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第七百四十一話 レオとアル

最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い~帝位に興味ないですが、死ぬのは嫌なので弟を皇帝にしようと思います~ — ncode.syosetu.com · All chapters

第七百四十一話 レオとアル

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

カクヨムにて、配信中に書いたSSを投稿していますので、年始の暇つぶしにどうぞ読んでみてください。

Twitterからリンクに飛べます。

先手必勝。

開幕と同時に準備していた魔力弾が、全方位からダンタリオンを襲う。

ダンタリオンはそれに対して、自らを翼で覆った。

構わず、千、二千と数をどんどん増やしていく。

シルヴァリー・レイをどう防いだのかは知らないが、これで何か種が割れるかもしれない。

だが。

「効いてないね、あれは」

「効いてないな」

隣にいるレオの言葉に俺は頷く。

ダンタリオンは悠然と空を飛んでいた。

ダメージはない。

あれだけの魔力弾だ。なかなかの衝撃だったと思うが、微動だにしていない。

「これはちょっと厄介かもしれないな」

「かもね」

言いながら、今度はレオが仕掛ける。

鷲獅子に乗って速度のある突撃。

ダンタリオンはその突撃を真正面から迎え撃つ。

レオの振るった剣に対して、ダンタリオンが手刀を振るう。

初撃は防がれた。

けれど、レオはすぐに次の攻撃を放つ。

だが、それもダンタリオンは手刀で受け止めた。

聖杖と聖符の加護を受けたレオの攻撃は、SS級冒険者の攻撃に見劣りするものじゃない。

それをいとも簡単に、片手だけで防いでみせた。

それだけでこいつのやばさがわかる。

間違いなく、この戦場でもっとも警戒すべき相手はこいつだ。

だからこそ、俺がこいつを引き受けたわけだが。

「手応えはあったか?」

「あったように見える?」

「魔法も駄目、物理も駄目か」

どうやら鉄壁の守りを誇っているようだ。

どうやってあんな姿になったのやら。

一応、予想はできる。

だが、そうだとすれば厄介すぎる。

それが正しいかどうか確かめるためにも。

「一発でかいのをお見舞いするか」

≪我は簒奪者なり・冥府の底より黒を簒奪した≫

≪その黒は闇よりなお暗く・その黒は夜よりもなお深い≫

≪開闢の闇黒・終焉なる極黒≫

≪すべてはその黒より生まれ・すべてはその黒に還る――≫

≪インフィニティ・ダークネス≫

巨大な黒い球体が俺の頭上に浮かび上がる。

すべてを飲み込む黒。

その黒い球体をダンタリオンに向けて、俺は放った。

まともに食らえば無事では済まない。

仮面をつけているときならいざ知らず、今は仮面をつけていない。

その威力は仮面をつけているときの銀滅魔法を上回る。

わからないわけがない。

だが、それでもダンタリオンは動かない。

ただ、自分を翼で覆うだけ。

そして。

漆黒の闇がダンタリオンを飲み込んだ。

しかし、喜べない。

あれだけ動じていないのだ。

ダメージが通るとは思えない。

「効いてないね……」

「みたいだな……」

先ほどと同じ。

ダンタリオンは無傷だ。

何もなかったかのように。

それを見て、俺の中の予想がなかば確信へと変わる。

「あの翼が何か悪さをしているね」

「そうだな」

呟くと同時に俺は右手を天高く掲げる。

俺の聖剣を生み出すために。

≪我は銀の理を知る者・我は真なる銀に選ばれし者≫

≪蒼天に満ちし神銀・緑地に散らばる真銀≫

≪其の銀は時に雷のごとく迸り・其の銀は時に闇夜を照らす光となる≫

≪皇貴なる天銀・無垢なる白銀≫

≪真銀よ我が手に集え・かの敵を銀滅せんがために――≫

≪シルヴァリー・エンド・セイバー≫

戦場に散らばった銀属性の魔力をかき集め、一本の剣が形成されていく。

眩い銀色の光を放つその剣を手に取ったとき、俺はダンタリオンがやったことを理解した。

「……魔法を吸収していたか」

「さすがに聡明だな。一を聞いて、十を知る。その分析力だけで貴様は脅威だ。アルノルト」

「説明を求めてもいいかな?」

レオの言葉を聞いて、俺は召喚したエンド・セイバーを振るう。

それはたしかに高密度の魔力剣だ。

けれど、足りない。

戦場に散っていた魔力をかき集めたなら、この程度ではない。

なぜなら、俺は二度もシルヴァリー・レイを使用している。

だが、このエンド・セイバーはせいぜい一回分。

足りないのだ。散っているはずの銀属性の魔力が。

どこかに消えた。

ならば、どこに?

