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1079話 またね

最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。 — ncode.syosetu.com · All chapters

1079話 またね

セイゼルクさんのお別れ会とランカさんのリーダー就任祝いは、庭で行われるみたい。

お父さんやソラ達と一緒に庭へ出ると、テーブルが置かれ、たくさんの料理が並べられていた。

「ドルイド、アイビー」

名前を呼ばれて見ると、ラットルアさんが手を振っている。

その傍には、魔力が安定して自由に動き回れるようになったスノーがいた。

「凄いな」

お父さんがラットルアさんの傍へ行くと、庭を見渡して呟いた。

「ドールさんとフォリーさんが昨日から気合を入れて準備してくれたから」

そういえば、二人とも昨日から忙しそうだったな。

今日の準備のためだったんだ。

「あっ、そうだ。セイゼルクにプレゼントを買いに行ったらしいけど、何を買ってきたんだ?」

ラットルアさんの問いに、お父さんと顔を見合わせて苦笑する。

そんな私達の態度に、首を傾げるラットルアさん。

昨日、お父さんと一緒にセイゼルクさんに渡すプレゼントを買いに行った。

贈るなら、セイゼルクさんの結婚相手も使える物がいいと思ったんだけど……。

「何かあったのか?」

「俺もアイビーも、家族を持つセイゼルクに何を贈ったらいいのか全く分からなくて」

そう、色々見たけど、冒険者を辞めるセイゼルクさんに何を贈ればいいのか全然分からなかった。

冒険者のセイゼルクさんになら、何を贈れば喜ぶか分かるのにね。

「ははっ、それでどうしたんだ?」

お父さんと私を楽しげに見つめるラットルアさん。

「シエルが案内してくれた洞窟で採ってきた守護石を使って、装飾品を作ってきた。セイゼルクと奥さん、それと子供2人の分だ」

「シエルが案内した守護石?」

ラットルアさんが興味津々にお父さんと私を見る。

「あぁ、そうだけど?」

「凄く興味ある、見せてほしい」

ラットルアさんの態度に小さく笑ったお父さんは、私を見た。

「アイビー、出してくれるか?」

「うん」

肩から提げたマジックバッグから、セイゼルクさんに渡す装飾品が入った箱を取り出す。

そして箱の蓋を開けて、ラットルアさんに見せた。

「うわぁ、綺麗だな。それにかなりいい守護石だ」

足首か手首に着ける装飾品には、直径1cmほどの守護石が、それぞれ5個ずつ並んでいる。

一番人気のある白色と透明の守護石で作ってもらったので、きっと気に入ってくれる……筈。

「見せてくれてありがとう」

ラットルアさんが満足そうな表情で私を見る。

「どういたしまして。お父さん、セイゼルクさんに渡しに行こう」

箱の蓋を閉めると、セイゼルクさんを探す。

セイゼルクさんは、テーブルの傍でランカさんと話をしていた。

「行こうか」

歩き出そうとしたお父さんを、慌てて止める。

「待って。今、近付いても大丈夫なの?」

セイゼルクさんもランカさんも神妙な表情で話し込んでいるけど……。

「大丈夫。たぶんどうでもいい話だから」

えっ、そうなの?

ラットルアさんは気にする事なく、セイゼルクさんとランカさんのところに行く。

私とお父さんは、ラットルアさんを追うように付いて行った。

「二人とも、祝いの席でその表情は駄目だと思うぞ」

「えっ?」

不思議そうな表情でラットルアさんを見るランカさん。

セイゼルクさんも首を傾げてラットルアさんを見た。

「どんな話をしていたんだ?」

「料理の話だけど……」

ラットルアさんの質問にランカさんが手に持っていた皿を見せる。

料理の話なのに、あんな表情をしてたの?

