争い合う……最近じゃ私が陛下を害す未来まで見えてきたわ……」
信じられない。
そんな気持ちでヴィルヘルムとエリクは互いに視線を合わせる。
だが、そう口にできる雰囲気ではなかった。
アメリアには幻覚を見て、おかしくなったような様子はない。
ただ、現状に困惑しつつも受け入れている。そんな風に二人には映った。
「これがいつまで続くのかわからないわ……ただ……多くの未来で帝国は二分されるわ。一つを率いるのはレオナルト、もう一つを率いるのはアルノルト。戯言だと聞き流してくれてもいいわ……ただ、これを二人で保管しておいてほしいの……そして家族を守って。あなたたちに託せたなら、私はこれからも悪夢に耐えられる」
そう言ってアメリアはヴィルヘルムとエリクを手招きして、自分の本を渡した。
そして安心したようにそのまま眠りにつく。
事態についていけない二人は、とにかく眠ったアメリアの身を案じるばかりだった。
残されたのはアメリアが悪夢を記録した本のみ。
二人はとにかく人払いされていた、アメリアの侍女たちを呼び戻し、その荒唐無稽な本にとりあえず目を通したのだった。