LNCrawler

1090話 ようやく

最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。 — ncode.syosetu.com · All chapters

1090話 ようやく

「お待たせ。倒れた木の下から出てきた物についても、きちんと説明してきたから」

木箱と魔法陣についてだよね。

ノースの事や木の魔物の問題だけでも大変なのに、魔法陣の件まで加わるなんて、冒険者ギルドの仕事は本当に大変だな。

「疲れたから、帰りましょう」

ランカさんの言葉に、ガターさん達と別れて冒険者ギルドを出る。

「あれ?」

「どうした?」

冒険者ギルドを出たところで振り返ると、お父さんがこちらを見た。

「いつの間にかスートさんがいなくなってたね?」

木の魔物について話していた時は一緒にいたのに、いつの間にいなくなったんだろう?

「スートの事なら気にしなくていいわよ。彼は仕事を終えたから、離れたの」

ランカさんの説明に首を傾げる。

「おそらくスートは、冒険者ギルドから情報を広めるように依頼を受けたんだと思う」

シファルさんが私を見て言う。

「情報を広める?」

「そう。今回みたいな原因不明な事が起こると、おかしな噂が広がって混乱が起こる事がある。だから、冒険者達に『正しい情報』を流して、混乱を未然に防ぐんだ」

「そうなんだ」

情報を広げる仕事も、冒険者の仕事なんだね。

「それにしても、木の魔物には驚かされたな。まさか、土の中を自由に動き回るなんて思わなかった」

ラットルアさんの呟きに、皆が頷く。

「お父さんも知らなかったの?」

「うん。人に友好的な木の魔物がいる事も、最近知ったくらいだからな」

そういえば、魔物の本には人を襲う木の魔物の事しか載っていなかったな。

「ノースの問題が解決したなら、明日から作業時間が元に戻るのかしら?」

「そうなるだろうな」

ランカさんの呟きに、ヌーガさんが頷く。

「それは嬉しいわね。いつまでも森の後片付けばかりだと飽きるから」

ランカさんの言葉に、私は思わず頷いてしまう。

「アイビーも、後片付けに飽きたのか?」

お父さんが笑いながら私に聞く。

「うん。ずっと同じ作業だからちょっとね」

あと何日も続くと思うと、ちょっと気持ちが落ち込むな。

「早く終わらせるためにも、明日も頑張ろうね」

ランカさんが私を見て笑う。

「うん」

そうだね。

早く終わらせるためにも、明日も頑張ろう。

木の魔物がノースを襲った日から14日目。

森の中の作業を終わらせて冒険者ギルドに戻ってくると、ギルド内がどこか浮足立っていた。

「どうしたんだろう?」

「そろそろ終わりか?」

私が不思議そうに冒険者ギルドを見渡していると、隣にいたオッズさんが呟く。

「終わり?」

「森の後片付けと整備だよ」

オッズさんの答えに、私は「あっ」と小さく呟く。

確かに、今日、私達が作業した場所もずいぶん王都に近かった。

お父さん達も、「もうそろそろ終わりだな」って言っていたから、本当に終わるのかもしれない。

「皆さん、お疲れ様です。森の後片付けおよび整備は、本日で終了します。本当に、ありがとうございました。今回作業に参加してくださった冒険者達には通常報酬の他に、特別手当を支給しますので、書類に書かれた内容を確認した上、問題なければ名前を記入して提出して下さい」