私は、問題が起きたのではって思ったのに。

「ほらっ、大丈夫だっただろ」

ラットルアさんが楽しそうに笑って私を見る。

「そうだな。アイビー」

お父さんが、私の持っている箱に視線を向ける。

「うん。セイゼルクさん、結婚のお祝いです」

「ありがとう。見ていいか?」

「うん」

私から箱を受け取ったセイゼルクさんは箱の蓋を開けると嬉しそうに笑った。

「守護石だな。凄く綺麗だ、ありがとう」

良かった。

喜んでもらえたみたい。

「家族でお揃いだな」

「そうだな」

ランカさんの言葉に、セイゼルクさんが少し恥ずかしそうに笑った。

デザインは同じで、守護石も似た物を選んだからね。

「あっ、ランカさんにもこれを」

マジックバッグから少し小さな箱を取り出すと、ランカさんに渡す。

「私に? おぉ~、青い守護石だわ。ありがとう」

リーダー就任祝いを贈りたいと思ったけど、ランカさんの性格はよく分からなかったので、彼女への贈り物も守護石にした。

守護石は、大切な人に贈るプレゼントとして人気だからね。

「守護石ってすぐに割れるから、いくつ貰っても嬉しいよね」

「「「……」」」

守護石は身代わりになってくれる石。

割れるというのは、それだけ命の危機に遭ったという事になる。

「はぁ、ランカ」

「何?」

「『炎の剣』のリーダーになるんだから、これからは慎重に行動しろよ。仲間の命を預かるんだからな」

「そうよね。うん、そうだったわ」

セイゼルクさんの言葉に、ランカさんは笑みを消して頷く。

そして守護石を見て、もう一度頷いた。

「ぷっぷっぷ~」

「てっりゅっりゅ~」

ソラとフレムの鳴き声に視線を向けると、スノーの背に乗って、満足そうに揺れていた。

ソルは、シエルの背に乗ってなぜか寝ている。

「相変わらず、ソラ達は自由だな」

セイゼルクさんが、ソラ達を見て笑う。

ランカさんも、ソラ達の行動を見て微笑んでいた。

庭にシファルさんとヌーガさんが出てくると、ドールさんが手を叩き、皆の視線が彼に集まる。

「皆様が集まりましたので乾杯をいたしましょう。セイゼルク様お願いします」

セイゼルクさんの乾杯で始まった、セイゼルクさんのお別れ会とランカさんのリーダー就任祝い。

セイゼルクさんの失敗談で笑ったり、ランカさんが死にそうになった話で彼女が怒られたり、沢山話をした。

途中でソラとフレム、それにスノーが追いかけっこを始めたのでちょっとバタバタする事もあったけど、楽しい時間を過ごす事が出来た。

お祝いをした日から3日目の今日、セイゼルクさんがオトルワ町に旅立つ。

「もう、ここでいいぞ」

セイゼルクさんが私達に振り返る。

ここは、王都の門から少し森に入った場所。

ここなら、周りに人の気配がないので、ソラ達もセイゼルクさんにお別れが出来る。

私は肩から提げた、皆が入っているバッグの蓋を開けた。

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

「ぺふっ」

「にゃうん」

バッグから出たソラ達は、セイゼルクさんに向かって順番に鳴く。

「色々と世話になったな。今までありがとう」

セイゼルクさんがソラ達に声を掛けると、ソラ達はなぜかジッとセイゼルクさんを見る。

どうしたんだろうと皆でソラ達を見つめていると、

「ぷっ~」

ソラが急に、鳴きながら体を左右に揺らす。

しばらく見ていると、ソラの口から魔石が飛び出した。

ポン。

「「「「「んっ?」」」」」

「てっりゅ~」

驚いていると、次はフレムが鳴きながら体を左右に揺らす。

そして、

ポン。

「「「「「……」」」」」

「ぺふっ」

唖然としている間に、ソルが鳴きながら体を左右に揺らし始める。

ポン。

「「「「「……」」」」」

ソラ達の前に転がる、青と赤と黒の魔石を皆で見つめる。

なぜか、その魔石は少し光っているように見えた。

「えっと、セイゼルクさんにプレゼント?」

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

「ぺふっ」

「そっか」

ソラ達の答えを聞き、3個の魔石を拾ってセイゼルクさんに渡す。

「待て、この魔石……今まで見た魔石と少し違わないか?」

セイゼルクさんの問いに、手の中にある魔石を見る。

透明度はかなり高いけど、今までにも同じくらいの魔石はあった。

でもまぁ、違うところはある。

それは、魔石が太陽の光に反射して光っているというより、魔石そのものが光っている……ように見える。

「気のせいだと思うよ」

「いやいや、どう見ても魔石が光っていないか?」

「ぷ~」

「てりゅ~」

「ぺふっ」

セイゼルクさんの反応に悲しそうな鳴き声を上げるソラ達。

「いや、嬉しいけど……ドルイド?」

ソラ達に見つめられたセイゼルクさんが、困った表情でお父さんを見る。

お父さんは肩を竦めて笑った。

「何かの役に立つ時もあるだろう」

「それは、まぁ……。ありがとう」

私から魔石を受け取って、1つ1つを眺めるセイゼルクさん。

「凄く綺麗だな」

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

「ぺふっ」

自慢げに鳴くソラ達の頭を優しく撫でるセイゼルクさん。

「ありがとう、大切にするな」

セイゼルクさんは、マジックバッグから小箱を出して魔石を入れ、その箱を優しく撫でてからマジックバッグに戻した。

「スノー、行こうか」

「クル」

セイゼルクさん1人だけの旅を皆は心配した。

でもスノーの強さを調べると、かなり強い事が分かったので安心して送り出す事になった。

それに、カシメ町で中位冒険者達と合流するそうだ。

彼らはずっと王都を中心に活動していたけれど、仲間の1人がスキルを失った。

分かった時はチーム内がギクシャクしたみたいだけど、話し合いの結果、皆で一から頑張ろうと新しい場所へ行く事にしたそうだ。

どこへ行こうかという話をしている時に、お世話になった事があるセイゼルクさんの話を聞いて、一緒に行きたいとお願いされたと、セイゼルクさんが話してくれた。

今回のスキルの騒動で、冒険者を辞める者、気持ちを入れ替える者が出た。

そして、自分の夢をあきらめずに貫くと決めた者も多くいるみたい。

「じゃ、またな」

セイゼルクさんとスノーが見えなくなるまで見送る。

「オトルワ町に行った時には、セイゼルクの家族を紹介してもらおうな」

お父さんが私を見て微笑む。

「うん」

セイゼルクさん、今までありがとう。

次に会った時は、沢山話が出来るようにいろんな事に挑戦するね。

「最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。」を読んでいただきありがとうございます。

今日で、この章は終わりとなります。

また「最弱テイマー」の2025年の更新も本日で終わりです。

今年1年、アイビー達の旅にお付き合いいただきありがとうございました。

来年は1月6日(火)より新しい章を始める予定です。

2026年も、アイビー達をどうぞよろしくお願いいたします。

ほのぼのる500