「戦場に散っている魔力が足りない。どこかに消えている。ならば、考えられるのは防いだのではなく、吸収したということだろう。そして、帝剣城には大地を通じて魔力をかき集めるシステムがあった。皇剣の源となるシステムが。それを取り込んだなら、納得できる」

これは仮説。

吸収ではなく、別次元に飛ばした可能性もある。

けれど、その予兆が見えなかった。

だからこそ、吸収だろうと考えた。

そしてダンタリオンは帝剣城に退いた。

帝剣城で何かしており、この形態に進化したのだ。

帝剣城は魔力を集積していた。長年にわたって帝国中からかき集められた魔力だ。

皇剣はそれを自由に使える。

巨大な水瓶が帝剣城であり、コップが皇剣だ。

そして、こいつは自ら水瓶となった。

だから、魔法はこいつには通じない。すべての魔力を吸収してしまうから。

使えば使うだけ、こいつが強化させるだけだ。

「ご名答だな。帝剣城の地下に存在する神玉と私は融合した。神玉を核とした術式ごと、な。これによって、私の魂はこの肉体に固定化された。私は定命の者となったわけだ。いつ、この肉体が崩壊するかもわからない恐怖を私は抱いたまま、これから生きていくことになる。だが、負けるよりはマシだ。そうは思わないか?」

「余計なことをペラペラと。そういう油断で何度、勝ちを逃してきた?」

「これを油断とするか、余裕とするかは結果が決めることだ」

「なら、その油断で負けたと教えてやる」

≪我は銀の理を知る者・我は真なる銀に選ばれし者≫

≪銀光は天を焼き・銀星は闇を穿つ≫

≪墜ちるは冥黒・照らすは天銀≫

≪其の銀に金光は翳り・其の銀に虹光は呑まれた≫

≪いと輝け一条の銀光・闇よひれ伏せ屈服せよ≫

≪銀光よ我が身に君臨せよ・我が敵を滅さんがために――≫

≪シルヴァリー・フォース≫

ふざけた能力だが、わかっていれば対策はできる。

俺の体から溢れた銀属性の魔力がどんどんエンド・セイバーへと流れ込んでいく。

あまり本気でやりたくはなかったが、ダンタリオンは間違いなく対俺を想定して、あの姿となっている。

一番に警戒し、どうにかしなければいけないから。

すべてを捨てて、勝負に出てきている。

そう簡単に突破はできない。

こちらもそれなりのものを出さなければ。

「魔法は翼で受け止めたが、レオの攻撃は違った。魔力を吸収しているのはその翼だな?」

「だとしたらどうする?」

「翼をかいくぐって斬るだけだ」

刹那の瞬間。

俺はダンタリオンの懐に潜り込む。

そしてエンド・セイバーを振るう。

それをダンタリオンは下がって避けた。

「避けた、な?」

「人類は五百年前、神への信仰を失った。助けてくれなかったから、だそうだが……当時、勇者が現れた。そして今は貴様だ、アルノルト。神の奇跡が存在すると確信するには、十分すぎると思うがな」

「残念だが、俺だけじゃない」

俺の攻撃を予測して、レオが背後に回っていた。

そのレオの攻撃をダンタリオンは翼で受け止めた。

魔法を吸収するだけでなく、単純な防御としても有効らしい。

だが。

「死角からの攻撃は難しそうだね」

「羽を落とすか?」

「なかなかの硬さだよ?」

「それならどっちかがかいくぐって、本体を斬るしかないな」

情報はどんどん落ちる。一人よりも二人のほうがより正確に、より多く。

完全無欠など存在しない。

どれだけ強かろうが、賢かろうが。

俺たち二人には敵わない。