ギルド職員の言葉に、冒険者ギルドにいた冒険者達から歓声があがる。

「皆、作業に飽きていたのね」

「まぁ、そうだろうな。俺も、歓声を上げたい気分だ」

ランカさんが歓声を上げている冒険者達を見ると、ラットルアさんが嬉しそうに言う。

「お疲れ様。今日で終わりか。楽しかったから、少し寂しいよ。また何かあった時はよろしく」

ミンガさんが、ランカさんとお父さんに声を掛ける。

「こちらこそ、ミンガ達が優秀だったから、作業が早く進んだ。助かったよ、ありがとう」

お父さんがミンガさんと握手をすると、ランカさんもミンガさんと握手をする。

「作業が早くて助かったわ、ありがとう。ただ、何かあった時って、それ絶対に問題が起こった後の後片付けよね? 一緒に作業するのは良いけど、ちょっと考えてしまうわ」

ランカさんの言葉を聞いたミンガさんが笑う。

「確かにそうだな」

「失礼します。書類です」

若い女性の声に視線を向けると、ギルド職員さんが書類を配っていた。

「ありがとう」

ランカさんがギルド職員から書類を3枚受け取ると、お父さんとミンガさんに1枚ずつ渡した。

「アイビー、内容を確かめようか」

「うん」

お父さんが書類を持って私の隣に来る。

お父さんと一緒に書類を確かめると、作業中の怪我についてや、極秘扱いに関わった場合の注意事項が書かれていた。

「これって、あれだよね?」

極秘扱いの部分を指差してお父さんを見る。

「そうだ、あれだな」

倒れた木の下から出てきた魔法陣が描かれた木箱については、報告した翌日「内緒にしてほしい」とギルマスさんから言われた。

ランカさんもお父さんも、そしてミンガさんも「魔法陣だからな」という事で納得していた。

木の魔物がノースを襲った事に関しては、今も調査中となっている。

「わからないところはある?」

お父さんの問いに、私は首を横に振る。

「大丈夫」

特別手当の金額が、金貨2枚には驚いたけどね。

通常の依頼料に金貨2枚が追加だから、結構な報酬だよね。

お父さんの名前の下に自分の名前を書いて、書類をお父さんに渡す。

「よし、久しぶりに飲みに行くぞ~」

「「「お~」」」

傍を通った冒険者達が急に大声を上げたので、体がビクッと震える。

冒険者ギルドを出て行く彼らに視線を向けると、お父さんが私を見た。

「大丈夫か」

「うん。急だったから驚いただけ」

「森での作業は気が抜けない。特に今回はノースと木の魔物の問題が起こったからな。彼らは、飲みに行くのを我慢していたんだろう」

お父さんの説明に、シファルさん達が頷く。

そういえば、お父さんもお酒を飲んでいないな。

「今日はお父さんも飲む?」

お父さんを見ると、お父さんは少し考え込む。

「ちょっと惹かれるけど、明日からの予定次第だな」

明日からの予定?

お父さんが、依頼表の張られている掲示板を見る。

「気になる依頼があるか、見に行こう?」

「えっ?」

「上位冒険者になった日から、ずっと後片付けだっただろう?」

お父さんの言葉に頷く。

上位冒険者試験を受けた日に、捨てられた大地からリュウが溢れて、魔物が暴走したからね。

「上位冒険者は、好きな依頼を受けられるんだ」

お父さんの説明に首を傾げる。

「依頼内容によっては、上位冒険者にしか受けられないものがある。でも、上位冒険者は下位冒険者向けの依頼を受けても問題にはならない。だから、アイビーは掲示板にある仕事だったらどれでも問題なく受けられる」

お父さんと一緒に掲示板の前に行って、依頼表を見る。

「何か気になる依頼はあるか?」

お父さんの問いに、依頼表を順番に見ていた私は首を横に振る。

「薬草と果実の採取依頼が多いね」

魔物の討伐は3件しかないみたい。

寒くなり始める時季は、魔物が大人しいのかな?

「後片付けをしながら、冒険者達が作業の邪魔をしてきた魔物を討伐していたからでしょうね」

ランカさんが隣に来ると、依頼表を見る。

「そういえば、俺達の所は静かだったな。あっ……」

ミンガさんも掲示板の前に立つと、なぜかソラ達が入っているバッグを見た。

「なるほど、魔物に邪魔をされずに作業が出来たのは、あの子のお陰か」

あの子ってシエルかな。

「もしかして、普通は魔物に邪魔されるの?」

私の問いに、ランカさんとミンガさんが頷く。

「そうだったんだ」

シエルがいたから、後片付けをしていた場所に魔物が来なかったのか。

やっぱりシエルは凄いな。

「ところでドルイド、まさか、すぐに依頼を受けるつもり?」

ランカさんがお父さんを睨む。

「アイビーの気になる依頼があれば。だって、アイビーは上位冒険者になったのに、ずっと後片付けしかしていないんだぞ」

お父さんの説明に、ランカさんがハッとした表情をした。

「そういえばそうね。でも明日は休みよ。今日は、お祝いをするんだから!」